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クリスマスデート 編

クリスマスの朝

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「……変な裏声作るのやめてくれます?」

 唇を突き出してむくれると、彼は「ははっ」と楽しそうに笑った。

 そのあと朝食を食べ終えた私は、彼にプレゼントを渡そうと思い、「ちょっと……」と立った。

 そしてバッグを置いてある所まで行き、紙袋ごとプレゼントを持ってくる。

「あ、あの。メリークリスマス。……出遅れましたけど」

「おう、サンキュ」

 昨日会った時から紙袋を持っていたので、鋭い彼にはバレバレだっただろう。

 でも尊さんは指摘せず、私の格好がつくようにしてくれた。

 ……こういうところ、やっぱりさり気なく気遣い男なんだよな……。

「あの……、金額的に釣り合いが取れないかもですが……」

 そうは言っても、ネクタイ一本で三万円近くするブランド物なので、私にしてはかなり背伸びした。

 緊張してラグジュアリーな店舗へ行って、どんなネクタイが似合うかめっちゃ悩んだ。

 コテコテのブランドにならないように、可愛いのも避けて、最終的にさり気なくブランドロゴが隠れている、シンプルめの紺色のネクタイにした。

「そういうの気にすんな。朱里からもらえるなら何でも嬉しい。開けていい?」

「はい」

 頷くと、尊さんは白いリボンを引き、モスグリーンの細長い箱を開けた。

「あ、あの。一生懸命考えて選びましたが、好みじゃなかったらすみません」

 彼氏にプレゼントをあげて、こんなに緊張するの初めてだ。

 立ったままモジモジしていると、尊さんはシュルッと紺色のネクタイを箱から出して微笑んだ。

「ありがと。大切にするわ」

 お礼を言ったあと、彼は私を手招きする。

「ん……?」

 近寄ると、彼は私を抱き寄せて、自分の膝の上に向かい合うように座らせた。

「初めては朱里が結んで。パジャマだけど」

 そう言われて、胸がキューッとなった。

 なんでこの男、女が喜ぶツボを心得てるんだろ。ムカつく。

「……私、ネクタイ結んだ事ありませんよ」

「お、ネクタイ処女もらい。ラッキー」

「ちょっと! ネクタイ処女とか、変な事言うのやめてくださいよ」

 言いながら、私はとりあえず尊さんの首にネクタイを掛けてみる。

「やり方、分かんねぇ?」

「はい……。すみません。中学はリボンで、高校はセーラーだったので」

「セーラーいいな。ガキには興味ねぇけど、朱里のセーラーならめっちゃ興奮するかも」

「変態!」

 私は彼の顔面を、むぎゅうと押す。

 そして失礼だと承知の上で、ボソッと言った。

「意外と、女子高生とか好きじゃないんですね」

 そう言うと、彼は物凄い顔をして私を見てきた。

「お前、俺をどういう目で見てる訳? マジでガキには興味ねぇよ。女子大生も論外」

「女子大生ならワンチャンあるんじゃないですか? ふがっ」

 口答えすると、また鼻を摘ままれた。

「あのなぁ、お前が世の男にどういうイメージを持ってるか知らねぇけど、俺は色気のある大人の女しか興味ない訳。これぐらい……」

「わっ」

 尊さんが話しながら、私のお尻を鷲掴みにした。

「これぐらい脂肪がのってるほうが好み。なんなら巨乳で、ふるいつきたくなるような体だと尚いい。……そんで、クールそうでちょっと生意気で、ちょっと抜けてると最高」

「っ~~~~」

 私の事が好きだと言われ、不意打ちを受けてカーッと赤面してしまう。

 なのでつい、照れ隠しで憎まれ口を叩いてしまった。

「脂肪って言うな」

 ボスッと軽く彼に腹パンすると、尊さんは肩を揺らしてクツクツと笑う。

「ネクタイの結び方、教えてやるよ」

 彼は私の両手を掴み、ネクタイを結び始めた。

「こうしてこう、巻き付けて……、こう」

「……複雑、ですね……」

 私はできあがった結び目を見て、目を瞬かせる。

「俺、割と古風なの好きなんだけど。玄関で『あなた、曲がってますよ』ってちょっと直すやつとか」

「ええ? ああいうの好みですか? じゃあ私、着物で割烹着だ」

「やべぇ、それめっちゃ滾る。着崩してぶち込みたい」

「エロばっかり!」

 私たちはポンポン言い合い、クスクス笑う。

 彼とそんな関係になれたのが堪らなく嬉しく、この時間が愛おしかった。
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