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第三章 王子と天使を繋ぐモノ
30.魅惑的な遠出の誘い
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後にふり返れば、告白、なんて言葉で括るようなものでは無かったかもしれない。
しかし、あの日の深夜、二人は確かに言葉を交わした。
己の想いを織り交ぜたそれは、今も互いの耳に、そしてその奥に、しっかりと根付いている。
あの日から約二週間。気持ちを通わせた二人は、以前と変わらぬ生活を続けている。
朝起きてから夜眠るまで、セラフィーナ達が過ごす場所は相変わらず室内のままだ。
行動パターンも変わらず、日々どこか物足りなそうに仕事をこなすアイザックを眺めている。
「……ふぅ」
「ザック、お仕事終わった?」
朝食後、書類と向き合っていた彼が大きく息を吐き出したことに気づき、セラフィーナは手元に向けていた視線をあげる。
そのまま、パタン閉じた本を一旦ベッドの上に置いた彼女は、足早にアイザックのもとへ駆け寄った。
「お疲れ様、ザック」
「ありがとうセラ」
にこりと微笑みながら労いの言葉をかければ、彼女の声に応えた男の腕がこちらへのびる。
アイザックに腰を抱き寄せられたセラフィーナの身体は、いとも容易く目の前にある膝の上へ乗っかった。
「……ん、ぁ。ザック、恥ずかしいよ」
「ふふっ。そんなに赤くなるな。思わず食べたくなるだろう?」
「そ、それは、ザック、ん、ふ……」
「っ、は、ぁ……ん」
男の太ももを跨ぐように座れば、あっという間に腰と後頭部へ太い腕がまわる。
わずかばかりの抵抗も虚しく、セラフィーナの唇は、アイザックのそれによって貪られ、与えられる快感に思考と理性が瞬く間に溶けていく。
すぐそばの太い首元へ、縋りたい一心で両腕を伸ばすと、腰を抱く力が強くなり、二人の間に残っていたはずの隙間がいつの間にか消えていた。
一日の行動パターンこそ変わらない二人だが、そんな彼女達にも変わった部分はある。
それは、以前より格段に触れ合いが多くなったということだ。
一日中手のひらサイズに縮まり過ごしていたセラフィーナは、今ではすっかり元の大きさに戻り、室内での生活を満喫している。
使用人やディオンが訪ねてきた際は小さくなり身を隠すが、基本平気だろうと言うアイザックの提案だ。
彼の私室前の廊下と部屋の外は、城内でもとりわけ人の往来が少ないらしい。
そのため、人間に擬態さえしなければ、早々セラフィーナの存在はバレない。
そう口にする彼の瞳は力強く、小型化での生活に少々辟易していた彼女は、つい甘えることとなった。
以前よりも一層仲を深めつつある二人は、二組目のカップル成立を目指し行動を開始する。
手順は前回と同じ。
何もかも初めてだった一組目の時よりも、落ち着いて効率の良い作戦を考える事が出来た。
とは言っても、人生、いや天使生はそうそう甘くないらしい。
「あー、もう! ぜんっぜん情報が集まらないー!」
セラフィーナはだだっ広いベッドの上で暴れまわり、ここ数日溜め込んだ怒りを発散する。
元のサイズではシーツが皺だらけになるかもと、小さな姿で手足をバタつかせているため、被害は最小限に抑えられている。
城内で働く女性達の会話に耳を傾ければ、恋する乙女は割とすぐ見つかった。
それは、厨房で働く唯一の女性。
男所帯のなかで対等に渡り合う彼女の姿に、感動を覚えたのは記憶に新しい。
重たい調理器具をせっせと運ぶ姿や、細い腕で包丁を振り上げ骨付き肉を一刀両断する姿には、叫びたくなる程惚れ惚れしたものだった。
