異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

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第一章 グローリア大陸編

第57話 フィーデス旅立ち~ギルドにて~

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 フィーデスの町から出る前に、俺達三人はギルドに立ち寄った。
 ハーモニーのパーティー加入登録と、道中に受けることが出来る依頼がないか、確認をするためだ。

「おはようございます、フォルトゥナ様! 今日はどのようなご用件で」

 テーブルを普通に乗り越えて、トゥナと手を繋ぎながら挨拶をするティア。──どんどん遠慮が無くなってきているな? 慣れとは恐ろしいものだ。

「──今日は、パーティメンバーが増えたから登録しにきたんだよな?」

 俺は慌てて、手を繋いでる彼女達の間に割ってはいる。
 百合ユリ的な雰囲気を感じ、周りの雰囲気がおかしくなってきたので急遽行動に起こしたのだ。

「あら? カナデさんも居たんですね……」

 遠回しに邪魔をするなと言われている気がする。
 しかし、話が変な方向に脱線しないためにも非難の視線も我慢をしよう! トゥナはピュアなんだ……。まだ、その世界は早すぎる!

「こんにちは、私がトゥナさんとカナデさんのパーティーに入るハーモニーです~。よろしくお願いします~」

 まるでタイミングを見計らうように出てくるハーモニー。──非常にいいタイミングだ。これなら話を反らせれる!

「あら、貴方が新メンバーさん? とても可愛らしいお嬢様ですね。わかりました、登録を済ませておきますね」

 ティアはカウンターの下から名簿のようなものを開き、何かしらの文字を書き始めた。

 それにしても……相変わらずギルドにはヒソヒソ声が漂っているな。居心地が悪くて仕方……。

 ──あ、ヒソヒソで思い出したぞ?

「トゥナとハーモニーは道中受けるクエスト見てきなよ、俺は少しティアさんと話すことがあるから」

「そうなの? 分かったわ」

 と言い、その場から離れるトゥナ。

 しかしそれを見てか、ティアが小さく舌打ちをした。──最近だと、俺には隠す気が無いらしい……。

 ティアは俺を無視するかの様に、何やらすごい勢いで書類を書き始める。その姿は、やはり彼女が有能であると感じさせる。──トゥナがいる時とのギャップが酷いな……。

 まぁ、トゥナとハーモニーに離れてもらったのには理由がある。旅立つ前に、例の同人誌擬きの事でティアさんに相談をしようと思ったのだ。

 マジックバックから、一冊の同人誌を取り出そうとする。

『──カナデカナデ、この本の字も綺麗だけど、その女の人の字も綺麗カナ』

 字が……キレイ……?

 そう言うミコの念話を聞いた俺は、何気なくティアの手元の書類に視線を落とした。──これは……マジか?

「ティアさん、少しお話があるんですけど?」

「今は忙しいので、また後にしていただけませんか?」

 露骨に塩対応をするティア。恐らくトゥナとの関係を邪魔した事を根に持っているのだろう。

 ただ仮にもギルド職員、その態度は少々目に余る……。──そうかそうか、そっちはそのつもりなのか?

 俺は同人誌擬きを、一瞬だけマジックバックから取り出す。ティアがソレを見たことを確認すると、急ぎバックにしまう。

「──何でそれをカナデ様が!」

 余程驚いたことがあったのか、ギルドのカウンターから飛び出し、俺に抱きつくティア。

 ハッと我に帰ったのだろう、ゆっくりと席に戻り「ゴホン」と、咳払いをした。

「今、仕事にキリがつきました。カナデ様ご用件は?」

 先程まで不機嫌そうだった顔が、嘘のように笑顔に変わる。そして、何かありましたか? みたいな空気をかもし出すティア。

 ……いやいや? そうはいかないだろ? それじゃぁ反撃を兼ねて、少しばかり交渉……しましょうかね。

「俺達、この後港町まで向かうんですよ」

「あら? イードル港にですか?」

 イードル港? あぁ~トゥナが言ってた気がするな? 次の目的地の名称。確かそのような名前だったな。

「はい、それでギルドで馬車を借りれないかなっと思いまして」

 ギルドでも、ギルド間で何かしらの連絡や物資の移動のやり取りをしているはずだ。
 現に他所のギルドでも、馬車が停泊しているのを見たことがある。

「流石に……それは……」

 普通なら当然無理だろう、それは分かっている。
 しかし、ティアの立場を考えれば、一口に不可能とも思えない。
 それに俺には、ティアに対する交渉のカードを、何枚か持ち合わせている。

「ティアさん、どうせまたトゥナの後を着いてくるんですよね? それならティアさん同行の物資運搬の依頼を、ギルドから出してみたらどうでしょう。それを、俺達が依頼として受ける……面白い提案でしょ?」

