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その後の動き 編
副社長に
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彼だって、きっとこう言うだろう。
『飯は自分で作れるし家政婦さんがいるから、家事が得意なだけの女は必要ない。若さも美貌も十年経てば、一番の誇りと言えなくなる。一緒にいて楽しいだけ? 盛り上げられる? 〝楽しい〟だけなら友達でも良くねぇか?』
きっといつものように淡々と、それでいてスッパリと切り捨てると思う。
尊さんは滅多に感情を高ぶらせないし、どれだけ嫌な事があっても公私混同して、他人に当たる人じゃない。
だから周りから『いつも落ち着いていて淡々として、何を考えてるか分からない人』と思われがちだ。それでいて、穏やか=優しいと思っている人もいる。
篠宮フーズに入社してから、女性社員が速水部長に告白したって話は頻繁に聞いている。
でもこの四年、『誰かが速水部長とデートした』という話は聞かなかった。
『部長は遊び人』とか、無責任な噂なら耳にしたけど、多分フラれた人が悔し紛れに言ったんだと思う。
(尊さんは、断る時はきっぱり断る人だもんな。相手が傷付く言い方はしないけど、期待を持たせないように、しっかりと想いを絶つ人だ)
それで恨まれるなら、仕方がないと覚悟している。
「綾子さんは確かに美人だし、男が連れて歩いていい気分になるタイプの人ではあるよね」
恵の言葉を聞き、私は頷く。
「綺麗だし美意識高いし、ハイブラ持ってるし、料理も上手。商社マンの彼氏がいて海外旅行いってて……。二十代の女が求めるもの、全部持ってるねぇ……」
そういうものを求めない人はいるけど、流行りのものを追ってるタイプの女性なら、綾子さんを見て『羨ましい』と思うだろう。
「朱里は綾子さんに引け目を感じてるのかもしれないけど、部長はあんたの事が好きなんだからね。ブレたら駄目だよ」
「うん」
きちんと押さえるところを押さえてくれた恵に、私は内心で感謝する。
「これから何人の女が告白するかねぇ……」
でも彼女はニヤニヤしながら言い、きつねうどんのお揚げを囓る。
「まぁ、見守りましょう」
結局、私にはそれしかできない。
「……はぁ。金曜日の飲み会の事でも考えよう」
「係長に絡まれないようにね」
恵に言われ、私はもう一度溜め息をついてから「それな」と言ったのだった。
**
そのあと尊さんからこっそり聞いた話では、取締役会で亘さんの辞任勧告がされたとの事だ。
亘さんは風磨さんを次期社長、尊さんを副社長として株主総会、取締役会に推薦した。
その後、彼は系列会社にある、高級和食料理店の会社社長に収まるらしい。
何にせよ、お祖父さんの有志さんが目を光らせているので、株主総会で承認されれば、すべてその通りになるらしい。
有志さんは大株主の人たちと仲良くしているので、この決定が覆る事もほぼないという事だ。
《まぁ、腹を括るしかねぇな》
夜、私は尊さんとスマホアプリ『Face to Face』通称FTFを使って、テレビ電話をしていた。
「今まで以上に大変になりますね」
仕事としてもそうだし、副社長ともなれば、もしかしたらお祖父さんが婚約者を用意するんじゃ……と余計な心配をしてしまった。
それを見透かしたのか、尊さんは安心させるように言う。
《女性関係については、もう心配する事はねぇからな》
「そうなんです?」
《祖父さんの望みは一族経営の形を保ちつつ、しっかり会社を大きくしていく事だ。風磨は多少優柔不断なところはあるけど、経営者としてのノウハウや能力は十分にある。それを副社長として支える事を条件に、朱里との結婚を承諾させた》
「……い、いいんですか? 副社長、本当にやりたい事です? 怜香さんの束縛がもうなくなったなら、会社を辞める事だってできるんじゃないですか?」
以前に過去の話をした時、尊さんは海外で働く事を望んでいた。
《いいんだよ。乗りかかった船だと思ってる。確かに海外への憧れはあったけど、結局は怜香から逃れたい思いから生じた望みだった。普通に働いて普通に恋ができるなら、それ以上の事はない》
「……そうならいいんですが」
溜め息をつくと、尊さんが苦笑いした。
《祖父さんが、〝今度、朱里さんを連れてこい〟だってさ》
