異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

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第三章 リベラティオへの旅路

第166話 勝敗

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 俺達エルピスは、マールのギルドで受けた調査依頼をかねて、当初から次の目的地としていたラクリマ村への移動をしている。
 マールの村の正門を抜け、山々が切り立つ間を馬車で進んでいるのだ。
 
 本来は御者席はハーモニーの定置なのだが、彼女はマジックアイテムの説明のため荷台で扱いのレクチャーを受けている。
 よって、俺が手綱を引いているのだが……。

「──こら、オスコーン。言うことを聞けよ! メスコーンも前向けって!」

 二頭のユニコーンは、俺の手綱の指示にまったく言うことを聞かない……。
 まぁ、賢いから周囲にぶつかる心配も無いんだけど、何故か今日に限って俺の隣にトゥナが座っている。──良いところをみせたいのだが……。

「ふふふっ、もうほとんど勝手に動いてるわね? これなら私にも出来そうだわ」

「じ、自動だからって油断すると、事故の元なんだぜ?」

 例のごとく、俺はここでも格好いい姿を見せることが出来なさそうだ……。

「カナデ、カナデ。んまぁ! もっと強く打って!! って言ってるカナ。何をカナ!」

「ミコ……通訳は今はいいから」

 手綱やムチを打たれて喜ぶ馬って……扱いにく過ぎるだろ?
 オスコーンがご機嫌斜めな理由がよくわかったぞ。

「カナデ様……特等席でさぞ楽しそうですね? 私も間にいれて欲しいです」

 荷台の幌から顔を出すティア。
 俺とトゥナの状況を見てか、若干頬が膨れているようだ。

「無茶言うなよ……三人は流石に狭いわ」

 今も、たまにトゥナの肩が当たってドキっとするのに、三人で並んだらずっと密着しちゃうだろ?
 しかし、トゥナとティアの真ん中か……それなら悪くない。

 俺がそんなことを考えていると、メスコーンが急に「ヒヒ~ン!」と叫び声を上げ馬車が揺れる。

「んまぁ! カナデちゃんから汚れの臭いがするわ! 不潔だわ! っていってるカナ?」

「通訳はいらないって! 違うからな? 別になにも考えてないから! だからティアさん。ほくそ笑むのやめてくれ!」

 普段と変わらないやり取りをしながらも、馬車は山と山の間を抜け、広大なクレーターが顔を出した。

 ユニコーン捕獲の時は湖に向かうため下にくだったが、今回はジャングルには入らず、迂回するようにクレーターのふちを馬車で移動して行く。
 
 道幅はあるものの、馬車が落ちたら……。
 想像するだけで身震いしそうだ、早くハーモニーに変わってもらいたいものだな。

「そういえば、ハーモニーとルームはどんな感じなんだ?」

 実のところ、俺がハーモニーに渡した武器は俺とルームが作ったマジックアイテムなのだが、俺はうまく扱うことが出来なかった。
 もちろん、ミコの力を扱えば扱えるのだが、俺個人にはそのギミックを動かすことが出来なかったのだ。

 だから、もしかしたらハーモニーも……。

「あの御二方は、もう武器の説明は終わってますよ? 全然問題無いそうです。先程までは、大きさを比べ合っていましたね……。」

 ──終わってるのかよ!

「あの……なら御者を変わってもらいたいんだけど? ここで手綱を握るのは、まだ初心者には早いだろ」

 今馬車が走っている平ら部分の道幅は、馬車三台ほどだ。左を見たら崖、右を見たら斜面になっている。
 例え意思の通じるユニコーンでも、俺が大きな指示ミスをしたらかなり危険だ。
 得に二頭引き馬車の場合、片側が急停止をしようものなら転倒にも繋がる。

 様子を確認してきたのだろうか? 一度中に引っ込んだティアが、俺とトゥナの間を割ってはいるように顔を出した。

「ハーモニー様は、少々難しそうですよ? 今、ルーム様に負けて、意気沮喪いきそそうしておりますので」

 えっと……? 元気を失くしているってことなのか。

「ハーモニーの方が小さい? なんの勝負なんだよ……」

 俺の質問に、ティアが鼻血を滴ながら、両手で自分の胸を黙って触った。──な……なるほど。それは立ち上がれそうにないな。

「カナデ君……。貴方が自信を持ってくれないと、私のとても不安なのだけど」

 そんなこと言われたって、こっちは若葉マークがまだ剥がれていないような、新人ドライバーなんだけどな……。
 しかし、彼女が言うことも最もか。

「大丈夫だ、トゥナ! ユニコーン達が上手
いことやってくれるから!」

 隣に座っているトゥナが、深いためいきと共に頭を抱えた。

「カナデ君……。自信を持つ方向性が違うわ」

 トゥナに呆れられながらも、このしばらく後に、馬車は何とか足場の安定した地面に降りることが出来たのであった。
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