最弱王子なのに辺境領地の再建任されました!?無気力領主と貧困村を救ったら、いつの間にか国政の中心になってた件について~

空月そらら

文字の大きさ
42 / 64
1章

第42話 収束オーブ

しおりを挟む
 数日後、俺とスライムは王都に到着した。

 高い城壁と石畳の通りが広がるこの街は、いつ来ても賑やかだ。

 紹介状に書かれた住所を頼りに街を進むと、やがて目の前に見えてきたのは、他の建物とは一線を画した立派な工房だ。

『ここですね、主人様?』

「ああ」

 俺は扉を叩くと、中から現れたのは壮年の男性だった。

 白髪混じりの髪を後ろで束ね、眼鏡をかけたその姿からは、職人らしい真剣な雰囲気が漂っている。

 そして俺は紹介状を渡すと、職人は驚いた顔をした。

「あなたが、あの第五王子の?」

「ああ、そうだ。俺は第五王子のリエル。今回は蜘蛛の糸を集めるための魔法道具を作ってほしいんだ」

 俺はマグナスに簡単な説明をすると、彼は顎に手を当てて少し考え込んだ。

「ふむ……蜘蛛の糸を効率よく集める魔法道具か。それならば、魔力を糸に集中させて自動的に巻き取る『収束オーブ』というものを作るのが良いだろう。ただし、かなり金はかかりますぞ?」

「ああ、それなら問題ない」

 俺はそう言って、金貨が詰まった袋をドカンと置く。

 この袋の中には、畑で収穫した作物の利益や、魔石の分も少し入っている。

 マグナスは目を見開いて金貨の入った袋を見つめた。

「ほう……さすがは王族。用意が早いな。しかし、こんなに大金を預かるとは……責任重大だ」

 彼は慎重に袋を手に取り、その重みを確かめるようにして頷いた。

「この金があれば、最高品質の『収束オーブ』が作れるだろう。ただ、材料の一部は王都の専門店から取り寄せる必要がある。それには数日かかるが、それでも構わないか?」

「ああ、もちろんだ。妥協のないものを頼む。」

 俺がそう言うと、マグナスはにやりと笑った。

「ふっ、言ったな。その言葉、後悔させないぞ。最高の魔法道具を作ってみせよう」

 そう言うやいなや、マグナスは早速設計図を書き始めた。

 手慣れた動作で魔法文字を次々と描き、複雑な回路図を完成させていく。

 その姿はまさに職人そのものだった。

 俺は肩の上のスライムを軽くつついて、耳元で囁いた。

「さて、準備が整うまでの間、どうするかな?」

『主人様、せっかく王都にいるんですから、少し観光してみては? それに、宿も探さないといけませんよ!』

「そうだな。マグナスの作業場に泊まるわけにもいかないしな」

 そうして俺はマグナスに軽く別れを告げて、工房を後にした。

 王都の街並みは賑やかで、人々の活気が溢れている。

 石畳の道には、露店や行商人が立ち並び、魔法道具や珍しい素材が売られていた。

『うわあ、あっちにおいしそうな果物がありますよ! 主人様、買ってみませんか?』

「まあ、後で買ってやる」

 スライムのはしゃぐ声を聞き流しながら、俺は宿屋の看板を探して歩き続けた。

 ようやく見つけたのは、「金の獅子亭」と書かれた看板の宿だった。

 見た目は質素だが清潔感があり、値段も手頃そうだ。

 宿に入ると、愛想の良い女性が出迎えてくれる。

「いらっしゃいませ! お泊りですか?」

「ああ、数日間滞在する予定だ。部屋は空いてるか?」

「ちょうど空いてますよ。食事付きで銀貨三枚です。」

「それで頼む」

 俺は銀貨を渡し、鍵を受け取った。

『やったー! 主人様、これで安心して休めますね!』

「ああ、王都に来るまで疲れたしな」

 こうして、俺は王都での短い滞在を始めることにした。

『収束オーブ』の完成までの間、街の探索と少しのんびりした時間を楽しむつもりだ。

 ★

 王都での滞在もあっという間に過ぎ、マグナスからの連絡を受けて工房へと向かった。
 
 スライムは肩の上でピョコピョコと揺れながら、はしゃいでいる。

『主人様! ついに完成ですね! 楽しみです!』

「ああ、マグナスは腕利きだし、ここまで時間をかけてくれたんだ。きっと最高の物になってるさ」

 工房に着くと、マグナスが満足げな表情で出迎えてくれた。

 手には、紫と金の輝きをまとった球体がある。

 それが『収束オーブ』だった。

「お待たせしたな、リエル殿下。これが完成品だ」

 マグナスはオーブを掲げ、その機能について簡単に説明してくれた。

「このオーブは周囲にある魔力を糸に集中させ、まるで蜘蛛の巣を巻き取るように効率よく収集できる。魔力の消費も抑えてあるから、長時間使えるはずだ。テストは何回もしたが、一応試しに動かしてみるか?」

「いや、大丈夫だ。それよりも、ここまで手間をかけてくれて感謝する」

 俺はマグナスに深々と頭を下げる。

 彼は照れたように鼻を鳴らしてみせた。

「礼なら金で十分だ。それに、これを作るのは楽しかったさ。お前さんのような客なら、いつでも歓迎だ」

 俺はオーブをしっかりと受け取り、肩のスライムも興奮気味に声を上げる。

『すごいです! 主人様、これで蜘蛛の糸がバンバン集まりますね!』

「まあな。早くエルウァイ領に戻って試してみたいところだ」

 そうして俺は工房から出る。

 帰りの馬車は穏やかなものだった。

 王都を出た俺たちは、エルウァイ領に向けて順調に進んでいた。

 スライムは相変わらず元気で、道中に見つけた野花や飛び交う鳥に興味津々だ。

『あっ! あの鳥、すごく綺麗です! 捕まえられませんかね?』

「お前は少しは静かにしてろ。鳥を追いかけてたら目的地に着くのが遅くなるだろ」

 そんな会話を交わしながら、俺は馬車の揺れに身を任せていた。

 だが、その平穏は突然破られる。

 馬車が小さな森を抜けようとしたとき、不意に周囲の空気が張り詰めた。

「……何かいる」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

醜悪令息レオンの婚約

オータム
ファンタジー
醜悪な外見ゆえに誰からも恐れられ、避けられてきたレオン。 ある日、彼は自分が前世で遊んでいたシミュレーションRPGの世界に転生しており、 しかも“破滅が確定している悪役令嬢の弟”として生きていることに気付く。 このままでは、姉が理不尽な運命に呑まれてしまう。 怪しまれ、言葉を信じてもらえなくとも、レオンはただ一人、未来を変えるために立ち上がる――。 ※「小説家になろう」「カクヨム」にも投稿しています。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

処理中です...