【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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恋せよ乙女 編

リアル神宮司

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 私がジーッと彼女を見ても、春日さんは神くんに目を奪われたままだ。

(これは……、もしかして……)

 ピーンときた私は、満面の笑みを浮かべて神くんを誘った。

「ねぇ、もし良かったらこのあと一緒にお茶しない?」

「え? ですが、四人で女子会でしょう。そこに僕が入ったら完全に邪魔者じゃないですか」

 苦笑いする神くんに、私は両手でサッとエミリさんと春日さんを示す。

「こちらは丸木エミリさん、今までは副社長秘書、これからは社長秘書で、篠宮風磨さんの恋人です。同棲もしています」

 私は力強くエミリさんは先約アリだと訴える。

「そしてこちらが三ノ宮春日さん。三ノ宮重工の令嬢で、とっても美人でユーモアに溢れ、サッパリした性格で魅力的な女性です。とっても魅力的なのに、フリーなんて思えないよね。世の男性の目は節穴!」

 いささかわざとらしかったのか、恵が背後から私の背中を強めにつついた。

「春日さん、こちらは神輝征くん。篠宮フーズで働いていて、同じ部署なんですが、『アンド・ジン』の御曹司なんです」

 それを聞いた瞬間、春日さんの口元が盛大にニヤつきかけ、強固な理性で押しとどめたのか、への字になった。でも口端がピクピクしてる。

(……面白い)

 ……なんて思ったら駄目だ。

 その時、春日さんが私の腕をグイッと引っ張り、後ろに移動させたかと思うと、ヒソヒソ囁いてきた。

「リアル神宮司じんぐうじ!」

「…………はい?」

 彼女の言っている事が分からず、私はポカンとして聞き返す。

「あっ、あのねっ、彼、私の大好きな漫画の神宮司輝希てるきくんにそっくりなの! やば……っ、どぅふっ。やばい、涎垂れそう……っ」

(ええええー……)

 いつになく取り乱している春日さんを見て、私は一瞬戸惑ったのち、ヒソヒソ囁き返す。

「ちょっと彼とお話してみません? 漫画のキャラに似てるのは置いておいて、バブちゃんにならないとか、諸々の相性を確認して、良さそうだったらアプローチしてみたらどうですか?」

「する! するする! めっちゃする!」

 語彙力がなくなるまで一目惚れしたらしい春日さんを見て、私は「よーし」と心の中で気合いを入れ、神くんを振り向いた。

 私たちが離れている間、恵とエミリさんが場を繋いでくれていたらしく、三人は和やかに談笑している。

「神くん、お気に入りのカフェがあるんだって。ケーキが美味しいらしいから行こうか」

 さすが恵!

 私は心の中でスタンディングオベーションをし、「行く!」と頷く。

「こんなに綺麗どころを連れて、まるでハーレムじゃないですか。……僕、速水部長と篠宮副社長に刺されるかも……」

 神くんは冗談めかして言い、私は笑って返事をする。

「切れたナイフみたいな時期は過ぎたから、刺したりしないよ」

 サラッと言ったあと、なぜだか皆沈黙して私を見る。

 ……ん?

 そのあとヒソヒソと何か言い合ってから、恵が呆れたように言った。

「多分、それって『よく切れるナイフみたいな』じゃないの? 朱里、バラエティ見てるうちに言葉が刷り込まれたんじゃない?」

「え? あー……」

 言われて脳裏に浮かんだのは、お笑い芸人の大御所だ。

「……スルッと出てきた。ごめんちゃい」

 照れ笑いして謝ると、皆ドッと笑ってくれた。





 その後、すぐ近くのハイセンスなカフェに入り、メニューを見て単価が高めなのにおののいたけれど、そしらぬふりをして一番お安いケーキとコーヒーのセットにした。

 神くんは「僕、ランチまだなんですよね」と言ってパスタとサラダ、食後にケーキセットを頼んでいた。

 春日さんはメニューを見て少し悩む彼を見ながらうんうんと頷き、「なんでも食べて。ご馳走するから」と考えているのが手に取るように分かる。

 オーダーが終わったあと、春日さんの向かいに座った神くんがニコッと笑った。

「改めまして、神輝征、二十四歳です。宜しくお願いします」

 彼の自己紹介を聞いたあと、普段面識のないエミリさんと春日さんが挨拶する。

 よし! 戦いのゴングが鳴った! いけ! 春日さん!

 私は心の中でカーン! とゴングを鳴らし、期待を込めていまだ赤面してクネクネしている春日さんを見た。

「……ごっ、ご趣味はっっ?」

 おっと先制、春日選手、ド定番のお見合い文句だ!
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