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恵 編
〝メガ〟
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「そうだな。や、食わねぇより全然いいから、健康的でいいと思うけど」
ちょっと気にしてはいたので、一瞬ピクッとしてしまったけれど、尊さんの返事を聞いて彼がかつて言っていた事を思いだした。
『俺の母親があんまり食えない人だったんだよ。線が細くてか弱いイメージの人だった。……だからかな、お前が美味そうにパクパク食べてる姿を見ると、安心するんだよ。もっと食わせたい』
年末におうちデートしていた時の事で、あの時の尊さんの少し寂しそうな顔は胸に残っている。
だから、わざと茶化すように言った。
「それが何か? 食べ物に感謝しておいしーくいただきますが」
こっくりとした濃厚なチーズのリゾットを食べつつ、そんな事を言うものだから、二人とも横を向いて噴き出した。
ひとしきり笑ってから恵が言う。
「や、食べるのはいいんだけどさ。篠宮さん、朱里の手料理食べた事あります?」
尋ねられて、尊さんは軽く瞠目して私を見た。
「……そういえば、一から十まで手作りっていうのはないかもな。合同作品ならあるけど」
「ですね」
尊さんの家に行った時、彼は私一人に料理を作らせたりしない。
そもそも家政婦さんがいるから料理をする機会はあまりないけれど、それでも台所に立つ時があるなら二人で……だ。
『いつか朱里の手料理食ってみてぇな』と言われた事はあるけど、私がソロで料理した事はまだない。
「……なんか問題あった? 私、恵と何回もお泊まりしてご飯作ってるけど、……そんなに不味かった?」
不安になって恵を見たけど、彼女はちょっと言いにくそうに視線を逸らし、溜め息をついてから言う。
「あんた、なんでも〝メガ〟がつくでしょ」
「めが?」
尊さんは瞬きをし、よく分からないというように私を見る。
「この子が作る料理、美味しいんですよ。昔、バイトで厨房で働いていた事もあったし。でも量が多い! まともに全部食べたらお腹がはち切れて死にます!」
「しっ、死なないよ!」
私は焦って顔の前でパタパタと手を振る。
そんな私に向かって、恵はビシッと指をさしてきた。
「傷つけると思って言わなかったけど、あんたは人より結構食べるタイプだって自覚しといたほうがいい。お泊まりして〝メガ炒飯〟を出された時、美味しかったけど食べきれなくて、夜に苦しくて眠れない。……って事が結構あったんだから……」
「ええ……。ご、ごめん……。初耳……」
私は呆然として謝る。
「私は苦しんでるのに、朱里はデザートのコンビニスイーツ食べてるでしょ? しかもお腹が膨らんでたらまだ納得できるのに、ぺたんこのまんまなんだよ? 『……化け物』って思ったよね」
「……っ、化け物……っ!」
とうとう尊さんが横を向いて背中を丸め、ヒイヒイ笑い出した。
「恵ーっ! 酷いな! 化け物は酷いな!」
私はプンスコ怒ったふりをする。
「だってさぁ……。お腹パンパンなら『あぁ、朱里もお腹いっぱいだけど頑張って食べてるんだな』って思えるけど、お腹平らなんだよ? しかもあんた太らないし、いつまでもナイスバディだし、どうなってんのって思うでしょ」
そう言われるとなんだか怒りづらくなり、私は振り上げた拳を下げていく。
「この腹の中で、特別な消化液でも出てるのかね。もしくは●ービィか」
尊さんが私のお腹をポンポンと撫でる。
「ギルティ!」
私はとっさに彼の手をペチンッと叩いた。
その途端、尊さんと恵が弾かれたように笑った。もー。
ひとしきり笑ったあと、恵が尋ねてきた。
「今さらだけど、朱里って私と篠宮さんが会っていた事に妬いてない?」
「ん? んー……」
そういえばそうだな、と思い、素直な気持ちを口にした。
「即答するなら全然妬いてない。……多分、恵が私の事を好きって言ってくれた気持ちを信じてるからかな。恵は魅力的だけど、長年親友として付き合っていて、男の人に興味を持ったり、何かされて照れた姿って見た事ないから。相手が尊さんであっても、惹かれる可能性は凄く低いんじゃ……と思ってる」
答えると、恵は嬉しそうに微笑む。
「そう思ってもらえたなら良かった。っていうか、万が一でも朱里に妬かれてたらやだな、って思ってたから、聞いてみてスッキリした」
と、尊さんも自分の意見を言う。
「俺も、こう言ったら悪いけど、中村さんの事は女性として見てない。長年〝協力者〟としてお互いの利益のために接してきたけど、それ以上の気持ちはない」
「安心しました。女として見られてたら、『キモ……』ってなると思うので」
