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告白
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日が落ちたのを確認し神殿の扉を閉めようと外に出ると、離れた場所から蹄と車輪の音が聞こえた。そのまま神殿前で停まると、馭者に手を添えられた神官がひとりこちらに歩いて来る。
その時、タンギー伯爵領の神官はイネスと初めて挨拶を交わした。
◇◇◇
自分と同じ正位でありながら奇跡の顕現は遥かに優れる彼女。不安はあれど話をすれば思いの外接しやすく、短い期間でもあるし問題もなかろうと安堵した。
タンギー伯爵や滞在中の第二王子への拝謁も済み、後は戦に向け準備や演習をしつつ領民への癒しの顕現などで過ごす日々。そんな彼女の元に鍛冶屋親子と革職人が訪ねて来た。
「ジュール」
イネスに名を呼ばれた馭者は小さく頷くと神殿の外へ出る。イネスは自分と鍛冶屋親子、革職人を神殿奥の部屋へと案内した。
「あの男らの事ですね」
イネスの問い掛けに鍛冶屋の娘が頷く。
イネスが領内に初めて足を踏み入れた時、男らと揉める娘を助けたと言う。話が出た男らの悪行は耳にする事はある。その被害の相談のようだ。
「もう堪えられない、どうすれば……」
涙が止まらぬ娘の話を聞く。
◇◇◇
変わらぬ日常に飽き飽きしていた。ちょっとした刺激が欲しかっただけなのに……
数ヶ月前、私は幼馴染みの革職人の娘と一緒に街を歩きながら周囲の視線を楽しんでいた。いつもより少し派手な服を身に付け、いつもより微かに色気を振り撒きながら。
そんな私達に声を掛けたのがあの男ら。悪い噂は知っていた。でも上手くあしらえると、彼女と二人なら大丈夫と高を括っていた。
面白おかしく接する男らに油断したのだと思う、数回会ったある日……襲われた。
最初は親に知られるのが怖かった。その次は妊娠を……月のものが来た時は泣いて喜んだ。男らと会いたくなくて出来るだけ家に籠った。祖母の世話をする事で忘れようとした。それなのに男らが……
「なぁ、久々にどうだ?」
父の前で誘う、革職人の娘も連れて。
ニヤつきながら近づく男らを父が遮るが、払われる様に殴られる。あの日の事をベラベラと喋りながら
「また楽しもうや。嫌か?それならちょっと融通してくれないかなぁ」
と言い出した。
父に知られた恥ずかしさ、眼前での暴力、自分の仕出かしの後悔で動けずにいると、父が鷲掴みにした金を男らに投げつけた。
「これで良いだろう!その娘も置いて行け!」
「こいつ?こいつは自分から付いて来ただけ」
金を拾う男らの奥でかぶりを振る彼女。でも付いて行くしか出来なかったのだろう、我が家より仲の良い親子で貧しかったから……
何度か同じ事があったある早朝、身仕度もせず慌てた様子で彼女の父親が我が家の扉を叩いた
「娘が……死んだ」
その時、タンギー伯爵領の神官はイネスと初めて挨拶を交わした。
◇◇◇
自分と同じ正位でありながら奇跡の顕現は遥かに優れる彼女。不安はあれど話をすれば思いの外接しやすく、短い期間でもあるし問題もなかろうと安堵した。
タンギー伯爵や滞在中の第二王子への拝謁も済み、後は戦に向け準備や演習をしつつ領民への癒しの顕現などで過ごす日々。そんな彼女の元に鍛冶屋親子と革職人が訪ねて来た。
「ジュール」
イネスに名を呼ばれた馭者は小さく頷くと神殿の外へ出る。イネスは自分と鍛冶屋親子、革職人を神殿奥の部屋へと案内した。
「あの男らの事ですね」
イネスの問い掛けに鍛冶屋の娘が頷く。
イネスが領内に初めて足を踏み入れた時、男らと揉める娘を助けたと言う。話が出た男らの悪行は耳にする事はある。その被害の相談のようだ。
「もう堪えられない、どうすれば……」
涙が止まらぬ娘の話を聞く。
◇◇◇
変わらぬ日常に飽き飽きしていた。ちょっとした刺激が欲しかっただけなのに……
数ヶ月前、私は幼馴染みの革職人の娘と一緒に街を歩きながら周囲の視線を楽しんでいた。いつもより少し派手な服を身に付け、いつもより微かに色気を振り撒きながら。
そんな私達に声を掛けたのがあの男ら。悪い噂は知っていた。でも上手くあしらえると、彼女と二人なら大丈夫と高を括っていた。
面白おかしく接する男らに油断したのだと思う、数回会ったある日……襲われた。
最初は親に知られるのが怖かった。その次は妊娠を……月のものが来た時は泣いて喜んだ。男らと会いたくなくて出来るだけ家に籠った。祖母の世話をする事で忘れようとした。それなのに男らが……
「なぁ、久々にどうだ?」
父の前で誘う、革職人の娘も連れて。
ニヤつきながら近づく男らを父が遮るが、払われる様に殴られる。あの日の事をベラベラと喋りながら
「また楽しもうや。嫌か?それならちょっと融通してくれないかなぁ」
と言い出した。
父に知られた恥ずかしさ、眼前での暴力、自分の仕出かしの後悔で動けずにいると、父が鷲掴みにした金を男らに投げつけた。
「これで良いだろう!その娘も置いて行け!」
「こいつ?こいつは自分から付いて来ただけ」
金を拾う男らの奥でかぶりを振る彼女。でも付いて行くしか出来なかったのだろう、我が家より仲の良い親子で貧しかったから……
何度か同じ事があったある早朝、身仕度もせず慌てた様子で彼女の父親が我が家の扉を叩いた
「娘が……死んだ」
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