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同窓会 編
僕らと一緒にラブホに決まってるじゃん
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「あ、いや、そうじゃなくて……、いや、そうなんだけど……」
はしょりすぎたと気付いた私がモゴモゴと説明しようとすると、立ち上がった文香がギューッと私の頭を抱いてきた。
「優美になら、一生幸せにしてもらってもいいかな~?」
「……文香さん?」
彼女の言葉を聞いて、後ろで和人くんがツッコミを入れている。
「あー! 何かスッキリした! ありがとう!」
「ん、それは何より」
慎也が私の頭をポンポンと撫で、頬にキスをする。
それを見ていた文香が、まじめな顔で言ってきた。
「ねぇ、思うんだけど。あんたら二人は結婚したら新婚旅行に行くワケでしょ?」
「そうなるね?」
正樹が頷く。
「その間、私って優美ロスになるじゃん? 二人で優美を独占してずるくない?」
文香さん? 仰る意味が……。
「新婚旅行終わってからでいいから、私と優美のフレンドハネムーンしようね」
「訳わかんないんだけど」
慎也が冷静にツッコミを入れている。
彼女の愛が嬉しくて、私は体を震わせて笑っていた。
「ありがと、文香。会社はもうないし、子供産んで落ち着くまで、お互いゆっくりやろうよ」
二人からも〝人生の夏休み〟とは言われていたので、文香とたっぷり遊んでもバチは当たるまい。
「そろそろ帰る?」
ベンチから立ち上がった正樹が、私に手を差しだしてきた。
「うん、そうだね」
彼の手を借りて、私はスックと立ち上がる。
「ありがとうございました!!」
最後に夜景に向かって大きな声でお礼を言い、私はペコッとお辞儀をした。
そして四人に向かって「押忍!」と両手で拳を握り、顎を引く。
「格闘家か!」
文香がツッコミを入れてくれ、皆で笑う。
それからまたのんびりと駐車場まで戻り、それぞれの宿に帰る事にした。
**
「そういえば、どこにホテル取ったの?」
市街地に戻る道すがら、私は正樹に尋ねる。
ちなみに今は慎也が車を運転していて、正樹と私は後部座席だ。
いつもの運転手さんに連絡をする時間も惜しく、いてもたってもいられなくなって自分で車を出したらしい。
「あー、駅前のホテル」
「そっかー。じゃあ行き先は別々だね。駅でもいいけど、もし良かったら家まで送ってもらえると嬉しいな」
「は?」
「え?」
正樹がお気に召さなかった時の「は?」があり、私はビクッとする。
「僕らと一緒にラブホに決まってるじゃん」
「えぇっ!?」
どうしてそうなる。
「もう予約したんだけど……」
「さっきスマホ弄ってたのはそれかい!」
こういう事に関しては用意周到な正樹に、思わず突っ込みを入れる。
「優美~、俺もラブホ行きたい」
「えぇ? 慎也まで? 私、いま実家なんだけど……」
「お義母さんに『今日は帰らない』って言ってよ」
「……ちょっと正樹、何で嬉しそうなの」
私は溜め息をつきながらも、通常運転の彼らに感謝する。
あんな事があってギクシャクするかな? って思っていたけれど、いつも通りにしてくれるのが一番ありがたい。
きっとあの事についてもっと話したいって言ったら、真剣に聞いてくれると思う。
でも、言われなかったら不必要に踏み込まないっていうのが、彼らのスタンスなんだろう。
この距離感がありがたいな。
……けど、今はラブホの話だ。
「私、ラブホ行くの生まれて二回目なんだけど」
「初めてじゃないのが悔しいけど、優美ちゃんのラブホセカンドバージンは僕らがもらうって決まってるからね」
「正樹、どんな部屋?」
慎也が尋ね、正樹が答える。
「写真ではなかなか綺麗だったよ。プールみたいに広い露天風呂があって、ベッドもでっかい」
「ラブホって三人で入ってもいいの?」
