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エピローグ

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 人の行き来が多くて暮らしに便利な都心部に建っているが故に狭くて賃料が高い店舗にするか・・・

 都心部と比べたら不便なところもあるけど閑静な街に建っているが故に広くて賃料が安い店舗にするか・・・





 悩んだ末に奈緒美は後者の店舗を選んだ。

 「ナオミさ~ん♪ありがとう~♪ご~ざ~い~ま~す~♪」

 ・・・・・・色々言いたい事はあったのだが、契約した奈緒美はオープンに向けて準備を進めていく。

 と言ってもマッサージをするのは手と足だけだ。

 全身マッサージやフェイスマッサージをするかどうかは、これからの様子を見てからの判断である。

 種でベッドやインテリア等を栽培して実ったそれを非日常な空間を演出するように配置したり、何か足りないものがないかを確認したりしている内に遂に迎えたオープン日。

 騎士団長様の話を聞いて実際にマッサージを受けた人の口コミ効果なのか分からないけど、奈緒美にとってはRPGでいうところの初めての町とでも言うべきアームズの町でオープンした時と違ってオープンしてから十分も経たないうちにお客さんがやって来た。

 腰にレイピアを下げている女性で軍服姿ではないから恐らく冒険者なのだろう。

 見た目と身体つきが1970~1980年代前半の少女漫画だから存在感が濃いけれど・・・。

 長旅で疲れているから手足をマッサージして欲しいと言ったので、それぞれ三十分ずつのコースでマッサージを施していく。

 ハンドマッサージ、足裏マッサージは三十分で一シルバーという料金設定にしたから合計二シルバーだ。

 マッサージを受けた彼女は「身体だけではなく心も軽くなったみた~い♪」って歌いながら料金を払って店を出て行った。

 彼女の口コミのおかげでどこかの屋敷に仕えているメイドに金持ちの奥様、領主の奥様が来るようになったのだが、その噂が王都まで広まったのだろう。

 遂に王妃が奈緒美のマッサージを受けたいという事で王宮からの使いが店まで訪れたのだ。

 王妃様のマッサージって王宮に仕えている侍女がやるのが普通じゃないの?

 何で自分のような一般ピープルがやらなきゃいけないのだろう?

 そんなのおかしいって!!

 使いの人達に対して「一般人である自分が王族の肌に触れるのは恐れ多いから出来ない」という旨を奈緒美は伝えたのだが「貴殿のマッサージの腕は確かだと公爵夫人のお墨付きがある」って宣い逃げ道を塞いでしまった。

 庶民が王族の命令に逆らえないというものあるが、本当は王妃様がどんな人なのかを見てみたいという好奇心が奈緒美の心にあったのだ。

 ともあれ奈緒美は、自分が思いつく限りの化粧品をトートバッグに入れると使いの人達と一緒に王都へ向かった。

 今回の奈緒美は王妃様にマッサージを施すという大義名分があったから王宮に入れたのだけど・・・普通に考えなくても庶民には縁のない場所である。

 そんな場所に足を踏み入れた奈緒美の前には王妃が居たのだけど・・・何て言うか・・・・・・濃いのだ!

 1970~1980年代前半の少女漫画みたいにウニの外殻のような睫毛にキラキラ瞳!!

 しかも背景はいけいに薔薇や牡丹といった花とキラキラを背負っているのが奈緒美にははっきりと見えるのだ。

 大御所と呼ばれるような少女漫画家が描く漫画の世界に迷い込んだ気分になっていた奈緒美に、王妃が手足だけではなく最近は日差しが強くて日焼けが気になるから美白効果があるマッサージもして欲しいと要望を伝える。

 店が休みの時はお肌のお手入れをしてスキルの効果を実感しているからね!

 ここは気合を入れて奈緒美は王妃にマッサージを施していった。

 想像以上の美白効果に王妃様は満足。

 これが切っ掛けで月に一度、奈緒美は王妃にマッサージを施すようになった。

 王妃様に気に入られたのはいいのだが、王妃様お気に入りのマッサージ師という口コミと確かなマッサージの効果で客が押し寄せるものだから一気に忙しくなってしまったのだ。

 このままでは仕事が雑になってしまうと判断した奈緒美は店を畳んでファイティング王国とビューティー王国の国境にある暁月の森で暮らす事にした。

 その時に店の経営方針を見直した事で今の奈緒美は仕事以外の時は自分のスキルで出した種から実ったG〇や〇BAといった携帯ゲーム機のレトロゲームで遊んだりしてスローライフを楽しんでいる・・・。














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