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女子会 編
帰宅
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「おう」
彼は私たちに気づくと、立ちあがってちょいちょいと手招きをした。
「一日ぶりです」
私は両手を広げてテテテ……と彼に近づき、パフッと抱きつく。
尊さんは私を優しく抱き締めてから、「はー…………」と長い溜め息をついた。
「……エミリ、この貸しはでかいぞ?」
「あらやだ。朱里さんも心の底から楽しんでいた女子会を、貸しだなんてそんな。スパダリ尊さんは、みみっちい事を言わないわよね? 彼女の行動を規制なんてしないわよね?」
エミリさんに言われ、尊さんはチッと舌打ちをする。
その時になって彼は腕の力を緩め、私は「怒ってるのかな?」と思いつつ、そろりと彼を見上げる。
尊さんは溜め息をつき、尋ねてきた。
「楽しかったか?」
「とっても!」
頷くと、彼は溜め息をついてクシャクシャと私の頭を撫でてきた。
「……なら、しゃーないか」
その時、春日さんが手に紙袋を持ってこちらにやってくる。
「はい、お土産に用意してもらった、ホテルのショコラとマカロン。おやつにして。あと、ホテルから紅茶もあるわ」
「わぁ! お土産まで……! ありがとうございます!」
申し訳ないなと思いつつも、私は笑顔でお礼を言う。
春日さんは喜ぶ私とエミリさんを見て得意げな顔をし、尊さんに向かってどや顔をする。
「……うぜぇ」
「私、朱里さんと一晩過ごして、彼女の色んな面を知っちゃった」
「どうでもいいけど、セクハラすんなよ。女同士だろうが成立するんだからな」
「朱里さんだって喜んでたもーん」
「はいはい、またな」
尊さんは私の手を握り、歩き始める。
「じゃ、じゃあまた! ありがとうございました!」
私はペコッと二人に会釈をし、手を振って尊さんについていく。
「またね~!」
「楽しかった! ありがとう!」
手を振る二人にもう一度会釈をした私は、チラッと尊さんの顔を盗み見した。
「……妬いてます?」
「…………どちらともいえない」
「アンケートですか」
彼の言い方がおかしくて、私はつい突っ込みを入れて笑う。
私たちは二十八階のフロントから地下一階まで行き、別のエレベーターに乗り換えて地下二階の駐車場に向かう。
尊さんの車に乗ると、早くも「帰ってきた」という気持ちになる。
「朱里」
「はい? ん」
呼ばれて彼のほうを向いた瞬間、抱き寄せられてキスをされた。
唇を押しつけられ、少し離れた時にお互い吐息をつき、またついばみ合う。
ちゅ、ちゅ、と音を立ててキスを繰り返していると、気持ちがトロン……としてきて、今までの女子会のノリがどこかに飛んでいった。
たっぷりと私の唇を味わったあと、尊さんは溜め息をついて顔を離した。
「……あんまり俺以外の奴に、見せるなよ」
「なにを?」
「色々」
彼はムスッとした顔でエンジンをかけたので、調子に乗った私はニヤニヤして彼をつつく。
「なにを~?」
昨晩の春日さんが乗り移っていたのか分からないけど、ちょっと調子に乗りすぎたのか、尊さんはこちらをジロリと見て顔を近づけてきた。
「泣かすぞ」
「……ごめんなさい」
謝りながらも、彼にそう言われてジワッと発情する私がいた。
女子会で尊さんは話のネタだったけれど、実際に彼を前にすると、完全無欠のスパダリで、これ以上ない格好いい人だ。
夜のテンションは、いわばクローズドなところでの本音だ。
昨晩のはっちゃけた〝私〟は退場して、いつもの篠宮フーズに勤める上村朱里に戻らないといけない。
尊さんはクシャッと私の頭を撫でてから、車を発進させた。
車を走らせながら、彼は溜め息をつく。
「……まさか自分が、女子会に行った彼女を心配してやきもきする男だとは思わなかった」
