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元彼に会う前に 編
ちょっと君、来なさい
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「あ! そうだった!」
私はハッとして顔を上げると、ピョンと尊さんの膝から下りる。
「あぁ……、朱里の温もりが……」
尊さんが残念そうに言うものだから、私はクスクス笑いながら自分の席に戻る。
「同棲するようになったら、毎日抱き枕させてあげますから」
「お? 言質を取ったぞ? 毎日抱かせてくれるんだな?」
「そうじゃない! 毎日エッチしてたら体が持ちません!」
私はクワッと目を見開き、恐い顔をしてみせる。
「……チッ、『うん』って言わせようと思ったのに……」
「やり方がせこいんですよ。消費者を騙すようなやり方をしてたら、消費者センターにいいつけますからね。そのうち『※個人の感想です』みたいなこと言ったりして」
「朱里を毎日抱くと風邪を引かない。……※個人の感想です」
「ほら始まった、尊さんの悪ノリ……」
私はしかめっつらをしてから噴き出し、尊さんも一緒になって笑う。
そしてまた穏やかな雰囲気に戻った私たちは、たわいのない会話をしながら食事をした。
「じゃあ、私一度帰ります」
食事と片付けを終えてシャワーを浴びたあと、歯を磨いた私はコートを着ようとする。
「なんで?」
「え? なんでって……。着替えないとなりませんし」
目を瞬かせて返事をすると、尊さんは「ちょっと君、来なさい」と言って私の手を握り、歩いていく。
着いたのは私に宛がわれた部屋で、彼が何をしたいんだか分からない私は、立ち止まって首を傾げる。
「クローゼット開けてみ」
「はぁ……」
室内のクローゼットは、壁の一面をまるまる使った豪華な物だけど、そこにはルームウェアぐらいしか入っていないはずだ。
(なんじゃろ)
白い折れ戸を開いた私は、「ん!?」と目を見開いて固まった。
クローゼットの中には、見た事のないレディースの服が沢山掛かっていた。
「朱里の大体のサイズは把握してるから、うちに泊まった時でも着替えに戻らなくて済むように、ある程度の物を揃えておいた」
「ほええ……」
私は呆然としつつ、手近にあったブラウスを見てみた。
鮮やかな花柄のブラウスはめちゃくちゃ私好みで、某GGマークの物だ。
他にも白いボウタイブラウスやシンプルなトップスもあり、さらにスカートやワンピース、アウターなど、私の好みドンピシャなアイテムが揃っていた。
お洒落着だけでなく、カジュアルなトレーナーやパーカー、ジーンズもあり、ルームウェアやパジャマも揃っている。
服だけでなく、隅にある引き出しにはやはり私が普段好んで来ている色味のセーターやベルトなどもあり、未開封のシューズボックスやバッグの入った箱も積まれてあった。
「はああ……」
溜め息をついた私は、眉を下げて尊さんを見る。
「……初孫を喜ぶお爺ちゃんみたい……」
「おい! 第一声がそれか!」
尊さんは思いっきりガッカリした顔で、私に突っ込みを入れる。
「総額幾ら掛かりました? どれもブランド物ですし……、むぐ」
そう言った途端、尊さんが私の顎を掴んで親指を唇に押しつけてきた。
「躾その一とその二は?」
クリスマスデートの時に言われた事を尋ねられ、私はおずおずと返事をする。
「値段を気にしない。遠慮しない」
「Exactly」
尊さんはあの時と同じ返事をし、私の肩を抱いてくる。
「好きな女に自分の買った服を着せるって、やってみたかったんだよ」
「アカリちゃん人形ですか……」
私は彼の胸板に顔を寄せ、苦笑いして言う。
「まだ少ししか買ってないし、朱里の手持ちも入れたいだろうから、これからデートを重ねて服を買っていこう。アクセサリーや帽子とかもだし、……下着もな」
「もう……」
私は真っ赤になって文句を言いながらも、彼の体に腕を回しギュッと抱き締める。
「あんまり甘やかすと、あとが怖いんですからね?」
「無添加の最高級カリカリも用意しておく」
「だから猫じゃないですって」
ポンッと尊さんの胸板を叩くと、彼はクスクス笑う。
「ま、キャットタワーはホテルや旅行先のタワーで我慢してもらって、爪とぎは……、ここな」
そう言って、尊さんは私をギュッと抱き締め、手を背中に回させる。
行為中に気持ちよすぎて爪を立ててしまった事を思いだし、私はカーッと赤面した。
「せっかく美人猫を手に入れたんだから、下僕として世話を焼かせていただきますとも。朱里の綺麗な毛並みのためなら、何でもする」
尊さんは優しく微笑むと、私の手をとって甲に口づけた。
「……も、もぉぉ……」
照れて赤面した私は彼の胸板に額をつけ、グリグリと顔を押しつける。
「……じゃあ、せっかくだから服、着させてもらいます。……あ、ありがとうございます……」
「OK。……よし! 元彼に会いに行くのに、イマカレが贈った服を着る彼女、最高!」