だが、彼女はちゃんと女性らしい一面を仕事で思う存分発揮している。
それは、毎日アマンダへ提供される菓子やデザートを作る時。
繊細な手つきで、菓子を乗せた皿の縁に果実ソースで模様を描いたり。
はたまた果実そのものにいくつもの切込みを入れ美しい見た目にしたりと、他の料理人達を驚かせている。
男性と同格の豪快さ、そして女性ならではの繊細さを持ち合わせる彼女を、セラフィーナはすぐに気に入った。
以来、ここはぜひ、彼女の恋を応援せねばとターゲットに認定、したまでは良い。
だが、数日経っても男性側の有益情報が得られず、この日ついに彼女の不満が爆発した。
「……ん?」
ふと、いつもなら聞こえるはずの声が無いことに気づく。
散歩を終え、部屋へ戻ってきた直後からベッドの上で暴れていると言うのに、それを咎める声が聞こえてこない。
いつもなら「其方は一体何を」と呆れ混じりのそれが聞こえるはずなのに、と内心首を傾げた。
そのまま、徐に横を向くセラフィーナは、すぐに答えを見出す。
彼女が目にしたのは、ベッド脇に膝をつきこちらを見つめる王子の姿。
その表情が、心配や呆れの滲むものだったら、然程驚きはしなかっただろう。
しかし、セラフィーナは大きく目を見開き固まった。
前髪越しに見える彼の目尻は下がりきっていた。まるで、小動物を愛玩するかのように、蕩けきった視線をこちらに向けてくる。
「思い悩む其方も愛らしい」
恍惚の表情を浮かべ、やけに熱のこもった吐息を吐く。
そんな男を前に、身体の奥底から湧き上がるむず痒さに耐え切れず、スッと伸びた彼の鼻先へ、全体重を乗せた頭突きを仕掛ける。
幼い頃から頭がよく、もしや天才かとすら思わせる男は、最近時々バカになるらしい。
「え、視察?」
二日後。今日もこれと言った成果は無く落ち込んでいれば、申し訳なさそうな表情を浮かべた男に話しかけられた。
その内容は、明日から数日、地方へ視察に行く仕事が急遽決まったというもの。
「心底行きたくないが、既にあちらへ出した手紙に私が行くと書かれているらしい」
(そう言えば、さっきチャドさんと話し込んでたな)
珍しく盛大なため息を吐くアイザックの様子に、三十分程前の出来事が脳裏を過る。
午後の散歩を終え、しばし休憩をとっていた時、不意にアイザックが信頼する使用人、チャドが部屋を訪ねてきたのだ。
アイザックの食事を運んだり、彼に仕事を届けたりする彼の姿は日々目にしているが、不意打ちな訪問は今回が初。
慌てて身体を小さくしたセラフィーナは、咄嗟にベッドの下へ隠れ、入口で話をする二人の様子をうかがった。
『どうしても、なのか?』
『どうしても、でございます。国王様も、アイザック様のことを心配しておられるのです』
『私のことを心配するなら、これまで通り放っておいてくれて構わないのだが……』
あの時は何について話しているのかわからなかったが、どうやら視察が関係しているらしい。
その後、詳しく話を聞けば、今回の仕事は元々アイザックの父である国王が赴く予定だったそうだ。
しかし、他にも現地へ赴かなければならない仕事が重なり、息子に白羽の矢が立った、という事らしい。
視察自体は以前から決まっていたため、日程調整が出来ず、当然放り出すことも出来ない。
自分一人だけの仕事なら後でどうにでも出来るが、何分相手がいるだけに、逃げ道は断たれたと、彼はどこか遠い目をしながら語ってくれた。
「本題はここからだ。本当なら、私の視察中、セラには城で待っていてもらいたい。だが、発作のことを考えるとな……同行してもらっても、良いだろうか?」
こちらの様子をうかがうようにチラチラと視線を動かす。そんな男の心配など気にした様子は無く、セラフィーナの顔は一瞬で破顔した。