恵が忌憚ない意見を言ったあと、尊さんが軽く挙手した。
「中村さん、失礼な質問かもしれないけど、いい?」
ちょっと気にしてはいたので、一瞬ピクッとしてしまったけれど、尊さんの返事を聞いて彼がかつて言っていた事を思いだした。
『俺の母親があんまり食えない人だったんだよ。線が細くてか弱いイメージの人だった。……だからかな、お前が美味そうにパクパク食べてる姿を見ると、安心するんだよ。もっと食わせたい』
年末におうちデートしていた時の事で、あの時の尊さんの少し寂しそうな顔は胸に残っている。
だから、わざと茶化すように言った。
「それが何か? 食べ物に感謝しておいしーくいただきますが」
こっくりとした濃厚なチーズのリゾットを食べつつ、そんな事を言うものだから、二人とも横を向いて噴き出した。
ひとしきり笑ってから恵が言う。
「や、食べるのはいいんだけどさ。篠宮さん、朱里の手料理食べた事あります?」
尋ねられて、尊さんは軽く瞠目して私を見た。
「……そういえば、一から十まで手作りっていうのはないかもな。合同作品ならあるけど」
「ですね」
尊さんの家に行った時、彼は私一人に料理を作らせたりしない。
そもそも家政婦さんがいるから料理をする機会はあまりないけれど、それでも台所に立つ時があるなら二人で……だ。
『いつか朱里の手料理食ってみてぇな』と言われた事はあるけど、私がソロで料理した事はまだない。
「……なんか問題あった? 私、恵と何回もお泊まりしてご飯作ってるけど、……そんなに不味かった?」
不安になって恵を見たけど、彼女はちょっと言いにくそうに視線を逸らし、溜め息をついてから言う。
「あんた、なんでも〝メガ〟がつくでしょ」
「めが?」
尊さんは瞬きをし、よく分からないというように私を見る。
「この子が作る料理、美味しいんですよ。昔、バイトで厨房で働いていた事もあったし。でも量が多い! まともに全部食べたらお腹がはち切れて死にます!」
「しっ、死なないよ!」
私は焦って顔の前でパタパタと手を振る。
そんな私に向かって、恵はビシッと指をさしてきた。
「傷つけると思って言わなかったけど、あんたは人より結構食べるタイプだって自覚しといたほうがいい。お泊まりして〝メガ炒飯〟を出された時、美味しかったけど食べきれなくて、夜に苦しくて眠れない。……って事が結構あったんだから……」
「ええ……。ご、ごめん……。初耳……」
私は呆然として謝る。
「私は苦しんでるのに、朱里はデザートのコンビニスイーツ食べてるでしょ? しかもお腹が膨らんでたらまだ納得できるのに、ぺたんこのまんまなんだよ? 『……化け物』って思ったよね」
「……っ、化け物……っ!」
とうとう尊さんが横を向いて背中を丸め、ヒイヒイ笑い出した。
「恵ーっ! 酷いな! 化け物は酷いな!」
私はプンスコ怒ったふりをする。
「だってさぁ……。お腹パンパンなら『あぁ、朱里もお腹いっぱいだけど頑張って食べてるんだな』って思えるけど、お腹平らなんだよ? しかもあんた太らないし、いつまでもナイスバディだし、どうなってんのって思うでしょ」
そう言われるとなんだか怒りづらくなり、私は振り上げた拳を下げていく。
「この腹の中で、特別な消化液でも出てるのかね。もしくは●ービィか」
尊さんが私のお腹をポンポンと撫でる。
「ギルティ!」
私はとっさに彼の手をペチンッと叩いた。
その途端、尊さんと恵が弾かれたように笑った。もー。
ひとしきり笑ったあと、恵が尋ねてきた。
「今さらだけど、朱里って私と篠宮さんが会っていた事に妬いてない?」
「ん? んー……」
そういえばそうだな、と思い、素直な気持ちを口にした。
「即答するなら全然妬いてない。……多分、恵が私の事を好きって言ってくれた気持ちを信じてるからかな。恵は魅力的だけど、長年親友として付き合っていて、男の人に興味を持ったり、何かされて照れた姿って見た事ないから。相手が尊さんであっても、惹かれる可能性は凄く低いんじゃ……と思ってる」
答えると、恵は嬉しそうに微笑む。
「そう思ってもらえたなら良かった。っていうか、万が一でも朱里に妬かれてたらやだな、って思ってたから、聞いてみてスッキリした」
と、尊さんも自分の意見を言う。
「俺も、こう言ったら悪いけど、中村さんの事は女性として見てない。長年〝協力者〟としてお互いの利益のために接してきたけど、それ以上の気持ちはない」
「安心しました。女として見られてたら、『キモ……』ってなると思うので」
恵が忌憚ない意見を言ったあと、尊さんが軽く挙手した。
「中村さん、失礼な質問かもしれないけど、いい?」
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