上 下
16 / 20

あの頃へ 6  ラーシュ×リアム

しおりを挟む
ラーシュが最後の1滴を飲み干して、グラスを置いた。
「美味かった?」
行儀が悪いと言われるだろうが、ラーシュしか見ていないからと思う存分ラグの上でゴロゴロした後でラーシュを見ながら問いかけた。
「あぁ、美味かった。リアムの分まで飲んだからな流石に酔った」
「そうか?見た目は変わらないしそもそもお前は昔から酒飲みだっただろう?」
「そうだったな」
あの頃は……と、ついつい昔を思い出してしまうのは、自分達が歳を重ねたからだろう。
「ラーシュ、腹ごなしに少しだけ散歩をしないか?」
そう提案すると、行くかとラーシュが立ち上がりこちらへと手を差し出した。
「他国から取り寄せた花が綺麗に咲いているし、果実も成るようになった……凄いな、神は」
部屋からでると、手を繋いだまま広い廊下を歩く。
誰かと手を繋ぐなど、もうだいぶ無かったことだ。
「綺麗に手入れをされている」
「庭師が頑張ってくれている」
「ん?王宮の庭を模したのか」
ふと気付いた。
木々は違うが花の配置などはとても良く似ていた。
「あぁ」
頷いたラーシュはきっとそれ以上は何も言わないだろう。だから私も聞かない。
暫くゆっくりと歩いてからラーシュの部屋に戻る。
「静かだな」
ふと、誰ともすれ違わなかったことを思い出して言うと、繋いだ手に少しだけ力が込められた。
「下がらせた。此処で初めての夜を邪魔されたくないから、必要な人間を残して」
「ラーシュ……」
ほんのりとラーシュの耳が赤くなったのは見間違いではないだろう。
「いい年齢をして、心が狭いのは自分でわかっている」
珍しく庭への散歩に誘ったのは、部屋の支度をさせるためだったのだろう。
そんな事に気を使ってくれるラーシュがとても愛しかった。
「ありがとう」
そっと手を離すと、ラーシュを抱き寄せ唇を奪う。
それほど背丈の変わらないラーシュの唇は乾いていて、ふわりと柑橘系の香りがした。
「リアム……」
「嫌なわけあるか、そんな顔をされたら私が困る」
唇を離し、そっと頬を擦り寄せた。
愛しい気持ちが溢れるというのは、こう言うことを言うのだろう。
「ただ、もう随分と昔の事だから上手くできるかはわからないし、なんと言ってももう若いときの身体ではないからな、幻滅してできそうもないなら言え」
「……っ、さっき風呂で見ている……から、問題無い」
そう言ったラーシュは、顔を背けた。
問題無いと言うことは大丈夫だったのだろうか。
「リアム、こっちだ」
連れて行かれた先はラーシュの寝室で、簡素な部屋の中央部に大きな寝台が鎮座していた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

学園の卒業パーティーで卒業生全員の筆下ろしを終わらせるまで帰れない保険医

ミクリ21
BL
学園の卒業パーティーで、卒業生達の筆下ろしをすることになった保険医の話。 筆下ろしが終わるまで、保険医は帰れません。

処理中です...