「ザックと一緒にお出掛け出来るの!? わーい、やったー!」
ピョンピョンと床の上でしばし飛び跳ねたセラフィーナは、高揚する気持ちを抑えきれず、翼を羽ばたかせ、クルクルと宙を舞う。
ポカンと自分を見上げる男の周囲を数回飛び回ったのち、勢いよく彼の硬い胸元へ飛び込んだ。
「っと。……そんなに私と出かけるのが楽しみか?」
「うん!」
結構な勢いをつけたにも関わらず、アイザックはいとも容易く彼女の身体を受け止めてくれた。
大好きなぬくもりに包まれながら、自分を見下ろす男を見つめ、大きく頷く。
「行き先は、いくつかの集落から成り立つ地方の田舎だ。食事は、現地のものを食べることになるが……ここの料理より質素だと思うぞ?」
「ふふ、ここのご飯はすごく美味しいけど豪華すぎるよ。庶民には質素なくらいが丁度いいの」
後頭部に回された彼の手が、サラリと髪を撫でてくれた。眉を下げ言葉を紡ぐ彼に、ニコリと微笑めば、身体の力をわずかに抜いたのか、不意に彼が息を吐く。
「セラが喜びそうな場所も……正直、あまり無いと思う。それと、視察故に何人か護衛がつくそうだ。人目があるから、あまり其方と大っぴらに話すことが出来ない……」
そのまま言葉を続けるアイザックだったが、次第に彼の表情は暗くなり、しょんぼりと落ち込んだ様子を見せる。
その姿に目を細めたセラフィーナは、項垂れる彼の頬へ手をのばした。
「大丈夫だよ。行き先がどんな所でも、例えザックと話せなくても、あたしはついて行く。一緒にいるよ。……だって、ザックのそばに居られないことの方が辛いから」
一緒に居られると言うなら、どんな状況でも受け入れる。そう口を開けば、両手で挟み込んだ頬にじわりと熱が戻りだす。
「……本当に、其方には敵わないな」
それまで髪を梳いていたはずの手が、いつの間にか腰へ回され、彼のもとへ抱き寄せられる。
どこか悔しそうに、だがこの上なく嬉しそうに男は笑う。セラフィーナは、そんな男からの口づけを受け入れた。
しかし、あの日の深夜、二人は確かに言葉を交わした。
己の想いを織り交ぜたそれは、今も互いの耳に、そしてその奥に、しっかりと根付いている。
あの日から約二週間。気持ちを通わせた二人は、以前と変わらぬ生活を続けている。
朝起きてから夜眠るまで、セラフィーナ達が過ごす場所は相変わらず室内のままだ。
行動パターンも変わらず、日々どこか物足りなそうに仕事をこなすアイザックを眺めている。
「……ふぅ」
「ザック、お仕事終わった?」
朝食後、書類と向き合っていた彼が大きく息を吐き出したことに気づき、セラフィーナは手元に向けていた視線をあげる。
そのまま、パタン閉じた本を一旦ベッドの上に置いた彼女は、足早にアイザックのもとへ駆け寄った。
「お疲れ様、ザック」
「ありがとうセラ」
にこりと微笑みながら労いの言葉をかければ、彼女の声に応えた男の腕がこちらへのびる。
アイザックに腰を抱き寄せられたセラフィーナの身体は、いとも容易く目の前にある膝の上へ乗っかった。
「……ん、ぁ。ザック、恥ずかしいよ」
「ふふっ。そんなに赤くなるな。思わず食べたくなるだろう?」
「そ、それは、ザック、ん、ふ……」
「っ、は、ぁ……ん」
男の太ももを跨ぐように座れば、あっという間に腰と後頭部へ太い腕がまわる。
わずかばかりの抵抗も虚しく、セラフィーナの唇は、アイザックのそれによって貪られ、与えられる快感に思考と理性が瞬く間に溶けていく。
すぐそばの太い首元へ、縋りたい一心で両腕を伸ばすと、腰を抱く力が強くなり、二人の間に残っていたはずの隙間がいつの間にか消えていた。
一日の行動パターンこそ変わらない二人だが、そんな彼女達にも変わった部分はある。
