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帰宅して 編
尊さんは幸せになれますよ
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「この胸の奥には、まだやりきれない想いや怒り、憎しみ、悲しみがあると思います。でも、私たちは今行動する事で未来の自分を作っていけます。きっと、未来の自分を幸せにするのも、不幸にするのも、今の自分次第だと思うんです」
十四歳の時、尊さんに会わず、彼の言葉に出会わなければ、私はまともな道を歩んでいなかったかもしれない。
グレたかもしれないし、父を喪った寂しさを誤魔化すために、誰か男の人を求めた可能性もある。
一番つらい時に尊さんが私の感情を受け止め、進むべき方向に修正してくれたから、今の私がいる。
私も尊さんもそれぞれ別の事で傷付いているけれど、彼が弱っている時は私が励ましたいと強く思っていた。
「尊さんが負った傷の痛みは、きっとあなたに一生付きまとうでしょう。怜香さんを恨む気持ちだって、二十年、三十年経ったあとも変わらないかもしれない。……でも、私は尊さんの側にいて、あなたを愛します。『楽しい』『生きていて良かった』って何回も思わせてあげます! プラスの感情をどんどん上乗せして、ネガティブな感情を薄められるよう努力します」
グッと両手の拳を握ると、彼は泣きそうな顔で笑った。
「きっと速水家の皆さんも同じです。百合さんが『今まで何もできなかった』と仰っていたように、他の皆さんも尊さんに何かしたくて堪らないはずです。大人になってから初めて関わった親族だから、まだまだ遠慮があると思うし、甘えきれないと思います。でも皆さんの好意をどんどん受け取って、一緒に思い出を作っていきましょうよ。幸せになるためには、誰かに甘える事も必要なんです」
一生懸命訴えながら、私はその言葉が自分にも当てはまると痛感した。
ずっと自分の殻に籠もって、あまり人と関わらず生きてきたけれど、尊さんに出会って不器用ながらも彼を頼るようになって、とても生きやすくなったように思える。
「一人でちゃんとしないと」という気持ちはまだまだあるけれど、私は尊さんに寄りかかって色んな事を一緒に経験していく喜びを知った。
――大丈夫。
――あなたには私がいるし、速水家の皆さんもいる。
「尊さんは幸せになれますよ」
彼の頬を両手で包んで微笑みかけると、尊さんは愛しげに笑った。
「……お前は最高の女だな」
尊さんは切なげに目を細め、大切そうに私の髪を撫でてくる。
「私はあなたに幸せになってほしいですから。全力で応援団しますよ」
「チアリーダーやってくれる?」
「ん? コスプレ希望ですか? 攻めますね~」
ニヤリと笑ってみせると、尊さんもニヤリと笑う。
「朱里がポンポン持ってミニスカ穿いたら、どんだけでも頑張れるな」
「やだ、何を頑張るんですか」
「まだなんも言ってねーよ。このスケベ」
「スケベはどっちですか。このこのこのこのこの!」
私は両手の人差し指で、トトトトト……と尊さんの胸板を突く。
そしてフッ……と人差し指の先を吹き、ドヤ顔をする。
「スケベが収まるツボを突きました。もうスケベはできませんから、ご安心を」
「なぁ、スケベしようや」
そこで尊さんがネットミームを持ち出し、私は「ひひひひひ」と笑い崩れる。
「尊さん、ネットあんまり見ないくせに、なんでそういうの知ってるの!」
「涼がダイジェストで教えてくれるんだよ。あいつはネットの毒素を見ても何も動じないから、いい所も悪い所も全部見た上で、面白い部分だけ教えてくれる」
「茶こしみたいですね」
そう言うと、尊さんが笑う。
「人間なんだけど」
尊さんはツボったのか、クスクス笑って戻ってこられずにいる。
「あー…………、もう」
ひとしきり笑ったあと、彼は私を押し倒してキスをしてくる。
「ん……っ」
柔らかな唇についばまれ、下唇を甘噛みされて、私は鼻に掛かった声を漏らす。
顔を上げたあと、尊さんはいたわる目で私を見て頭を撫でてきた。
「朱里、お前さ……」
「……ん?」
目を瞬かせて返事をすると、尊さんはしばらく私を見つめたまま、その目に複雑な感情を宿す。
「……なに?」
彼が口を開いて何か言いかけた時――、ピコンと大きめの通知音が鳴り、私はビクッと肩を跳ねさせた。
「……悪い。知らない間に音量ボタンを押してたみたいだ」
