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15.バニ神父

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人一人分通るくらいのドアに向かうと、バニ様は鍵をポケットから出しそのドアを開けた。

「お一人ずつどうぞ。少し、足場が悪いので気よつけて」

 バニ様が先にドアを開けて出ていき、その後私達も通り抜ける。私も同じように通りすぎると、ドアを開けた先は、群青の空に黄緑色の綺麗な植物達の庭が目の前に広がっていた。次々に訪れた方からも、驚嘆の声が聞こえてくる。

「これは、何ですの?バニ様」
「教会が育ててある、ハーブです。これを使って、修道士が、民衆に配るのです」
「へえ」

 私は近づいてみて見る。足場が悪いので、マークにお手をと言われたけど、大丈夫だったので、そのまましゃがんで見た。

「ゥわッ!!」

 すると、ミュウ皇女の声が聞こえてきた。なので、慌ててそちらを振り向くと、マークがミュウ皇女の手を取る姿と、後ろでビアードが、ミュウ皇女を支えている姿が見えた。

「あ、す、すいま、せん……」
「いえ」
「有難うございます……ビアード様……」

ビアードと、ミュウ皇女は体勢を整えて、マークはミュウ皇女を気遣っていた。

「大丈夫?」
「は、はい」

 そういや、さっきから彼女はぎこちなく喋っている。しかし、特にビアードとはそれといった会話は交わさずに二人は他人のように装っていた。

「それでは、私からの説明は以上になります。後は皆様自由に回られてください」

 ここで、終わりのようでバニ様は、そうおっしゃられた。なので、皆散らばってそれぞれ庭を模索していた。 すると、ふとバニ様が、近くにいたので私は先程の事を謝ろうと思い、彼に話し掛けた。

「先程は、失礼でしたわね。バニ様」
「いえ」 

 バニ様は、私に気付く。

「私は、こういう話大好きなので。基本迷う人達がここに来るので、反発する者がおらず、窮屈しているのですよ。私も一、人間ですので、やはり不安になる事はあるのです」

 悲しそうに呟くバニ様。

「貴女にとって、私の発言は、負の感情の発露ですのに?…言ってしまえば八つ当たりですわ」
「それでも私にとっては、貴重な意見ですよ。それに、私は、貴女の意見は、ただの発露ではないと思いました。」

 ニコニコと、笑いながら、バニ様は、答えた。不思議な方ですわね。すると、彼は何かに気付くと困り眉になる。

「ごめんなさい。ちょっと、お喋りと言われてしまうのです」
「いいえ。大丈夫ですわ」

 でもふむ。…やはりバニ様はどこかで会ったこと感が強い。

「どこか、遠い所でお会いしたことありますような」
「私もそう思います」
「……バニ様、マリス第二皇子はご存知で?」
「ええ。ああ、やはりそうですか。傍にいたあの方ですね」
「そうですわ。まあ、私が何か言わなくても、バニ様わかっているような、気がしましたわ」
「まあ」

バニ様は否定せずに、私の、言うことに頷いた。

「でも、何ていうか、シルバー王女様は、...不思議な方ですね」
「それ、私も、バニ様に対して、思っていたわ」
「長年連れ添った友人のようです」
「それです。まあ。そのように、思えて、とても嬉しい限りですわ。今後とも、宜しくお願いしますわね」
「はい」

おほほほと、その後バニ様とお喋りを楽しんだ後、私とバニ様、マークで、三人で回り、他で連れ添って歩いていた、ミュウ皇女と、ビアード、家庭教師達と合流し、私達は教会から出た。

 でも、長年連れ添った友人か…。その言葉で何か、引っ掛かりを感じる。

 …もしかして、少女漫画での、シルバー王女の愛人って、バニ様…?

 私は、教会を振り返り見て、そんな風に思う。
 だけど、それを見ても、私はやはり…。と、思った所、ミュウ皇女が、私の名を呼んだので、私はそちらの方に向かった。
9

9話 訓練
 雲ひとつない晴天の日和だった。私と、マーク、ミュウ皇女、そしてミュウ皇女の護衛、ジルが軍事訓練の見学に来ており、今日は家庭教師ではなく、マークがここの訓練場を解説することになっていた。
 訓練場は、城を囲む塀の外にあり、近くの川に流れていて、そこで、馬に乗って射抜いたりしていた。

「ここで、俺達のような、王族の護衛が育てられます……」
「すごいですね。沢山の騎士達が…」
「全て常備軍なのね」
「ええ……」

相当訓練に集中しているようで、火花が飛び交う音が聞こえる。

「すごいわ。ジルに、マークさん。あんな、過酷な訓練をくぐって護衛騎士になったのですね」
「いやあ」
「有り難うございます……」

ジルはミュウ皇女に誉められて、照れていた。
そうして、私達は、マークから説明が終わった後、丁度時間になり解散した。帰り道、自分の部屋に戻る時、私はマークに話し掛けた。

「ねえ、マーク」
「何でしょう。シルバー王女様」
「マーク。私も、先程の騎士達のように剣の稽古がしたいわ」
「稽古ですか……?」
「駄目かしら?」

マークは、私の方をじっと見る。すると、

「いえ、その場合、マリス第二皇子様や、アリーゼ第一王子様に、相談しなければなりませんが、シルバー王女様は、それでも大丈夫ですか……?」
「ええ、勿論よ。……できれば、私この国で認められる存在になりたいの」
「俺は、シルバー王女は、もう、神聖カリーテナ帝国の一員だと、俺は、思いますが……次期、王妃様になる方ですし……」
「違うわ。それは、肩書き。それだけじゃ、王権側の何かにはなれないの。私、バニ様の教会に行った時、自分は王権で、認められる人になりたいって気付いたわ」
「……」
「まあ、自分がこう思っていても、わからないけど。ま、深く考えずに、健康の為ということにしておいてほしいわ」
「了解しました……」

すると、だけど、とマークが付け加えたので、何かしら?と私は返すと、

「俺は、王女様であろうと、剣を学ぶことについては、人一倍真剣になりたいと思っています……」
「成る程、容赦ないってことね。だったら、マークを倒す勢いで、頑張りましょう」
「ついでに、俺を倒す事が出来れば、マリス第二皇子は、倒す事が出来ます……」
「……!果たし状を送りつけてみますわ」

そう言ったら、目から鋭い光が洩れてきたので、気が付くといつの間にか、夕暮れに染まっていた。

「でも、マーク、私も適当に剣の稽古を選んだわけではないのよ」
「……?」
「私の実力、しかと、お見せするわ」
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