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11話

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用意されたのは踵の無いスリッパのような室内履き。
綺麗な刺繍はされているが、履きづらいことこの上ない。
パタパタ音がするのもいただけない。
ただ、これを選ばなければ膝丈のロングブーツか、ハイヒール。
どれも履くには耐えられない。
足に合わない靴ほど辛いものは無いのだから。
それに、歩き回らなければいいかと諦めた。
休みができたら靴を買おうと決めた。

「とりあえずお借りします」

スリッパを履くと、軟らかさは問題なかった。

「で、私はどうやって何処に出勤したら?」
「取り敢えず今日は必要な物を買いに出ることにしよう……」
「は?私にはそんな、売れるものはありませんし…」
「だが、無いと不便だろう?俺と行くのが不安ならば、女性の騎士をつけるから心配しなくて良い…」

そう言われてしまえば仕方ないと言うか、むしろ有難い。

「なら、お給料の前借りで…と言うか、私は誰と契約をして給料の支払いを受ければ良いのでしょうか……」

この国での給与形態や通貨等も知らないといけない。
福利厚生など、望めないだろうし保険の制度もなさそうなこの場所。
その辺りもしっかりと契約していかないといけないなと思う。

「貴女の給与は俺の私財から出す。月の定額に追加の勤務が生じれば追加の手当てを出すが先ずはどの程度の仕事ができるか見てみたい…」
「勿論です」
「だから、今日は明日から勤務して貰うための下準備をして欲しい。今、手持ちはこれしかないが、俺の名前を出してくれればツケも利く」

差し出されたのは掌に乗るほどの布袋。
この中には少し大きな金色の硬貨が詰まっていた。
この硬貨の価値を美南は知らない。
ただ、これかわ無ければ何も買えないし、これで何が買えるのかもわからない。
取り敢えず中身を数えて返さなければならない金額を確認しようと美南は袋から硬貨を取り出した。
硬貨は全て同じもので、58枚あった。
さて、これだけで何が買えるのか。
先ずは服や下着だろうなと、美南は思う。
あとは食事と住むところ…と、これからのことを思いため息を吐くのだった。
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