変身が出来ないと追放された人狼だけど、剣聖だったので亡国の姫の剣になります

nagamiyuuichi

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セッカの剣

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  セッカの髪の毛一つすら断ち切ることなく、俺は氷ごとヨタカの狐の尾を両断する。
 
  呪いそのものではなく、ヨタカを飲み込んだ呪いとヨタカをつないでいたものを断ち切ったのだ。

【く、くそ、くそくそくそ‼︎? ふざけやがって‼︎?あと少し……あと少しで完成だったっていうのに‼︎ いや、まだだ、まだ終わってない、また他の誰かに乗り移って……】

 
  断ち切られた尾は、悲鳴のようなものをあげながら砕けた氷の中を逃げようとする。
  
  だが、その尾をセッカは乱暴に握り引き寄せる。
 
「どこへ行こうというのじゃ? 尾っぽ風情が」

【ひっ‼︎? ひいいぃ‼︎】

  氷から解放され、呪いから解放されたヨタカの体を俺は抱きとめ、その顛末を見届けることにする。

「随分と愛い声をあげるではないか……災厄とやらが」

【た、頼む……お願いだ見逃してくれ、い、いや見逃してください‼︎? もぅ、もぅあんたたちの前に現れねえから‼︎? 復活なんて考えねえから、頼む……だからそれだけは‼︎】

「くくく、確か、憎しみで憎しみは潰せない、呪いで呪いは打ち消せない。結局 混ざり合って巨大になるだけ……だったな」

  ニヤリと憎悪のこもった笑みを浮かべるセッカに、呪いであるはずの狐の尾の毛が逆立つ。

【お、お願いします‼︎? お願いします‼︎ それだけは、お願いだから……食べないで‼︎】

「貴様は我から奪いすぎた……ダメだね‼︎」

  命乞いを聞くこともなく、セッカは呪いに喰らいつく。

  もはや言葉にもならない悲鳴が空に響き……一口、また一口と喰らうごとにセッカの尾が一つづつ増えていき、新たなる主人の誕生を喜ぶように、フェリアスの剣に収められていた狐の尾も、自らその参列に加わる。

  段々と小さくなっていく悲鳴はやがてやみ。
 
  残されたのは小さく呼吸をするヨタカと……復讐をなした九尾の狐。

  ここに悲願は達成された。

  呪いは全て、セッカの元に集ったのだ。

「セッカ……終わったな」

「あぁ……これで終わりだ」

  寂しげにそう呟くセッカは、どこか晴れ晴れとした表情のまま俺の元へと歩いてくる。

  その視線は当然、俺が抱きとめているヨタカに向けられており。

 「……お父様……セッカは悲願を成すことができました」

  父親に……そう報告をする。

「セッカ……治せないか?」

  傷だらけのヨタカ。
  
  呪いの影響か、体は焼けただれ呼吸は弱い。
 
  セッカは一瞬、悲しそうな表情を浮かべ……やがて首を振った。

「……無理だ。 人間の体があれほどの再生に耐えられようはずもない。呪いの残滓がなくなればやがて生き絶えよう。それに、呪いに奪われた時点で……ヨタカという存在はもう食い殺されてしまっておる……我にできるのは、せめてこれ以上苦しまぬように逝かせてやるだけだ」

  その言葉に、セッカは自ら手を伸ばすが俺はそれをそっと止める。

「……セッカ。それはダメだ」

「とめてくれるなルーシー……せめて我が手で葬ってやりたい」

「なら、俺を使え……俺はお前の剣なんだから」

「ルーシー……そうか。 わかった……頼む」

  セッカの命令に、俺は静かに頷くと。 ヨタカを寝かせ、ゲンゴロウの剣をとる。
 

  今まで気にすることすらなかった御剣という名の重みが骨が軋む様な音を響かせて俺にのしかかる。

  あんたはずっと、こんなものを背負ってセッカを守ってきたんだな。


  雨の雫は、俺を責めるようで。
 
  そよ風ですら身を切られてしまいそう。

  今にも剣を取り落としてしまいそうになるのを必死に抑え。
 
  俺は剣を構え。

「お父様……セッカはお父様を、愛していました」

 そんな言葉と同時に……俺(セッカ)はその日ヨタカを殺した。

      ◆

「………………お父様……お父様…………おとうさま」

 ヨタカの亡骸に、セッカはすすり泣きながら追いすがる。


  何度もその名前を呼ぶが返事はない。

  体を揺すってみるが動くことはなく、瞳は閉じられたまま眠っているかのよう。

  まるで今にも目を覚ましそうで……だけどヨタカは動くことはない。

  静かにセッカをみつめる……そこに覚悟があったのかはわからない。
 
  だけど、そうなったからには背負わなければならないのだ。

「人を殺すっていうことは、その命を背負うってことだ」

  泣きじゃくるセッカの手を俺は取る。
 
  すっかり冷えたその体に、俺の熱が吸い込まれていく様な感覚がした。

「………分かっておるよ、この死は一生背負っていく。 あぁ、下ろしたりなどするものか」

  弱々しく、今にも消えてしまいそうなセッカの声。

  きっと、彼女の背中には俺なんかよりもはるかに重いものがのしかかっているのだろう。
 
  だがそれでも、俺にしかできないことがある。

 「だけどこれは、あんたには重すぎる。俺はあんたの剣だけど、ひとりの人間だ。 だからこの命は、俺も半分背負うよ。それが剣であり人間でもある俺だけにできることだから」

「ルーシー……」

  セッカの驚いた様な表情に、俺は無理して笑ってみせた。

  それはきっと誰が見ても強がりで、セッカから見ても不恰好なことこの上なかっただろう。
 
  だが。

「……ありがとう、我が御剣よ」

  セッカはそれに答える様に、同じように不恰好な笑顔を作ってみせた。

  何も残らなかったけど、最後に残ったのはお互いの笑顔。

あぁ、だからきっと……この物語はめでたしめでたしなのだ。


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