「カナデ様……私はそのような……」

 あぁ~……一応トゥナの監視をしているのはまだ内緒って言う事になってたっけか? でも、見るからに興味を示してるな。

「トゥナと、一緒に旅が出来るチャンスですよ?」

 これが一枚目のカードだ。
 どうやら、効果は抜群のようだな……。悩んでる悩んでる。

「も、もし私達が向こうに物資を運ぶために馬車に乗って行ったとしましょう」

 ティアは分かりやすくガラスペンを持ち出し、動揺の為かカウンターに直接図解し始めた。

「イードル港に着いたら、馬車を誰が返しに行くのですか? 例えば帰りの便の為、私を含めてもう一人連れてくとしましょう。その分物資が乗らなくなります。それに私の権限でもここの社員までは動かせませんよ……?」

 なるほど……帰りの便の問題もあるのか?
 俺達は目的地に向かうだけでいいけど、馬車はそう言う訳にはいかないもんな。
 物資の量に関しては、小分けをしてもらえばこちらで何とか出来るけど……。

「じゃぁ、例えばですよ? 帰りは行きに使った馬車と、イードル港の馬車二台で港町からこの町に別の荷物を運んでもらう。その後、港町まではイードル港の馬車に、もう一人の御者も乗せ、荷物を積んでまた帰って貰うとかはどうでしょう?」

 代行タクシーと同じような方法だ。
 この方法なら運転手の他に荷物まで運搬するので、ギルドに掛かる負担も軽減出来るはずだ。都合よく荷物があるとも限らないが。

 俺の提案に頭を悩ますティアが「それなら、この町から二台出せば一手間減らせるのではないでしょうか? 人を動かす方が大変なのですが」と、確信をついた一言を返す。

「確かに、始めから二台でいけばいいんですけどね? でも、お互い見られたく無い事もあるのではないですか? 人員の問題は 、ティアさんの腕の見せ所ですね。俺達は港まで行ければ良いので。そうしたら、この本はお返ししますよ?」

 そう言いながら、俺は同人誌擬きをティアの目の前でチラつかせせた。

『カナデ……完璧に悪役だシ。それ脅迫だと思うカナ……』

 ──いいんだよ! 歩きも疲れるだろ? それに……ミコも外出たくないか?

『う、出たいカモ……だシ』

 俺の発言に「なんの事でしょうか? 私には身に覚えがないのですが」とティアが動揺を見せず、見事な笑顔で答えた。

「著者はティアさんですよね?」

 俺は真剣な目でティアを睨みつける……。
 その俺の視線に耐えかねたのか、犯人が諦めたように小さく言葉を漏らした。

「くっ! カナデ様……。やはり気づいていたのですね?」

 これが俺の持っている、二枚目のカードだ。気づいたのはさっきミコに言われたからだけどな?

 パソコンやワープロの様な字を打ち込む技術もなく、同人誌は手書きだ。

 そしてティアさんの字と、同人誌の字が同じだった……。
 この世界は読み書きの教育が義務化されていないのか、字のうまい下手が明確に別れる。書けない人もいるぐらいだ。

「ティアさんが、とてもお上手な字を書かれるので直ぐに分かりましたよ」

 俺がそこまで語ると、諦めた様に「拒否権はなさそうですね……。貴方は何処まで私の事に気付いているのですか?」と、肩を落としながら答えた。

 ティアはカウンターから書類を出し、再び何かの書類を書き始め俺にソレを見せた。

「カナデ様、依頼の内容はこれでよろしいですか?」

 出されたその書類に目を通した。

 ギルド依頼、内容は物資をフィーデス町からイードル港までの運搬護衛。
 尚、ギルドスタッフのティアも同行、彼女の護衛も含まれる。
 今回は、機密品の運搬の為、護衛のメンバーはギルドで選抜する。
 メンバーは、フォルトゥナ、カナデ、ハーモニーの三名で行うこと。

 報酬金額等は別紙の契約書に記載する。以上 ギルド特殊統括責任者 ティア

「あぁ、完璧だ。本は、港についたら返しますね? それまでは人質です」

 話はまとまった。しかし、目の前のティアは自分の手の指を絡め、上目づかいで口を開く。

「あ、あの~? カナデ様? 所でこの事はフォルトゥナ様は……」

 あぁ、不安そうな表情は、それが理由なのか?

「大丈夫、まだ知らせてないから」

 目の前で胸を撫で下ろすティア。
 まぁ、確かにこの内容じゃ知られたら不味いよな。かなり際どい……BLだしな。

「そうだ、ティアさん? それとまだお話が」

「はい、まだ何か?」

 恐らくトゥナにバレるかバレないかで、頭が一杯だったのだろう。でも、彼女は忘れている。本番はこれからだと……。

「この本の内容について、少々お話が!」

 俺はティアが脅えないよう、できる限りの笑顔で答えた。そう、できる限りの満面な笑顔でだ!

「カナデ様、怒ってらっしゃいますか……? 御手柔らかに……お願いします」

 どうやら、彼女は覚悟を決めたらしい。トゥナとハーモニーが戻るまで、俺はひたすらティアに説教をしたのであった。
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