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第三章 リベラティオへの旅路

第167話 嵩増し

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 クレーターのふちから、安定した広々とした地面に移り変わった時には、すでに日が傾き始めていた。

 周囲を見渡すと、青々とした草木は一切ない……。
 枯れた木々が一つ、また一つと、所々にそびえているのみだ。
 中には倒れ、地面に埋まっているものさえもある。

「なんか……寂しい土地だな?」

 思ったことを素直に口にした。俺の視界には、ソコが死んだ土地のように映ったのだ。

「カナデ様の、その認識は間違っていないかもしれませんね……。ここは、過去の戦場の一つになった場所なのです。数百年立っても、争いの傷痕はこうして残っているのですね……」

 なるほど……。
 もしかしたら、ここも昔は木々が生い茂っていたのかもしれないな? あの湖があった森みたいに。

「争いって確か、勇者と魔王の戦いだよな? 200年ほど前にあったって言う。海上の時も驚いたけど、どれだけ環境破壊してるんだよ……。世界に爪痕残しすぎだろ?」

「あ~いいえ、これはそのもう少しだけ前の……四種族間戦争の名残ですね。この光景は人々の争いによって生まれた結果です」

 これを人の手が? いや、何も驚くことは無いか……魔法もある世界だ、十分に考えられる。 

「皮肉なものですよね。魔王が現れなかったら、もっと広い規模でこのような景色になっていたのですから……」

 周りの景色を、目を細めてティアは眺めた。

 争いで世界を痛める。
 この世界の人もなのか……。

 種族同士の思想の違いによる戦争だったのだろうか? いや、理由は別に興味はない。
 ただ生きることを目的としない争い、食べるためでもなく殺し合い、多くのものを壊していく。
 しかもそれは、勝ちか敗けが決まるまで……。
 俺にはその気持ちが分からないな。

 ──もし、魔王が現れていなければ?

「共通の敵の登場で戦争が収まったってことか……そういう意味じゃ、結果的に魔王は世界を救った事になるのか?」

「──カナデ君、ダメよ? それはタブーだわ……。例え魔王が結果戦争を止める理由になったとしても、彼が殺した人は数えきれないのよ?」

 俺の発言は事実だったのかもしれない。しかし、トゥナが口にするように、人が殺され作られた平和が正しいわけがない。
 殺された人を大切に思っていた人達には、心からの平和は、もう二度と訪れないもだから。──確かに、軽率な発言だったかもな……。

「そうだよな……ゴメン」

「いいのよ。ただ、カナデ君が口にしたような思想の持ち主達は実際にいるの。それは、どの国でも問題視されてるから、注意した方が良いわ」

 魔王信者ってやつなのだろうか、そもそも魔王の定義ってなんだ?
  俺の時もそうだったが、勇者はなんのために召喚されたのだろうか……。
 種族間の戦争の最中、魔王は何処にいたんだ……。

「フォルトゥナ様、カナデ様。暗い話はこれぐらいにして、野宿の準備をなされた方がよろしいかと。ずいぶん日が落ちてきてるので」

「あ、あぁ~そうだな」

 考えていても仕方ないか? 今は、今するべき事を優先だな。

「カナデ君、見通しも良さそうだし、あの辺りはどうかしら?」

 十時の方角を見ると、目の前には夜営をするだけなら、十分過ぎる広さの広場がある。
 まるで意図的に広げられたように綺麗な広場だ。──ここを通った冒険者がやったのだろうか? ちょうどいいか。

「確かにいい感じだ、あそこにしようか?」

 俺は綱引き、馬車のブレーキを掛けた。
 ユニコーン達も疲れたのか、今回は俺の指示に素直にしたがってくれた。

 広場に着くなり「私とティアさんは薪拾いに行くわね?」と、その場を離れる二人。──じゃぁ俺は、二頭のハーネスを外そうか?

 俺は二頭の前に行き、馬車用の胸引きハーネスを外そうとするが、必死にそれを拒むオスコーン。──こいつ、メスコーンから離れたくないからって!

「オスコーン、暴れるな。危ないから!」

 このままでは、オスコーンの力が強く外そうにも外せないな……。
 その後ろで「早く私を助けて?」みたいな瞳で見つめるメスコーンが鬱陶しくてならない。

「カナデさん~何やってるんですか。前に外し方教えましたよね~?」

 器用に左手だけで外すハーモニー。
 その右手にはジャマダハルが、大切そうに握られたままだ。
 大人しくハーネスを外されながらも、ハーモニーの右手を凝視するオスコーン……。──若干脂汗が出てないか? 心を読めるユニコーンの事だ……ハーモニーの心に恐怖でもしたのだろうか?

「ハ、ハーモニー。やっと降りてきたのか、ルームはどうしたんだ?」

「遅れましてすみません、色々ありまして……。彼女なら、馬車の中でマジックアイテムを作ってますよ~?」

 馬車の中でって、かなり揺れていただろうに器用だな……。

「所で、どんなマジックアイテムなんだ? 作り方とか、色々興味あるんだけど」

 分かりやすく顔を背けるハーモニー。
 これは聞かない方が良かっただろうか?

「お、大きく……見えるやつです~」

 あ、厚底靴って事にしておこうか? 

 深くは追求せず、俺は野営の準備に移るのであった。
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