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初デート 編
分からせてやろうじゃない
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「……ま、慣れたけどな。こんな扱いを受けるのは今に始まった事じゃない。逆に部長のポストを用意してくれた事には感謝してるよ」
「そんなの、虐待された人の言う台詞じゃないですか。普通ならもっと怒るものなんです。何でそんなにのんびりしてるんですか……っ。…………っ、~~~~~っ」
グッと感情がこみ上げ、私はポロポロと涙を零していた。
「……おい。ありがたいけど泣く事ないだろ。まぁ、食えよ」
「食いますよ」
私はポンポンと肩を叩いてきた彼の手を払い、海老を口に突っ込んだ。
「まぁ、今は悠々自適に一人暮らしをしてるし、学生時代よりずっと自由だけどな」
「……今まで本気で付き合う恋人がいなかったのは?」
甘い南瓜を口に入れ、ムグムグと噛んで尋ねる。
私の質問を聞き、尊さんはニヤッと笑った。
「察してるだろ。当たりだよ」
「……言ってください。〝察してちゃん〟にはなりたくないので」
私は大きな溜め息をつき、グイーッと白ワインを呷った。酒がないとやってらんない。
「……まぁ? 好きな子ができたらいつの間にか怜香さんに知られてて、関係をぶち壊されたな。学生時代の恋愛ならまだ良かったけど、社会人になってから割と本気で付き合おうと思った子との関係も壊された」
「どうやって? 私の身にも降りかかる事だと思うので、知っておきたいです」
「俺が浮気してるって嘘つかれたり、あとは賄賂みたいなものかな。金や貴重なブランド品で釣ったり、怜香さんが使えるコネで女の子の望みを叶えるから、別れろって」
「ぶっちゃけ、お金の無心みたいな感じで戻ってきませんか? 他にも、本気で尊さんを愛していた女性だっていたでしょう?」
彼はまた皮肉げに笑う。
「女の愛情なんて薄いもんだよ。五百万で俺を捨てた女もいたし、三千万まで頑張った女もいたかな。ブランドバッグ二十個で手を打った奴もいた。それにそこそこ顔が良くて社会的地位もある〝替えの男〟を用意されたら、俺みたいな面倒なのに関わる必要もなくなるだろ?」
「…………はぁ?」
あまりに酷い話を聞いて、私は目を剥く。
「なんでそんな女と付き合ってたんですか? こんなにいい男なのに、駄目女ホイホイですか?」
そう言った途端、彼は眉を上げて笑った。
「いい男って思ってくれた?」
「馬鹿!」
私は尊さんの腕をバシッと叩き、大きな溜め息をつく。
シーフードが出されたあとにお肉が焼かれ始めたけれど、楽しんで食べられる気がしなかった。
「……また今度、このお店に連れてきてください。今度は笑いながら食事を楽しみたいので」
「了解。悪かった。美味い飯で帳消しになるかと思ったけど、店にも失礼だったな」
彼が素直に謝ってくれたので、せっかくのお肉を……という話はもうしないと決めた。
私はブスッとして、目の前で見事な手つきで焼かれているお肉を見守る。
それでも、こんな話を聞かされたぐらいで自分の気持ちは揺るがないと、この男に分からせてやりたかった。
彼があんまりにもすべてを諦めた態度をとっているから、ちょっと腹が立っている。
「……私、どれだけお金を積まれても、高価な物を買うって言われても、別れませんから。見くびらないでください」
「朱里が俺を見放すなんて思ってないよ」
そう言って、尊さんはまた薄く笑う。
ずっと彼の笑い方を皮肉っぽいと思っていたけれど、癖なんだと理解した。
彼は今までずっと、そういう笑い方しかできない生き方をしてきた。
心の底から、嬉しくて、幸せな気持ちで笑う事はなかったのかもしれない。
そう思うと、とても悲しくなった。
尊さんは、私が心から彼を愛するとまだ信じていない。
信じていないくせに、私の愛を望んでいる。
――じゃあ、分からせてやろうじゃない。
正直、今はまだ、彼を心から愛して、自分の愛で目覚めさせてあげたいなんて思えていない。
私の心を燃え立たせているのは、怒りだ。
やっぱり、恋は戦いだ。
絶対負けない。
同時に感じていた。
――この人を幸せにする事ができたら、私も本当の愛を知って幸せになれるのかもしれない。
