気弱ドワーフと転生エルフの産業革命

編端みどり

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第二章

17.会いたくない人

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「マイスが鈍いのは今に始まった事じゃないし、話し続けるね。さっきのレナが怯えてたのは、昔の知り合いに会ったからなんだ。レナは元々母子家庭で、ひとりっ子だったの。だからあんまり男性に慣れてなかったんだけど、クラスの男子がレナに惚れちゃって」

「マイスさんみたいに優しい方なら良かったんですけど、自己中心的で乱暴な方だったんです。今までは告白したら断られた事はなかったらしくて、レナがいくら断っても照れてるだけだと勘違いして、次第にストーカーとなってしまわれまして」

「す、ストーカー……?」

「付き纏いってヤツ。町を歩いてるとたまに声かけられるじゃん? あれがずうっと」

「うわ、最悪じゃないですか」

「お母さんの職場まで来てあたしに会わせろってしつこくて……。お母さんが怒って追い返したら……何人もの男達を連れてきて暴れて……お母さん、クビになっちゃったの……」

「最低ですね。好きな人を悲しませるなんてどうかしてます。ましてや親御さんにまで迷惑をかけるなんて」

「あたしはすっかり男の人が怖くなっちゃって……学校にもあんまり行けなくて……内緒で引っ越す予定だったの。学校も転校して、アイツから逃げようと思ってた。最後の思い出にって修学旅行だけは参加して……それで……死んじゃったの」

「辛かったですね……」

「そのせいで、いまだに男の人は怖くて……」

「そんな経験したら当たり前です。諸悪の根源である男達に会ってしまったからあんなに怯えてたんですね。見た目が変わってなくて、分かったって事ですよね?」

「そう。マイスの魔道具が無かったら……話しかけられてたかも……」

「あり得ます。街中で獣人の女性をナンパしてましたもの」

「顔、引っ掻かれてたけどね。ナルシストっぷりは変わらなかったよ。カナは顔がバレてるから急いで転移で逃げたんだけど、私は観察してた。私達みたいに冒険者をしてるっぽいけど、偉そうなのは変わらないね。ただ、親のコネが使えなくなってる分マシってだけ。絶対気付かれたくないし、しばらくは街中に行かない方がいいかな。レナが居るって分かれば、しつこく探そうとすると思う」

なるほど。それならしばらく姿を見せない方が良い。納品は僕が1人で行けば良いし、アオイさん達の名前を出せばお使いも出来る……。

その時、僕は背筋がゾッとした。

見た目が変わってないのはカナさんだけ。だけど……。

「あの、みなさんは以前と同じお名前ですか?」

「うん。そうだよ。苗字は貴族しかないって聞いたから苗字は名乗らないけど、名前は同じ」

「その男達は冒険者なんですよね? 冒険者ギルドって、優秀な冒険者を掲示してますよね。レナさんの名前を見つけて、そこにアオイさんとカナさんの名前もあったら……まずくないでしょうか?」

「……ホントだ……ど、どうしよう……」

レナさんが青い顔で震え出してしまう。

「あの、掲示って剥がして貰う事は可能ですか?」

「分かんないけど……頼んでみよう。レナとカナは家に居て。私が行く」

「いえ、まずは僕が行きます。アオイさんだって、可能なら会いたくないでしょう? 名前が知られていれば見た目が変わっていても気付かれるかもしれません」

「そりゃ、そうだけど……」

「本人が来ないとダメと言われたら、その時また相談しましょう。会議室とか、人目のないところで転移して貰う事も出来るんですから」

「分かった。なら悪いけど頼んで良い?」

「はい。念の為その男達の見た目や名前を教えて下さい」

「ダイチとユウヤとアキラって名前の男3人組。ダイチは見た目が変わってなかったから、多分人間。他の2人は、エルフと獣人になってた。ダイチがレナのストーカーよ」

似顔絵を描いてもらい、名前も確認した。
僕は必死でみんなを守る方法を考えながら、マリカさんに渡すお土産のアイスを持って冒険者ギルドに転移した。
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