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あの頃へ 5  ラーシュ×リアム

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全身を洗われて拭き上げられた時にはもう逆上せてしまって若干ぐったりとしていると、侍従が冷たい水を持ってきてくれた。
グラスに入ったそれを一気に飲み干すと、その水が身体に染み渡っていくように感じる。
風呂上がりだからと、薄い肌着に腰紐という軽装でそのまラーシュの部屋に連れて行かれると、広い床に白く柔らかい布で円座ができていた。
「あぁ、テーブルが良かったか?」
「いや、久方ぶりで少しだけ驚いた」
先にラグへと腰を下ろしたラーシュに続き並ぶように座ると、少しずつ食事が運ばれてきて並べられていく。
「王宮とは味付け等が違うだろうから色々と用意させた。好みの味があれば言ってくれ」
好き嫌いは無いつもりだ。
「そんなに気を使わなくていい」
「使いたいんだ」
ラーシュにグラスをすすめられ、受けとると果実酒が注がれた。
琥珀色のそれは、爽やかな酸味と香りがする。
「ほら、リアム」
カチリと鳴ったグラス。
そのグラスを傾けて、ラーシュは液体を口に含む。
こくりと上下した喉仏。
「何だ飲まないのか?」
「飲むが、あまり強くないからな……いつも杯の中身は酒じゃなかった」
飲まなければならないときは少量を一杯だけ。
できるだけ酒に似た色の飲み物を用意してもらい、それらしく飲んでいた。
「なら、無理をしなくていい。誰か果実水を持ってきてくれ」
ラーシュの言葉に侍従が静かに動き、新しい杯に果実水が満たされる。
「一口だけ、貰う」
先に注がれていた果実酒の大半をラーシュのグラスに移してから、底の方に少しだけ残った果実酒をそっと、呷った。
喉を焼くような感覚。
少しだけ噎せそうになりながら、それよりも多い果実水で飲み込んだ。
「ラーシュ、喰うぞ?」
たっぷりの香辛料で味を付けた肉や、野菜を炒めたもの。たくさんの料理を皿に少しずつ取り分けていく。
「美味いな……どれも好みの味だ。特にこの肉が美味い」
気に入ったと食べるのは鶏肉に下味を付けて表面をパリッと焼いたもの。
添えられた野菜で包んで食べるのが美味い。
どんどんと食べろと薦められてついつい食べ過ぎてしまう。
「流石にもう無理だ」
胃がはち切れそうになるくらい食べてから、行儀か悪いがごろんと横になった。
天井を見上げると、ラーシュの端整な顔が見えた。
目が合うとにこりと微笑まれる。
「ラーシュ、今夜は共に寝たい……話したい事が沢山あるんだが」
今までのこと、これからのこと。
「俺は話すよりももっと大切なことをしたいが?」
「ラーシュ……あぁ、お前が望むなら」
年甲斐もなく心臓が跳ねた。
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