……なんて悲しい愛し方なんだろう。
でも私も尊さんも、本当の愛なんて知らないんだから仕方がない。
「そんなの、虐待された人の言う台詞じゃないですか。普通ならもっと怒るものなんです。何でそんなにのんびりしてるんですか……っ。…………っ、~~~~~っ」
グッと感情がこみ上げ、私はポロポロと涙を零していた。
「……おい。ありがたいけど泣く事ないだろ。まぁ、食えよ」
「食いますよ」
私はポンポンと肩を叩いてきた彼の手を払い、海老を口に突っ込んだ。
「まぁ、今は悠々自適に一人暮らしをしてるし、学生時代よりずっと自由だけどな」
「……今まで本気で付き合う恋人がいなかったのは?」
甘い南瓜を口に入れ、ムグムグと噛んで尋ねる。
私の質問を聞き、尊さんはニヤッと笑った。
「察してるだろ。当たりだよ」
「……言ってください。〝察してちゃん〟にはなりたくないので」
私は大きな溜め息をつき、グイーッと白ワインを呷った。酒がないとやってらんない。
「……まぁ? 好きな子ができたらいつの間にか怜香さんに知られてて、関係をぶち壊されたな。学生時代の恋愛ならまだ良かったけど、社会人になってから割と本気で付き合おうと思った子との関係も壊された」
「どうやって? 私の身にも降りかかる事だと思うので、知っておきたいです」
「俺が浮気してるって嘘つかれたり、あとは賄賂みたいなものかな。金や貴重なブランド品で釣ったり、怜香さんが使えるコネで女の子の望みを叶えるから、別れろって」
「ぶっちゃけ、お金の無心みたいな感じで戻ってきませんか? 他にも、本気で尊さんを愛していた女性だっていたでしょう?」
彼はまた皮肉げに笑う。
「女の愛情なんて薄いもんだよ。五百万で俺を捨てた女もいたし、三千万まで頑張った女もいたかな。ブランドバッグ二十個で手を打った奴もいた。それにそこそこ顔が良くて社会的地位もある〝替えの男〟を用意されたら、俺みたいな面倒なのに関わる必要もなくなるだろ?」
「…………はぁ?」
あまりに酷い話を聞いて、私は目を剥く。
「なんでそんな女と付き合ってたんですか? こんなにいい男なのに、駄目女ホイホイですか?」
そう言った途端、彼は眉を上げて笑った。
「いい男って思ってくれた?」
「馬鹿!」
私は尊さんの腕をバシッと叩き、大きな溜め息をつく。
シーフードが出されたあとにお肉が焼かれ始めたけれど、楽しんで食べられる気がしなかった。
「……また今度、このお店に連れてきてください。今度は笑いながら食事を楽しみたいので」
「了解。悪かった。美味い飯で帳消しになるかと思ったけど、店にも失礼だったな」
彼が素直に謝ってくれたので、せっかくのお肉を……という話はもうしないと決めた。
私はブスッとして、目の前で見事な手つきで焼かれているお肉を見守る。
それでも、こんな話を聞かされたぐらいで自分の気持ちは揺るがないと、この男に分からせてやりたかった。
彼があんまりにもすべてを諦めた態度をとっているから、ちょっと腹が立っている。
「……私、どれだけお金を積まれても、高価な物を買うって言われても、別れませんから。見くびらないでください」
「朱里が俺を見放すなんて思ってないよ」
そう言って、尊さんはまた薄く笑う。
ずっと彼の笑い方を皮肉っぽいと思っていたけれど、癖なんだと理解した。
彼は今までずっと、そういう笑い方しかできない生き方をしてきた。
心の底から、嬉しくて、幸せな気持ちで笑う事はなかったのかもしれない。
そう思うと、とても悲しくなった。
尊さんは、私が心から彼を愛するとまだ信じていない。
信じていないくせに、私の愛を望んでいる。
――じゃあ、分からせてやろうじゃない。
正直、今はまだ、彼を心から愛して、自分の愛で目覚めさせてあげたいなんて思えていない。
私の心を燃え立たせているのは、怒りだ。
やっぱり、恋は戦いだ。
絶対負けない。
同時に感じていた。
――この人を幸せにする事ができたら、私も本当の愛を知って幸せになれるのかもしれない。
……なんて悲しい愛し方なんだろう。
でも私も尊さんも、本当の愛なんて知らないんだから仕方がない。
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