「ええっ」
怜香さんと会った時の事を思いだし、私はついビクついてしまった。
『飯は自分で作れるし家政婦さんがいるから、家事が得意なだけの女は必要ない。若さも美貌も十年経てば、一番の誇りと言えなくなる。一緒にいて楽しいだけ? 盛り上げられる? 〝楽しい〟だけなら友達でも良くねぇか?』
きっといつものように淡々と、それでいてスッパリと切り捨てると思う。
尊さんは滅多に感情を高ぶらせないし、どれだけ嫌な事があっても公私混同して、他人に当たる人じゃない。
だから周りから『いつも落ち着いていて淡々として、何を考えてるか分からない人』と思われがちだ。それでいて、穏やか=優しいと思っている人もいる。
篠宮フーズに入社してから、女性社員が速水部長に告白したって話は頻繁に聞いている。
でもこの四年、『誰かが速水部長とデートした』という話は聞かなかった。
『部長は遊び人』とか、無責任な噂なら耳にしたけど、多分フラれた人が悔し紛れに言ったんだと思う。
(尊さんは、断る時はきっぱり断る人だもんな。相手が傷付く言い方はしないけど、期待を持たせないように、しっかりと想いを絶つ人だ)
それで恨まれるなら、仕方がないと覚悟している。
「綾子さんは確かに美人だし、男が連れて歩いていい気分になるタイプの人ではあるよね」
恵の言葉を聞き、私は頷く。
「綺麗だし美意識高いし、ハイブラ持ってるし、料理も上手。商社マンの彼氏がいて海外旅行いってて……。二十代の女が求めるもの、全部持ってるねぇ……」
そういうものを求めない人はいるけど、流行りのものを追ってるタイプの女性なら、綾子さんを見て『羨ましい』と思うだろう。
「朱里は綾子さんに引け目を感じてるのかもしれないけど、部長はあんたの事が好きなんだからね。ブレたら駄目だよ」
「うん」
きちんと押さえるところを押さえてくれた恵に、私は内心で感謝する。
「これから何人の女が告白するかねぇ……」
でも彼女はニヤニヤしながら言い、きつねうどんのお揚げを囓る。
「まぁ、見守りましょう」
結局、私にはそれしかできない。
「……はぁ。金曜日の飲み会の事でも考えよう」
「係長に絡まれないようにね」
恵に言われ、私はもう一度溜め息をついてから「それな」と言ったのだった。
**
そのあと尊さんからこっそり聞いた話では、取締役会で亘さんの辞任勧告がされたとの事だ。
亘さんは風磨さんを次期社長、尊さんを副社長として株主総会、取締役会に推薦した。
その後、彼は系列会社にある、高級和食料理店の会社社長に収まるらしい。
何にせよ、お祖父さんの有志さんが目を光らせているので、株主総会で承認されれば、すべてその通りになるらしい。
有志さんは大株主の人たちと仲良くしているので、この決定が覆る事もほぼないという事だ。
《まぁ、腹を括るしかねぇな》
夜、私は尊さんとスマホアプリ『Face to Face』通称FTFを使って、テレビ電話をしていた。
「今まで以上に大変になりますね」
仕事としてもそうだし、副社長ともなれば、もしかしたらお祖父さんが婚約者を用意するんじゃ……と余計な心配をしてしまった。
それを見透かしたのか、尊さんは安心させるように言う。
《女性関係については、もう心配する事はねぇからな》
「そうなんです?」
《祖父さんの望みは一族経営の形を保ちつつ、しっかり会社を大きくしていく事だ。風磨は多少優柔不断なところはあるけど、経営者としてのノウハウや能力は十分にある。それを副社長として支える事を条件に、朱里との結婚を承諾させた》
「……い、いいんですか? 副社長、本当にやりたい事です? 怜香さんの束縛がもうなくなったなら、会社を辞める事だってできるんじゃないですか?」
以前に過去の話をした時、尊さんは海外で働く事を望んでいた。
《いいんだよ。乗りかかった船だと思ってる。確かに海外への憧れはあったけど、結局は怜香から逃れたい思いから生じた望みだった。普通に働いて普通に恋ができるなら、それ以上の事はない》
「……そうならいいんですが」
溜め息をつくと、尊さんが苦笑いした。
《祖父さんが、〝今度、朱里さんを連れてこい〟だってさ》
「ええっ」
怜香さんと会った時の事を思いだし、私はついビクついてしまった。
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