明るく言った尊さんの言葉を聞き、私はガクッと脱力したのだった。
**
私はハッとして顔を上げると、ピョンと尊さんの膝から下りる。
「あぁ……、朱里の温もりが……」
尊さんが残念そうに言うものだから、私はクスクス笑いながら自分の席に戻る。
「同棲するようになったら、毎日抱き枕させてあげますから」
「お? 言質を取ったぞ? 毎日抱かせてくれるんだな?」
「そうじゃない! 毎日エッチしてたら体が持ちません!」
私はクワッと目を見開き、恐い顔をしてみせる。
「……チッ、『うん』って言わせようと思ったのに……」
「やり方がせこいんですよ。消費者を騙すようなやり方をしてたら、消費者センターにいいつけますからね。そのうち『※個人の感想です』みたいなこと言ったりして」
「朱里を毎日抱くと風邪を引かない。……※個人の感想です」
「ほら始まった、尊さんの悪ノリ……」
私はしかめっつらをしてから噴き出し、尊さんも一緒になって笑う。
そしてまた穏やかな雰囲気に戻った私たちは、たわいのない会話をしながら食事をした。
「じゃあ、私一度帰ります」
食事と片付けを終えてシャワーを浴びたあと、歯を磨いた私はコートを着ようとする。
「なんで?」
「え? なんでって……。着替えないとなりませんし」
目を瞬かせて返事をすると、尊さんは「ちょっと君、来なさい」と言って私の手を握り、歩いていく。
着いたのは私に宛がわれた部屋で、彼が何をしたいんだか分からない私は、立ち止まって首を傾げる。
「クローゼット開けてみ」
「はぁ……」
室内のクローゼットは、壁の一面をまるまる使った豪華な物だけど、そこにはルームウェアぐらいしか入っていないはずだ。
(なんじゃろ)
白い折れ戸を開いた私は、「ん!?」と目を見開いて固まった。
クローゼットの中には、見た事のないレディースの服が沢山掛かっていた。
「朱里の大体のサイズは把握してるから、うちに泊まった時でも着替えに戻らなくて済むように、ある程度の物を揃えておいた」
「ほええ……」
私は呆然としつつ、手近にあったブラウスを見てみた。
鮮やかな花柄のブラウスはめちゃくちゃ私好みで、某GGマークの物だ。
他にも白いボウタイブラウスやシンプルなトップスもあり、さらにスカートやワンピース、アウターなど、私の好みドンピシャなアイテムが揃っていた。
お洒落着だけでなく、カジュアルなトレーナーやパーカー、ジーンズもあり、ルームウェアやパジャマも揃っている。
服だけでなく、隅にある引き出しにはやはり私が普段好んで来ている色味のセーターやベルトなどもあり、未開封のシューズボックスやバッグの入った箱も積まれてあった。
「はああ……」
溜め息をついた私は、眉を下げて尊さんを見る。
「……初孫を喜ぶお爺ちゃんみたい……」
「おい! 第一声がそれか!」
尊さんは思いっきりガッカリした顔で、私に突っ込みを入れる。
「総額幾ら掛かりました? どれもブランド物ですし……、むぐ」
そう言った途端、尊さんが私の顎を掴んで親指を唇に押しつけてきた。
「躾その一とその二は?」
クリスマスデートの時に言われた事を尋ねられ、私はおずおずと返事をする。
「値段を気にしない。遠慮しない」
「Exactly」
尊さんはあの時と同じ返事をし、私の肩を抱いてくる。
「好きな女に自分の買った服を着せるって、やってみたかったんだよ」
「アカリちゃん人形ですか……」
私は彼の胸板に顔を寄せ、苦笑いして言う。
「まだ少ししか買ってないし、朱里の手持ちも入れたいだろうから、これからデートを重ねて服を買っていこう。アクセサリーや帽子とかもだし、……下着もな」
「もう……」
私は真っ赤になって文句を言いながらも、彼の体に腕を回しギュッと抱き締める。
「あんまり甘やかすと、あとが怖いんですからね?」
「無添加の最高級カリカリも用意しておく」
「だから猫じゃないですって」
ポンッと尊さんの胸板を叩くと、彼はクスクス笑う。
「ま、キャットタワーはホテルや旅行先のタワーで我慢してもらって、爪とぎは……、ここな」
そう言って、尊さんは私をギュッと抱き締め、手を背中に回させる。
行為中に気持ちよすぎて爪を立ててしまった事を思いだし、私はカーッと赤面した。
「せっかく美人猫を手に入れたんだから、下僕として世話を焼かせていただきますとも。朱里の綺麗な毛並みのためなら、何でもする」
尊さんは優しく微笑むと、私の手をとって甲に口づけた。
「……も、もぉぉ……」
照れて赤面した私は彼の胸板に額をつけ、グリグリと顔を押しつける。
「……じゃあ、せっかくだから服、着させてもらいます。……あ、ありがとうございます……」
「OK。……よし! 元彼に会いに行くのに、イマカレが贈った服を着る彼女、最高!」
明るく言った尊さんの言葉を聞き、私はガクッと脱力したのだった。
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