それは、以前より格段に触れ合いが多くなったということだ。
一日中手のひらサイズに縮まり過ごしていたセラフィーナは、今ではすっかり元の大きさに戻り、室内での生活を満喫している。
使用人やディオンが訪ねてきた際は小さくなり身を隠すが、基本平気だろうと言うアイザックの提案だ。
彼の私室前の廊下と部屋の外は、城内でもとりわけ人の往来が少ないらしい。
そのため、人間に擬態さえしなければ、早々セラフィーナの存在はバレない。
そう口にする彼の瞳は力強く、小型化での生活に少々辟易していた彼女は、つい甘えることとなった。
以前よりも一層仲を深めつつある二人は、二組目のカップル成立を目指し行動を開始する。
手順は前回と同じ。
何もかも初めてだった一組目の時よりも、落ち着いて効率の良い作戦を考える事が出来た。
とは言っても、人生、いや天使生はそうそう甘くないらしい。
「あー、もう! ぜんっぜん情報が集まらないー!」
セラフィーナはだだっ広いベッドの上で暴れまわり、ここ数日溜め込んだ怒りを発散する。
元のサイズではシーツが皺だらけになるかもと、小さな姿で手足をバタつかせているため、被害は最小限に抑えられている。
城内で働く女性達の会話に耳を傾ければ、恋する乙女は割とすぐ見つかった。
それは、厨房で働く唯一の女性。
男所帯のなかで対等に渡り合う彼女の姿に、感動を覚えたのは記憶に新しい。
重たい調理器具をせっせと運ぶ姿や、細い腕で包丁を振り上げ骨付き肉を一刀両断する姿には、叫びたくなる程惚れ惚れしたものだった。
だが、彼女はちゃんと女性らしい一面を仕事で思う存分発揮している。
それは、毎日アマンダへ提供される菓子やデザートを作る時。
繊細な手つきで、菓子を乗せた皿の縁に果実ソースで模様を描いたり。
はたまた果実そのものにいくつもの切込みを入れ美しい見た目にしたりと、他の料理人達を驚かせている。
男性と同格の豪快さ、そして女性ならではの繊細さを持ち合わせる彼女を、セラフィーナはすぐに気に入った。
以来、ここはぜひ、彼女の恋を応援せねばとターゲットに認定、したまでは良い。
だが、数日経っても男性側の有益情報が得られず、この日ついに彼女の不満が爆発した。
「……ん?」
ふと、いつもなら聞こえるはずの声が無いことに気づく。
散歩を終え、部屋へ戻ってきた直後からベッドの上で暴れていると言うのに、それを咎める声が聞こえてこない。
いつもなら「其方は一体何を」と呆れ混じりのそれが聞こえるはずなのに、と内心首を傾げた。
そのまま、徐に横を向くセラフィーナは、すぐに答えを見出す。
彼女が目にしたのは、ベッド脇に膝をつきこちらを見つめる王子の姿。
その表情が、心配や呆れの滲むものだったら、然程驚きはしなかっただろう。
しかし、セラフィーナは大きく目を見開き固まった。
前髪越しに見える彼の目尻は下がりきっていた。まるで、小動物を愛玩するかのように、蕩けきった視線をこちらに向けてくる。
「思い悩む其方も愛らしい」
恍惚の表情を浮かべ、やけに熱のこもった吐息を吐く。
そんな男を前に、身体の奥底から湧き上がるむず痒さに耐え切れず、スッと伸びた彼の鼻先へ、全体重を乗せた頭突きを仕掛ける。
幼い頃から頭がよく、もしや天才かとすら思わせる男は、最近時々バカになるらしい。
「え、視察?」
二日後。今日もこれと言った成果は無く落ち込んでいれば、申し訳なさそうな表情を浮かべた男に話しかけられた。
その内容は、明日から数日、地方へ視察に行く仕事が急遽決まったというもの。
「心底行きたくないが、既にあちらへ出した手紙に私が行くと書かれているらしい」
(そう言えば、さっきチャドさんと話し込んでたな)