「あー、Q&Aで確認したけどOKだって」
「そうなんだ……」
どこまでもぬかりのない正樹に、私は閉口する。
はしょりすぎたと気付いた私がモゴモゴと説明しようとすると、立ち上がった文香がギューッと私の頭を抱いてきた。
「優美になら、一生幸せにしてもらってもいいかな~?」
「……文香さん?」
彼女の言葉を聞いて、後ろで和人くんがツッコミを入れている。
「あー! 何かスッキリした! ありがとう!」
「ん、それは何より」
慎也が私の頭をポンポンと撫で、頬にキスをする。
それを見ていた文香が、まじめな顔で言ってきた。
「ねぇ、思うんだけど。あんたら二人は結婚したら新婚旅行に行くワケでしょ?」
「そうなるね?」
正樹が頷く。
「その間、私って優美ロスになるじゃん? 二人で優美を独占してずるくない?」
文香さん? 仰る意味が……。
「新婚旅行終わってからでいいから、私と優美のフレンドハネムーンしようね」
「訳わかんないんだけど」
慎也が冷静にツッコミを入れている。
彼女の愛が嬉しくて、私は体を震わせて笑っていた。
「ありがと、文香。会社はもうないし、子供産んで落ち着くまで、お互いゆっくりやろうよ」
二人からも〝人生の夏休み〟とは言われていたので、文香とたっぷり遊んでもバチは当たるまい。
「そろそろ帰る?」
ベンチから立ち上がった正樹が、私に手を差しだしてきた。
「うん、そうだね」
彼の手を借りて、私はスックと立ち上がる。
「ありがとうございました!!」
最後に夜景に向かって大きな声でお礼を言い、私はペコッとお辞儀をした。
そして四人に向かって「押忍!」と両手で拳を握り、顎を引く。
「格闘家か!」
文香がツッコミを入れてくれ、皆で笑う。
それからまたのんびりと駐車場まで戻り、それぞれの宿に帰る事にした。
**
「そういえば、どこにホテル取ったの?」
市街地に戻る道すがら、私は正樹に尋ねる。
ちなみに今は慎也が車を運転していて、正樹と私は後部座席だ。
いつもの運転手さんに連絡をする時間も惜しく、いてもたってもいられなくなって自分で車を出したらしい。
「あー、駅前のホテル」
「そっかー。じゃあ行き先は別々だね。駅でもいいけど、もし良かったら家まで送ってもらえると嬉しいな」
「は?」
「え?」
正樹がお気に召さなかった時の「は?」があり、私はビクッとする。
「僕らと一緒にラブホに決まってるじゃん」
「えぇっ!?」
どうしてそうなる。
「もう予約したんだけど……」
「さっきスマホ弄ってたのはそれかい!」
こういう事に関しては用意周到な正樹に、思わず突っ込みを入れる。
「優美~、俺もラブホ行きたい」
「えぇ? 慎也まで? 私、いま実家なんだけど……」
「お義母さんに『今日は帰らない』って言ってよ」
「……ちょっと正樹、何で嬉しそうなの」
私は溜め息をつきながらも、通常運転の彼らに感謝する。
あんな事があってギクシャクするかな? って思っていたけれど、いつも通りにしてくれるのが一番ありがたい。
きっとあの事についてもっと話したいって言ったら、真剣に聞いてくれると思う。
でも、言われなかったら不必要に踏み込まないっていうのが、彼らのスタンスなんだろう。
この距離感がありがたいな。
……けど、今はラブホの話だ。
「私、ラブホ行くの生まれて二回目なんだけど」
「初めてじゃないのが悔しいけど、優美ちゃんのラブホセカンドバージンは僕らがもらうって決まってるからね」
「正樹、どんな部屋?」
慎也が尋ね、正樹が答える。
「写真ではなかなか綺麗だったよ。プールみたいに広い露天風呂があって、ベッドもでっかい」
「ラブホって三人で入ってもいいの?」
「あー、Q&Aで確認したけどOKだって」
「そうなんだ……」
どこまでもぬかりのない正樹に、私は閉口する。
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