気弱ドワーフと転生エルフの産業革命

編端みどり

文字の大きさ
上 下
66 / 74
第二章

16.マイス ハ ニブイ

しおりを挟む
「世界って……別の大陸出身って事ですか?」

それなら、前から聞いてたから驚く事じゃないけど……?

「違うの、私達はね、魔法も、魔物も居ない世界に住んでたの。見た目も違った。私はエルフじゃなかったし、レナは獣人じゃなかった。カナだけはあまり変わらない見た目だけど、こんなに筋肉……なかったよね」

「ありませんでしたね。鍛えてはいましたけど、こんな大剣、持つ事すら無理です」

「……魔法も、魔物も居ないんですか?」

イマイチ分からない。どうしよう。みんなものすごく真剣な顔してるから大事な事なんだろうけど、どう大事なのか理解できない。

「あんまり分かってないよね?」

「そうですねぇ。どう説明したものでしょうか」

「んー……あたしたち、死んだんだよね」

はい?! 死んだ?! みなさん生きてるよね?!
僕は思わず、近くに居たレナさんの手を握って脈を取る。

「マイス?! どした?」

「生きて……ますよね?」

「ああ、心配してくれたんだ。ありがと。今は生きてるから大丈夫だよ。あたしら、一回死んで生まれ変わったんだよね」

「今は生きてるんですよね?! 良かった!!! ああ! すいません! レナさん男嫌いなのに!」

慌ててレナさんから離れる。けど、レナさんは平気そうだ。良かった。レナさんが男嫌いだから、あまり近づかないようにしてたのに申し訳ない事をした。

「マイスは大丈夫だから平気。けど、さっきはヤバかったよ」

「さっきって、真っ青になってた時ですよね?」

「うん、あたしらクラス……えっと、40人くらいの団体で事故に遭ったの。馬車よりもっと大人数が乗せられるバスって乗り物で、崖から落ちちゃってさぁ。多分、みんな死んだかなって思う」

「なんだかよく分からないのですが、神様らしき方が事故の原因は自分のペットだから、私達を別の世界に転生させてやると言い出しまして……」

「嫌ならそのまま消滅するだけだとか言われたよね」

なんだそれ。脅してるじゃないか。

「理不尽過ぎません?」

「そーなの! でも、どうしようもなくてさぁ……さすがに消滅するのは怖いじゃん? だからみんな、転生を選んだの」

「まぁ、そうなりますよね」

「怖かったけど、仕方ない。いっそ楽しもう。そう思わないとやってけなくてさ」

「そうなんですね。怖かったですね……」

死ぬのは、怖い。その恐怖を味わった後に、更に自分が消滅するかもしれないなんてどれだけの恐怖だろう。今は明るい3人だけど、そんな秘密を抱えてたんだね。だから、僕の知る常識と少し違ったり不思議な道具を知っていたりするのか。

「今はもう平気だけどね。でも、やっぱり親とか泣いただろうなって思うよ」

「それは……そうでしょうね。家族を失うのはつらいです」

「そっか、マイスもご両親を事故で亡くしたんだもんね」

アオイさんが、悲しそうに俯いてしまった。しまった! そうだよ! アオイさん達は死んだ側なんだから僕と逆だ! みんな優しいんだから、自分のせいで親が悲しむって思うに決まってるじゃないか!

「大丈夫です! 事故は仕方ないんですから! 別の世界とはいえ、自分の家族が生きているなら嬉しいに決まってます!」

「ありがとう、そう言われると救われるよ。それでね、私達の知り合いが40人位一気にこの世界に転生したんだけど、みんな同じ場所に転生した訳じゃなかったの。私は、レナとカナと一緒が良いって願ったから3人一緒に居られた。赤ん坊から一気に今くらいの年齢まで成長したの」

「あれ、びっくりしたよね。森の中に赤ん坊3人。あ、これ死んだわって思ったもん」

「思いました。ぐんぐん身体が成長するのは面白かったですけど」

「気持ち悪かったよ! ご丁寧に服まで大きくなるから余計気味が悪かったよっ!」

「確かにそうなんですけど、レナの尻尾と耳が段々大きくなるのが可愛かったです」

「分かる! 耳もフカフカで赤ん坊の獣人、可愛すぎたよね。幼稚園児くらいが一番可愛かった!」

「分かります! すぐ成長したのが勿体なくて……」

「2人共耳とか尻尾を触りたがって大変だったんだよ!」

「獣人さんの子どもは可愛いですからね。分かります」

「ほんっと可愛かった……」

「もう! 私の事は良いから! んで、転生する時に色々種族とか選べたの。私やアオイは獣人やエルフにしたからかなり見た目も変わった。けど、カナは人間にしたからあまり見た目が変わらなかった。それは、私達以外も同じなんだ」

「つまり、カナさんは転生する前からこんなに美人さんだったんですね」

「……は?! いや、ちょっと待って下さい!」

あれ?
カナさんの顔が真っ赤なんだけど?

レナさんとアオイさんが冷たい目をしてるんだけど?

「マイスってさ、たまに天然で褒め殺すから困るよね」

レナさんの毛が逆立ってるんだけど?!

「そうね。確かにカナは可愛いし、美人だわ」

アオイさんの声が冷たいんだけど?!

「オンナゴコロ ワカッテナイ」

キュビさんまで?!
あ、そうか! カナさんだけ褒めたらダメなのか! そうだよね、アオイさんもレナさんも美人さんだもの!

「アオイさんもレナさんもカナさんもとっても美人さんだと思います!」

そう言った瞬間、3人は真っ赤な顔で僕を睨んできた。おかしいなぁ? しょっちゅう色んな人に褒められてるんだし、美人さんだって言われてもにこやかにありがとうって言ってるのに……。

「マイス ハ ニブイ」

キュビさんに呆れられてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門
ファンタジー
宇宙の崩壊と共に、別宇宙の神々によって魂の選別(ドラフト)が行われた。 野球ゲームの育成モードで遊ぶことしか趣味がなかった底辺労働者の男は、野球によって世界の覇権が決定される宇宙へと記憶を保ったまま転生させられる。 その宇宙の神は、自分の趣味を優先して伝説的大リーガーの魂をかき集めた後で、国家間のバランスが完全崩壊する未来しかないことに気づいて焦っていた。野球狂いのその神は、世界の均衡を保つため、ステータスのマニュアル操作などの特典を主人公に与えて送り出したのだが……。 果たして運動不足の野球ゲーマーは、マニュアル育成の力で世界最強のベースボールチームに打ち勝つことができるのか!? ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

生産職がやりたい令嬢は家出する

新川キナ
ファンタジー
よくある異世界転生から始まったはずだった。 なのに、どうしてこうなった? 生産職を希望したのに生まれた先は脳筋の貴族の家。 そして貴族子女なのに筋肉を鍛えさせられている。 「筋肉。筋肉。筋肉を鍛えろエレス!」 「はい。お父様!」 「筋肉は全てを解決してくれる!」 「はい。お父様!」 拳を振るい、蹴り足を鍛えて木の棒を振り回し鍛錬をする毎日。でも…… 「こんな生活は嫌だ! 私の望んだこと違う!」 なので家出をすることにした。そして誓う。 「絶対に生産職で成功して左団扇で暮らすんだ!」 私の新生活が始まる。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち
恋愛
出勤したら代替わりをした親方に解雇と言われた宝石加工職人のミカエラは独り立ちを選んだ。 次こそ自分のペースで好きなことをしてお金を稼ぐ。 労働には正当な報酬を休暇を!!!低賃金では二度と働かない!!!

加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました

ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。 そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。 家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。 *短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。

処理中です...