尊さんは起き上がるとポケットからスマホを出し、メッセージを見て静かに息を吐いた。
「週末、ちょっと一人で出かける。たまには中村さんと二人でデートしたらどうだ?」
「え?」
急にそう言われ、私はなんとなく不自然さを感じた。
十四歳の時、尊さんに会わず、彼の言葉に出会わなければ、私はまともな道を歩んでいなかったかもしれない。
グレたかもしれないし、父を喪った寂しさを誤魔化すために、誰か男の人を求めた可能性もある。
一番つらい時に尊さんが私の感情を受け止め、進むべき方向に修正してくれたから、今の私がいる。
私も尊さんもそれぞれ別の事で傷付いているけれど、彼が弱っている時は私が励ましたいと強く思っていた。
「尊さんが負った傷の痛みは、きっとあなたに一生付きまとうでしょう。怜香さんを恨む気持ちだって、二十年、三十年経ったあとも変わらないかもしれない。……でも、私は尊さんの側にいて、あなたを愛します。『楽しい』『生きていて良かった』って何回も思わせてあげます! プラスの感情をどんどん上乗せして、ネガティブな感情を薄められるよう努力します」
グッと両手の拳を握ると、彼は泣きそうな顔で笑った。
「きっと速水家の皆さんも同じです。百合さんが『今まで何もできなかった』と仰っていたように、他の皆さんも尊さんに何かしたくて堪らないはずです。大人になってから初めて関わった親族だから、まだまだ遠慮があると思うし、甘えきれないと思います。でも皆さんの好意をどんどん受け取って、一緒に思い出を作っていきましょうよ。幸せになるためには、誰かに甘える事も必要なんです」
一生懸命訴えながら、私はその言葉が自分にも当てはまると痛感した。
ずっと自分の殻に籠もって、あまり人と関わらず生きてきたけれど、尊さんに出会って不器用ながらも彼を頼るようになって、とても生きやすくなったように思える。
「一人でちゃんとしないと」という気持ちはまだまだあるけれど、私は尊さんに寄りかかって色んな事を一緒に経験していく喜びを知った。
――大丈夫。
――あなたには私がいるし、速水家の皆さんもいる。
「尊さんは幸せになれますよ」
彼の頬を両手で包んで微笑みかけると、尊さんは愛しげに笑った。
「……お前は最高の女だな」
尊さんは切なげに目を細め、大切そうに私の髪を撫でてくる。
「私はあなたに幸せになってほしいですから。全力で応援団しますよ」
「チアリーダーやってくれる?」
「ん? コスプレ希望ですか? 攻めますね~」
ニヤリと笑ってみせると、尊さんもニヤリと笑う。
「朱里がポンポン持ってミニスカ穿いたら、どんだけでも頑張れるな」
「やだ、何を頑張るんですか」
「まだなんも言ってねーよ。このスケベ」
「スケベはどっちですか。このこのこのこのこの!」
私は両手の人差し指で、トトトトト……と尊さんの胸板を突く。
そしてフッ……と人差し指の先を吹き、ドヤ顔をする。
「スケベが収まるツボを突きました。もうスケベはできませんから、ご安心を」
「なぁ、スケベしようや」
そこで尊さんがネットミームを持ち出し、私は「ひひひひひ」と笑い崩れる。
「尊さん、ネットあんまり見ないくせに、なんでそういうの知ってるの!」
「涼がダイジェストで教えてくれるんだよ。あいつはネットの毒素を見ても何も動じないから、いい所も悪い所も全部見た上で、面白い部分だけ教えてくれる」
「茶こしみたいですね」
そう言うと、尊さんが笑う。
「人間なんだけど」
尊さんはツボったのか、クスクス笑って戻ってこられずにいる。
「あー…………、もう」
ひとしきり笑ったあと、彼は私を押し倒してキスをしてくる。
「ん……っ」
柔らかな唇についばまれ、下唇を甘噛みされて、私は鼻に掛かった声を漏らす。
顔を上げたあと、尊さんはいたわる目で私を見て頭を撫でてきた。
「朱里、お前さ……」
「……ん?」
目を瞬かせて返事をすると、尊さんはしばらく私を見つめたまま、その目に複雑な感情を宿す。
「……なに?」
彼が口を開いて何か言いかけた時――、ピコンと大きめの通知音が鳴り、私はビクッと肩を跳ねさせた。
「……悪い。知らない間に音量ボタンを押してたみたいだ」
尊さんは起き上がるとポケットからスマホを出し、メッセージを見て静かに息を吐いた。
「週末、ちょっと一人で出かける。たまには中村さんと二人でデートしたらどうだ?」
「え?」
急にそう言われ、私はなんとなく不自然さを感じた。
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