鏡境のことほぎ

いつはる

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神罰

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従軍のために赴いた神官への醜行。それは実行される前に死をもって頓挫した。
「神官の奇跡にはこう……人を傷つけるものもあるのか?」
クレマンの問いに二人の神官はかぶりを降る。
のように身体の一部の自由を奪う奇跡はありますが……刺し貫く奇跡はありません」
先ほどのイネスの話を裏付ける様に、検分した死体の傷は不可解だった。どう見ても体内から熱っせられ貫いた様な焦げ痕が広がる。しかも男ら以外その場の損傷はない。人外の何かを疑いたくもなる。

「ただ……」
イネスは背にある神像に視線を移しながら語りだした。
「奇跡の顕現は神とのを意味しています。神官の神への奉仕の対価が奇跡……そして守護」
「つまり神に守られた結果がアレと?」
「今までこんな事はなかったので……でも……」
自信なさげに語る。駆け付けた時の事を思えば彼女の言いたい事はわかる。当人ですら眼前の事象に茫然としていたと言う。
「奇跡の顕現にはが必要ですし……襲われ口の中を切った状況で冷静にことほぐのは厳しいかと」
イネスに寄り添う神官も誓約説を後押した。

◇◇◇

脇へ追いやられたエステルは神像を見つめていると、ある事に気付いて悲鳴を上げた。
「あ……あれ……」
皆の視線をエステルの指先が誘導する。神像が掲げる剣の先が僅かに赤黒く汚れていた。
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