上 下
366 / 417
女子合コン 編

ナンパから助けてくれたのは

しおりを挟む
「春日さん、嬉しいのよ」

 言われて目を瞬かせると、エミリさんは微笑んで脚を組む。

「彼女、ああいう性格でしょう? お嬢様たちと付き合う時は物腰柔らかに周囲と合わせるけれど、本当はタカ派と言っていい。そんな自分の素を曝け出したら、彼女を知る〝周りの人〟は『思っていたのと違った』と引いてしまうの」

 エミリさんはエスプレッソを飲み、私を見て小さく笑う。

「だから本当の自分を知る人がいないという意味で『友達がいない』と言っていたし、私たちとこういうふうに素で話せる機会が何より嬉しいの。先日のホテル女子会以降、連絡をとったり、野暮用ついでにお茶する事もあったけど、心の底から嬉しそうに『また集まりたい』って言っていたわ。彼女は私たちの存在そのものをありがたがっていて、何ものにも代えがたいを思っている。『友達になりたいなら金銭的な貸しを作らないほうがいい』とは言ったけれど、『私は不器用だから、お金や物を出すしか愛情表現ができない』と言っていた。……本人がそれでいいなら、好意に甘えるのも付き合い方の一つかなと思って」

 そう言ったあと、エミリさんはクスッと笑って付け加えた。

「勿論、奢られっぱなしは申し訳ないから、たまに私たちでサプライズのプレゼントをしましょう? そういう形でなら受け取らざるを得ないだろうから」

「……分かりました」

 頷くと、恵もバッグに伸ばしかけていた手を引っ込めた。





「ごちそうさまでした!」

 レストランを出てお礼を言うと、春日さんは嬉しそうに「なんのなんの」と笑っている。

 そのまま四人でショッピングをしようと、表参道駅に向かって歩き、表参道ヒルズに入ろうとした時――、男性二人組に声を掛けられた。

「すみません、この辺りでオススメのカフェを知りませんか?」

 声を掛けてきたのはこなれた雰囲気の若い男性で、お洒落な印象のある彼らなら、人に聞かなくてもカフェを知ってそうな印象があった。

 春日さんはスッと笑みを消し、私たちを見て「なんだこいつら」というように首を竦める。

「さぁ……。スマホで検索してみたらどうですか?」

「お姉さんたちなら、センスがいいから素敵な店を知っていると思ったんです」

 一人が言ったあと、もう一人が私を見て笑いかけてきた。

「お姉さん、お洒落ですね。モデルかと思いました」

「えっ、いやぁ……」

 戸惑って何か言おうとした時、恵が私の腕を組んでグッと引いてきた。

 彼女のほうを見ると、恐い顔をして首を左右に振り、囁いてきた。

「単なるナンパだから相手にする必要なし」

 あ、これ、ナンパだったのか。

「私たち、急いでるので別の人に聞いてください」

 エミリさんが言って私たちはまた歩き始めたけれど、二人はしつこく絡んでくる。

「これから一緒にアートでも見に行きませんか?」

 彼らはなんやかんや言いながら、何十メートルもついてきている。

(しつこいな……)

 出がけに尊さんに『ナンパされるなよ』と言われ、「そんなにナンパされる事ってないよなぁ」と思っていたけれど、されてしまうと鬱陶しいものだ。

 困って溜め息をついた時、背の高い男性が歩み寄ってきた。

「上村さん、何をやってるんですか?」

「へっ?」

 顔を上げると、グレーのジャケットとワイドパンツに、黒のTシャツを着た神くんが立っている。

 黒のハットも被っていて、服装はシンプルなのにめちゃくちゃお洒落だ。

 彼はニコッと私たちに微笑みかけたあと、私の肩を抱いてから男性たちに言う。

「すみませんけど、これから約束があるんです。夜に一人三万するコース料理代を出せるなら、参加してもいいですけど」

 神くんの牽制を聞き、顔を引きつらせた彼らは「ちょっと用事を思いだしたかも!」と言ってそそくさと立ち去って行った。

「上村さん、すみません」

 彼らが退散したあと、神くんはパッと手を放し、私たちを見てニコッと笑った。

「こんなに綺麗どころがそろっていたら、そりゃナンパされますね。気をつけてくださいよ」

「神くんはなんでここにいるの?」

「僕はちょっとアートギャラリー巡りに。定期的に巡って、いい絵があったら買ってるんです」

 そう言って、神くんは恵を見て「中村さん、ども」と手を上げた。

 私はハッとしてエミリさんと春日さんに彼を紹介しようと思い、二人の方を見る。

 ――と、春日さんが顔を真っ赤にして両手で口元を覆っているのに気づいた。

 おや?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話

mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。 クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。 友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...