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139話

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えっと思った瞬間、馬車は動き出したが少し進んだだけで馬が足を止めた。
馬の少し先、重い門扉がガシャンと閉められた所だった。
騎士たちの阿吽の呼吸。
御者である神官は手綱を引くしか無かった。
「どうっ、どうっ!」
音に驚いた馬が興奮するのを宥めながら、こちらを睨んでいた。
「検査をしなければ、事件が解決するまでは永久的にこの場所から出す事はできませんので、大神官様お願い致します」
ミゲル様が声を上げた。
「事件があったなどと我らには関係の無いこと、早く門を開けろ」
「なりません」
ミゲル様はゆっくりと馬車に近付いた。
「ライトを」
短く告げると、傍に居た騎士がそっとライトをミゲル様に差し出した。
「なっ!」
ミゲル様のライトが指し示す辺り、御者の神官の腰の辺りがぼんやりと発光しているように見える。
「そのポケットか何か、腰の辺りを確認させて貰おうか? 問題なければそれでいいだろう?」
ミゲル様が手を上げると、近くに居た騎士が、神官を調べようと近付いた。
「待て、神官に無礼をはたらくのか」
声を上げたのは、馬車の中にいた、もう一人の神官だった。
「尊いとされる我らの身に、その手で触れるのかと聞いている」
なんて言い草。
「ならば、誰なら触れていいのか、教えて貰おうか?」
「騎士等には触れられたくない、聖女か、最低でもそれ同等の……」
「サハル、頼めるか?」
ミゲル様の命令。
「畏まりました。私はサハル、サシャ様より最後を受け継いだ者です。大神官様なら何を受け継いだのかはご存知でしょう? ならば、此処に居る誰よりも聖力を持っていると自負しておりますが……あの後に何方も現れないのですから」
俺は芝居がかったように少し声を張って喋る。
細かいことまでは言わないが、それだけ言えば大神官ならわかるだろう。
「……検査を受けろ」
馬車の中から短い声がした。
「ですが、大神官様!」
「大神官様も降りていただけますか?そちらの神官様も」
俺の言葉に、馬車の扉が開いた。
「ありがとうございます、では失礼させていただきます」
俺は、御者だった神官の腰の辺りに触れると、布越しに硬いものが触れた。
「何か入っていますね、出していただけますか」
そう言いながら離れると、御者はのろのろとポケットから取り出した物にライトを当てるとぼんやりと光を放った。
「……当たりです。他は?」
「こ、これは拾った……」
「なら、何処で拾ったのでしょうか?」
「……廊下で」
「どちらの」
「騎士団の建物の……」
先程までの威勢はどこへやら、しどろもどろで話し出す御者に、もう一人の神官はチッと舌打ちをした。
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