【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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その後の動き 編

副社長に

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 彼だって、きっとこう言うだろう。

『飯は自分で作れるし家政婦さんがいるから、家事が得意なだけの女は必要ない。若さも美貌も十年経てば、一番の誇りと言えなくなる。一緒にいて楽しいだけ? 盛り上げられる? 〝楽しい〟だけなら友達でも良くねぇか?』

 きっといつものように淡々と、それでいてスッパリと切り捨てると思う。

 尊さんは滅多に感情を高ぶらせないし、どれだけ嫌な事があっても公私混同して、他人に当たる人じゃない。

 だから周りから『いつも落ち着いていて淡々として、何を考えてるか分からない人』と思われがちだ。それでいて、穏やか=優しいと思っている人もいる。

 篠宮フーズに入社してから、女性社員が速水部長に告白したって話は頻繁に聞いている。

 でもこの四年、『誰かが速水部長とデートした』という話は聞かなかった。

『部長は遊び人』とか、無責任な噂なら耳にしたけど、多分フラれた人が悔し紛れに言ったんだと思う。

(尊さんは、断る時はきっぱり断る人だもんな。相手が傷付く言い方はしないけど、期待を持たせないように、しっかりと想いを絶つ人だ)

 それで恨まれるなら、仕方がないと覚悟している。

「綾子さんは確かに美人だし、男が連れて歩いていい気分になるタイプの人ではあるよね」

 恵の言葉を聞き、私は頷く。

「綺麗だし美意識高いし、ハイブラ持ってるし、料理も上手。商社マンの彼氏がいて海外旅行いってて……。二十代の女が求めるもの、全部持ってるねぇ……」

 そういうものを求めない人はいるけど、流行りのものを追ってるタイプの女性なら、綾子さんを見て『羨ましい』と思うだろう。

「朱里は綾子さんに引け目を感じてるのかもしれないけど、部長はあんたの事が好きなんだからね。ブレたら駄目だよ」

「うん」

 きちんと押さえるところを押さえてくれた恵に、私は内心で感謝する。

「これから何人の女が告白するかねぇ……」

 でも彼女はニヤニヤしながら言い、きつねうどんのお揚げを囓る。

「まぁ、見守りましょう」

 結局、私にはそれしかできない。

「……はぁ。金曜日の飲み会の事でも考えよう」

「係長に絡まれないようにね」

 恵に言われ、私はもう一度溜め息をついてから「それな」と言ったのだった。



**



 そのあと尊さんからこっそり聞いた話では、取締役会で亘さんの辞任勧告がされたとの事だ。

 亘さんは風磨さんを次期社長、尊さんを副社長として株主総会、取締役会に推薦した。

 その後、彼は系列会社にある、高級和食料理店の会社社長に収まるらしい。

 何にせよ、お祖父さんの有志ゆうじさんが目を光らせているので、株主総会で承認されれば、すべてその通りになるらしい。

 有志さんは大株主の人たちと仲良くしているので、この決定が覆る事もほぼないという事だ。

《まぁ、腹を括るしかねぇな》

 夜、私は尊さんとスマホアプリ『Face to Face』通称FTFを使って、テレビ電話をしていた。

「今まで以上に大変になりますね」

 仕事としてもそうだし、副社長ともなれば、もしかしたらお祖父さんが婚約者を用意するんじゃ……と余計な心配をしてしまった。

 それを見透かしたのか、尊さんは安心させるように言う。

《女性関係については、もう心配する事はねぇからな》

「そうなんです?」

《祖父さんの望みは一族経営の形を保ちつつ、しっかり会社を大きくしていく事だ。風磨は多少優柔不断なところはあるけど、経営者としてのノウハウや能力は十分にある。それを副社長として支える事を条件に、朱里との結婚を承諾させた》

「……い、いいんですか? 副社長、本当にやりたい事です? 怜香さんの束縛がもうなくなったなら、会社を辞める事だってできるんじゃないですか?」

 以前に過去の話をした時、尊さんは海外で働く事を望んでいた。

《いいんだよ。乗りかかった船だと思ってる。確かに海外への憧れはあったけど、結局は怜香から逃れたい思いから生じた望みだった。普通に働いて普通に恋ができるなら、それ以上の事はない》

「……そうならいいんですが」

 溜め息をつくと、尊さんが苦笑いした。

《祖父さんが、〝今度、朱里さんを連れてこい〟だってさ》

「ええっ」

 怜香さんと会った時の事を思いだし、私はついビクついてしまった。
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