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ルビーのブローチを渡すまで逃しません
6.カーラの恋
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リアム様は、私だけじゃなくてたくさんの人々の心を救って下さった。親の跡を継ぐしかなかった庭師は、庭仕事は苦手だったが、計算が得意だった。
リアム様は、彼に経理の仕事を任せた。以前より早く会計資料がまとまるようになり、残業していた者達は定時で帰れるようになった。
死んだ父の後を継いで従者になった少年は、料理が好きだった。リアム様は、彼をコック見習いにした。彼の作る料理は独創的で素晴らしいと、お嬢様は茶会のメニュー開発を任せてくれた。
他にも、手先が器用な少年が針子になったり、私のように強い女性が警備の仕事に就いたりした。
仕事は、親と同じ仕事をするもので、男しかなれない仕事や、女しか出来ない仕事があった。
それが当たり前だったのに、リアム様がいらっしゃってから変わった。出来ない事はある。でも、出来る範囲で向いていたり好きな事を仕事にしましょう。その方が効率が良いですよと言って、我々の認識を変えて下さった。大好きなエリザベスお嬢様も、そうですねと微笑んでおられた。
お嬢様がそう言うのなら、もっと自由に生きて良いのだと思った。馬番のトムは真っ先にリアム様に直談判をして、情報収集の仕事をしている。
学校という素晴らしい場所が出来て、子ども達は自分に向いている事を探せるようになった。エリザベスお嬢様は、ずっと前から学校をやりたかったそうだ。お金の目処がつくと、建物を先に建てようとなさっていたお嬢様に、一刻も早く学校を始めた方が良いと助言して下さったのはリアム様だ。
おかげで、私の弟や妹もギリギリ学校に通える。
リアム様は、素晴らしい人だ。
私は、エリザベスお嬢様と同じくらいリアム様を尊敬している。
その気持ちが、恋心に変わるまでに時間はかからなかった。
リアム様は人気があるが、女性を近寄らせない。だけど一度だけ、違う顔をなさった。
それは、エリザベスお嬢様と話をしていた時だ。
リアム様は、エリザベスお嬢様を口説いた。冗談だったと笑っておられたが、半分くらいは本気だったのではないだろうか。
リアム様の気持ちも分かる。エリザベスお嬢様は、女神だ。いくら親友の婚約者候補でも、惹かれてしまう。リンゼイ子爵家のバカ息子は、お嬢様のなにが気に入らなかったというのだろう。
……まぁいい。あんな男より、イアン様の方が何億倍もお嬢様に相応しい。
確かに、リアム様もお嬢様に相応しいだろう。だけど駄目だ。お嬢様は、イアン様が好きなのだから。
最優先されるのは、イアン様でもリアム様でもない。エリザベスお嬢様のお気持ちだ。
リアム様を見るたびに、胸が高鳴り幸せな気持ちになった。お嬢様がイアン様に対して想う気持ちと同じ。お嬢様と話すうちに気が付いた。これは、間違いなく恋心だ。
初めての恋心を自覚した私は、母に相談した。母は、女性に興味がなかった父を口説き落として結婚した。母のアドバイスは為になるものばかりだった。私は、エリザベスお嬢様と一緒に王都に行く。リアム様とは、なかなか会えなくなるだろう。遠距離でどうやってアプローチすれば良いのか、母と作戦を立てた。
母は嬉しそうに話をしてくれた。
そうか。母は私に頼られたかったんだ。あれだけ家事を教えようとしたのも、父のように娘に尊敬されたかったのだろう。そう思うと、急に母が可愛く見えた。
「私は、ずっと我慢してたの。でも、リアム様のおかげで我慢しなくて良くなった。だから、リアム様が好きなの」
母に本音を言ったのは初めてだったけど、母はちゃんと分かってくれた。ごめんね、ごめんねと何度も謝ってくれた。そのまま妹の所に走って行って、謝罪していた。妹は突然の事にポカンとしていたけど、嬉しそうに笑った。
間に合った。そう思った。
妹はまだ幼い。私のように母への嫌悪感は植え付けられていないだろう。母への複雑な気持ちはきっと一生変わらない。けど、それで良いんだと思える。
あの時苦しんだ私も、私だ。
母がメイドの仕事を紹介してくれなければ、エリザベスお嬢様の護衛にはなれなかったし、リアム様とも出会えなかった。
過去を受け止め、飲み込んで生きていけるくらいには大人になった。
だから……私は好きなように生きる。
私は、もう諦めない。
諦めなくて良いと教えてくれたのはリアム様だ。
きっとリアム様に告白してもフラれてしまうだろう。だけど、それで良い。たくさん恋をして、大人になれば良いのだから。
リアム様は、彼に経理の仕事を任せた。以前より早く会計資料がまとまるようになり、残業していた者達は定時で帰れるようになった。
死んだ父の後を継いで従者になった少年は、料理が好きだった。リアム様は、彼をコック見習いにした。彼の作る料理は独創的で素晴らしいと、お嬢様は茶会のメニュー開発を任せてくれた。
他にも、手先が器用な少年が針子になったり、私のように強い女性が警備の仕事に就いたりした。
仕事は、親と同じ仕事をするもので、男しかなれない仕事や、女しか出来ない仕事があった。
それが当たり前だったのに、リアム様がいらっしゃってから変わった。出来ない事はある。でも、出来る範囲で向いていたり好きな事を仕事にしましょう。その方が効率が良いですよと言って、我々の認識を変えて下さった。大好きなエリザベスお嬢様も、そうですねと微笑んでおられた。
お嬢様がそう言うのなら、もっと自由に生きて良いのだと思った。馬番のトムは真っ先にリアム様に直談判をして、情報収集の仕事をしている。
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おかげで、私の弟や妹もギリギリ学校に通える。
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私は、エリザベスお嬢様と同じくらいリアム様を尊敬している。
その気持ちが、恋心に変わるまでに時間はかからなかった。
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それは、エリザベスお嬢様と話をしていた時だ。
リアム様は、エリザベスお嬢様を口説いた。冗談だったと笑っておられたが、半分くらいは本気だったのではないだろうか。
リアム様の気持ちも分かる。エリザベスお嬢様は、女神だ。いくら親友の婚約者候補でも、惹かれてしまう。リンゼイ子爵家のバカ息子は、お嬢様のなにが気に入らなかったというのだろう。
……まぁいい。あんな男より、イアン様の方が何億倍もお嬢様に相応しい。
確かに、リアム様もお嬢様に相応しいだろう。だけど駄目だ。お嬢様は、イアン様が好きなのだから。
最優先されるのは、イアン様でもリアム様でもない。エリザベスお嬢様のお気持ちだ。
リアム様を見るたびに、胸が高鳴り幸せな気持ちになった。お嬢様がイアン様に対して想う気持ちと同じ。お嬢様と話すうちに気が付いた。これは、間違いなく恋心だ。
初めての恋心を自覚した私は、母に相談した。母は、女性に興味がなかった父を口説き落として結婚した。母のアドバイスは為になるものばかりだった。私は、エリザベスお嬢様と一緒に王都に行く。リアム様とは、なかなか会えなくなるだろう。遠距離でどうやってアプローチすれば良いのか、母と作戦を立てた。
母は嬉しそうに話をしてくれた。
そうか。母は私に頼られたかったんだ。あれだけ家事を教えようとしたのも、父のように娘に尊敬されたかったのだろう。そう思うと、急に母が可愛く見えた。
「私は、ずっと我慢してたの。でも、リアム様のおかげで我慢しなくて良くなった。だから、リアム様が好きなの」
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間に合った。そう思った。
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