妹と婚約者の逢瀬を見てから一週間経ちました

編端みどり

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その後

ポールとソフィア

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「さっさと話せば、楽になるよ?」

目の前の男はガタガタ震えるだけで、何も喋ってくれない。呆れたソフィアが、僕に声をかけてきた。

「ポール、やり過ぎよぉ。これじゃ怯えて話してくれないじゃないのぉ」

「……ごめん」

「良いのよ。この男はなんにも知らないわ。さっさと次にいきましょう」

ソフィアがそう言うのなら、本当にこの男は何も知らないんだろう。ちぇ、無駄な時間を過ごしてしまった。僕は、無駄な時間を最小限で済ませてくれた同僚にお礼を言った。

「分かった。ありがとうソフィア」

「ふふ、わたくしは頼りになるでしょお」

そう言って腕を絡ませてくるソフィア。可愛い。心臓の音がうるさい。頼むから静かにしてよ。ソフィアは鋭いんだから、すぐに気付いてしまうじゃないか。

「安心して。結婚式は予定通り行われるわ。あのイアンが、エリザベス様を離す訳ない。エリザベス様だって、リリアンだって自分で考えて動いてる。それにきっと、リアムも手を貸してくれる筈」

「リアム様は、結婚式の前日に到着する予定だから、まだ領地に居るよ」

「わたくし達が帰れなくなる前に、ポールの屋敷でエリザベス様とリリアンと一緒に話し合いをしたでしょう? あの時、カーラがなにか悩んでる様子だったの。多分、恋人のリアムに相談してると思うわ。リアムの事だから、情報を得たらすぐ領地を出てる。だからきっと、今頃はエリザベス様と会ってるわ。リアムがいるなら、なんとかなる」

「恋人?! カーラがリアム様の?!」

「そうよぉ。気が付かなかったの?」

「全然気が付かなかったよ……。えぇ……カーラに悪い事しちゃったなぁ。姉さんの護衛で、ほとんど領地に帰してあげてないのに」

「ふふ、やっぱりポールは素敵ね」

「ど、どうしたの?」

カーラとリアム様が恋仲だったなんて知らなかった。姉さんは知ってるのかな?

駄目だ!

ソフィアが色っぽくて心臓がうるさい。領主として、カーラやリアム様の将来を考えないといけないのに……!

僕の内心を分かっているのだろうか?
ソフィアが妖艶に微笑んで、更に強く腕を絡ませてきた。

「ポールは、わたくしの言葉を疑わない。わたくしは大抵の事は人の顔色を伺えば分かってしまう。けど、わたくしの言葉を最初から受け入れてくれる人は少ないわ。怯えるか、怒るか、警戒するか、信奉者のようになってしまう人が大半よ。けど、ポールは違う。ごく自然にわたくしの言葉を受け入れてくれる。だから、冗談も言えるわ」

「ソフィア……」

そうか。ソフィアは優秀だけど、高い能力があるが故の苦労があるんだ。いつもツンと澄ましているソフィアしか知らない人は、お高くとまってると悪口を言う。けど、僕の知ってるソフィアはお高くとまってなんかないし、好物のチーズケーキを食べる時は頬が緩んでいて可愛い。

「だから、二番目で良いからわたくしを側に置いて」

小声で呟いたソフィアは、すぐに腕を離して走って行ってしまった。
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