珍しく盛大なため息を吐くアイザックの様子に、三十分程前の出来事が脳裏を過る。
午後の散歩を終え、しばし休憩をとっていた時、不意にアイザックが信頼する使用人、チャドが部屋を訪ねてきたのだ。
アイザックの食事を運んだり、彼に仕事を届けたりする彼の姿は日々目にしているが、不意打ちな訪問は今回が初。
慌てて身体を小さくしたセラフィーナは、咄嗟にベッドの下へ隠れ、入口で話をする二人の様子をうかがった。
『どうしても、なのか?』
『どうしても、でございます。国王様も、アイザック様のことを心配しておられるのです』
『私のことを心配するなら、これまで通り放っておいてくれて構わないのだが……』
あの時は何について話しているのかわからなかったが、どうやら視察が関係しているらしい。
その後、詳しく話を聞けば、今回の仕事は元々アイザックの父である国王が赴く予定だったそうだ。
しかし、他にも現地へ赴かなければならない仕事が重なり、息子に白羽の矢が立った、という事らしい。
視察自体は以前から決まっていたため、日程調整が出来ず、当然放り出すことも出来ない。
自分一人だけの仕事なら後でどうにでも出来るが、何分相手がいるだけに、逃げ道は断たれたと、彼はどこか遠い目をしながら語ってくれた。
「本題はここからだ。本当なら、私の視察中、セラには城で待っていてもらいたい。だが、発作のことを考えるとな……同行してもらっても、良いだろうか?」
こちらの様子をうかがうようにチラチラと視線を動かす。そんな男の心配など気にした様子は無く、セラフィーナの顔は一瞬で破顔した。
「ザックと一緒にお出掛け出来るの!? わーい、やったー!」
ピョンピョンと床の上でしばし飛び跳ねたセラフィーナは、高揚する気持ちを抑えきれず、翼を羽ばたかせ、クルクルと宙を舞う。
ポカンと自分を見上げる男の周囲を数回飛び回ったのち、勢いよく彼の硬い胸元へ飛び込んだ。
「っと。……そんなに私と出かけるのが楽しみか?」
「うん!」
結構な勢いをつけたにも関わらず、アイザックはいとも容易く彼女の身体を受け止めてくれた。
大好きなぬくもりに包まれながら、自分を見下ろす男を見つめ、大きく頷く。
「行き先は、いくつかの集落から成り立つ地方の田舎だ。食事は、現地のものを食べることになるが……ここの料理より質素だと思うぞ?」
「ふふ、ここのご飯はすごく美味しいけど豪華すぎるよ。庶民には質素なくらいが丁度いいの」
後頭部に回された彼の手が、サラリと髪を撫でてくれた。眉を下げ言葉を紡ぐ彼に、ニコリと微笑めば、身体の力をわずかに抜いたのか、不意に彼が息を吐く。
「セラが喜びそうな場所も……正直、あまり無いと思う。それと、視察故に何人か護衛がつくそうだ。人目があるから、あまり其方と大っぴらに話すことが出来ない……」
そのまま言葉を続けるアイザックだったが、次第に彼の表情は暗くなり、しょんぼりと落ち込んだ様子を見せる。
その姿に目を細めたセラフィーナは、項垂れる彼の頬へ手をのばした。
「大丈夫だよ。行き先がどんな所でも、例えザックと話せなくても、あたしはついて行く。一緒にいるよ。……だって、ザックのそばに居られないことの方が辛いから」
一緒に居られると言うなら、どんな状況でも受け入れる。そう口を開けば、両手で挟み込んだ頬にじわりと熱が戻りだす。
「……本当に、其方には敵わないな」
それまで髪を梳いていたはずの手が、いつの間にか腰へ回され、彼のもとへ抱き寄せられる。
どこか悔しそうに、だがこの上なく嬉しそうに男は笑う。セラフィーナは、そんな男からの口づけを受け入れた。
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