ボソッと呟かれた言葉を聞いて、私は思わず表情筋が痛くなるほど、無言でにやついてしまった。
彼は私たちに気づくと、立ちあがってちょいちょいと手招きをした。
「一日ぶりです」
私は両手を広げてテテテ……と彼に近づき、パフッと抱きつく。
尊さんは私を優しく抱き締めてから、「はー…………」と長い溜め息をついた。
「……エミリ、この貸しはでかいぞ?」
「あらやだ。朱里さんも心の底から楽しんでいた女子会を、貸しだなんてそんな。スパダリ尊さんは、みみっちい事を言わないわよね? 彼女の行動を規制なんてしないわよね?」
エミリさんに言われ、尊さんはチッと舌打ちをする。
その時になって彼は腕の力を緩め、私は「怒ってるのかな?」と思いつつ、そろりと彼を見上げる。
尊さんは溜め息をつき、尋ねてきた。
「楽しかったか?」
「とっても!」
頷くと、彼は溜め息をついてクシャクシャと私の頭を撫でてきた。
「……なら、しゃーないか」
その時、春日さんが手に紙袋を持ってこちらにやってくる。
「はい、お土産に用意してもらった、ホテルのショコラとマカロン。おやつにして。あと、ホテルから紅茶もあるわ」
「わぁ! お土産まで……! ありがとうございます!」
申し訳ないなと思いつつも、私は笑顔でお礼を言う。
春日さんは喜ぶ私とエミリさんを見て得意げな顔をし、尊さんに向かってどや顔をする。
「……うぜぇ」
「私、朱里さんと一晩過ごして、彼女の色んな面を知っちゃった」
「どうでもいいけど、セクハラすんなよ。女同士だろうが成立するんだからな」
「朱里さんだって喜んでたもーん」
「はいはい、またな」
尊さんは私の手を握り、歩き始める。
「じゃ、じゃあまた! ありがとうございました!」
私はペコッと二人に会釈をし、手を振って尊さんについていく。
「またね~!」
「楽しかった! ありがとう!」
手を振る二人にもう一度会釈をした私は、チラッと尊さんの顔を盗み見した。
「……妬いてます?」
「…………どちらともいえない」
「アンケートですか」
彼の言い方がおかしくて、私はつい突っ込みを入れて笑う。
私たちは二十八階のフロントから地下一階まで行き、別のエレベーターに乗り換えて地下二階の駐車場に向かう。
尊さんの車に乗ると、早くも「帰ってきた」という気持ちになる。
「朱里」
「はい? ん」
呼ばれて彼のほうを向いた瞬間、抱き寄せられてキスをされた。
唇を押しつけられ、少し離れた時にお互い吐息をつき、またついばみ合う。
ちゅ、ちゅ、と音を立ててキスを繰り返していると、気持ちがトロン……としてきて、今までの女子会のノリがどこかに飛んでいった。
たっぷりと私の唇を味わったあと、尊さんは溜め息をついて顔を離した。
「……あんまり俺以外の奴に、見せるなよ」
「なにを?」
「色々」
彼はムスッとした顔でエンジンをかけたので、調子に乗った私はニヤニヤして彼をつつく。
「なにを~?」
昨晩の春日さんが乗り移っていたのか分からないけど、ちょっと調子に乗りすぎたのか、尊さんはこちらをジロリと見て顔を近づけてきた。
「泣かすぞ」
「……ごめんなさい」
謝りながらも、彼にそう言われてジワッと発情する私がいた。
女子会で尊さんは話のネタだったけれど、実際に彼を前にすると、完全無欠のスパダリで、これ以上ない格好いい人だ。
夜のテンションは、いわばクローズドなところでの本音だ。
昨晩のはっちゃけた〝私〟は退場して、いつもの篠宮フーズに勤める上村朱里に戻らないといけない。
尊さんはクシャッと私の頭を撫でてから、車を発進させた。
車を走らせながら、彼は溜め息をつく。
「……まさか自分が、女子会に行った彼女を心配してやきもきする男だとは思わなかった」
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