19 / 52
その後
ポールとリリアン
しおりを挟む
「ポール! ソフィア! 無事で良かった!!!」
リリアンが僕とソフィアに抱きついてきた。リリアンの目は真っ赤で、前に会った時よりも華奢になっていた。きっと、心配であまりご飯が食べられなかったのだろう。
「ごめんね。心配かけて」
「心配なんかしてないわっ! でも、無事で良かった!」
「素直じゃないわねぇ」
「……うるさいわよ」
「あらぁ、下品な言葉遣いねぇ」
「失礼しました。ポール、ソフィア、おかえりなさいませ」
淑女の礼をするリリアンはとても美しい。堂々とした立ち振る舞いがイアン様にそっくりだ。そう言うと、リリアンはとても嬉しそうに笑った。その笑顔が可愛くて、思わず見惚れてしまうんだ。
「それじゃ、わたくしは帰るわ。また後でね、リリアン」
そう言って、ソフィアは帰って行った。リリアンは、じっと僕の顔を見ている。
「心配かけてごめんね。もう、大丈夫だから」
「……ソフィアが一緒なんだから、大丈夫だって分かってたわ」
寂しそうに微笑むリリアンの笑顔に、胸が締め付けられる。
「わたくしは、何も出来ないもの。ソフィアみたいに仕事は出来ないし、お姉様みたいに自分で考えて動く事も出来ない。ただ、オロオロして騒いでいただけよ」
そう言って、そっぽを向いたリリアン。僕もリリアンと同じ気持ちになった事がある。姉さんは凄くて、いつも僕を守ってくれた。だけど……そのせいで両親の攻撃は全て姉さんに向けられた。僕は何も出来なかった。姉さんの指示通り、両親やドロシーに好かれるように振る舞った。最初は苦しかったけど、次第に慣れた。今では、噓を吐くのは得意だ。
こんな時、どうでも良い相手ならそんな事ないと適当に慰めれば良い。だけど、リリアンには嘘を吐きたくない。
「僕もそうだったよ。姉さんが頑張ってるのに、僕は何も出来なかった。姉さんが殴られてても、助ける事が出来なかった。けど、今は違う。姉さんのドレスを用意出来るし、姉さんを狙う貴族を潰す事だって出来る。リリアンも、今は何も出来ないかもしれない。けど、1年後にはいろんな事が出来るようになってるよ。僕も協力するから、頑張ろう」
「ポール……。そこは嘘でもそんな事ないって言うところでしょう?」
リリアンの目に涙が浮かんでいる。そんな姿も愛おしい。
「リリアンには噓を吐きたくないんだ」
「ポールの正直なところ、好きよ」
「僕は嘘吐きだよ」
「わたくしに嘘を吐いた事はないでしょう?」
「……それは」
確かに、リリアンには噓を吐いた事はない。言わずに誤魔化したりした事は何度もあるけど……嘘だけは言えなかった。
リリアンは、目を細めてにっこり笑った。
「良いわ、半年待ってなさい。お姉様がうちに来れば、もっと色々教えて貰える。半年後、成長したわたくしを見てなさいよ! 絶対に、ポールをギャフンと言わせてあげるわ!」
涙が引っ込んだリリアンが胸を張る。ああ、やっぱりリリアンは前向きで、とても可愛い。リリアンと話していると、胸が暖かくなる。
「じゃあ、僕もリリアンに負けないように頑張るよ」
「ポールが頑張ったら、わたくしが追いつけないじゃないの!」
そう言って騒ぐリリアンが可愛くて仕方ない。僕は欲張りで、狡い。2人の気持ちは分かってるのにどうしたら良いのか、全く分からない。
リリアンが僕とソフィアに抱きついてきた。リリアンの目は真っ赤で、前に会った時よりも華奢になっていた。きっと、心配であまりご飯が食べられなかったのだろう。
「ごめんね。心配かけて」
「心配なんかしてないわっ! でも、無事で良かった!」
「素直じゃないわねぇ」
「……うるさいわよ」
「あらぁ、下品な言葉遣いねぇ」
「失礼しました。ポール、ソフィア、おかえりなさいませ」
淑女の礼をするリリアンはとても美しい。堂々とした立ち振る舞いがイアン様にそっくりだ。そう言うと、リリアンはとても嬉しそうに笑った。その笑顔が可愛くて、思わず見惚れてしまうんだ。
「それじゃ、わたくしは帰るわ。また後でね、リリアン」
そう言って、ソフィアは帰って行った。リリアンは、じっと僕の顔を見ている。
「心配かけてごめんね。もう、大丈夫だから」
「……ソフィアが一緒なんだから、大丈夫だって分かってたわ」
寂しそうに微笑むリリアンの笑顔に、胸が締め付けられる。
「わたくしは、何も出来ないもの。ソフィアみたいに仕事は出来ないし、お姉様みたいに自分で考えて動く事も出来ない。ただ、オロオロして騒いでいただけよ」
そう言って、そっぽを向いたリリアン。僕もリリアンと同じ気持ちになった事がある。姉さんは凄くて、いつも僕を守ってくれた。だけど……そのせいで両親の攻撃は全て姉さんに向けられた。僕は何も出来なかった。姉さんの指示通り、両親やドロシーに好かれるように振る舞った。最初は苦しかったけど、次第に慣れた。今では、噓を吐くのは得意だ。
こんな時、どうでも良い相手ならそんな事ないと適当に慰めれば良い。だけど、リリアンには嘘を吐きたくない。
「僕もそうだったよ。姉さんが頑張ってるのに、僕は何も出来なかった。姉さんが殴られてても、助ける事が出来なかった。けど、今は違う。姉さんのドレスを用意出来るし、姉さんを狙う貴族を潰す事だって出来る。リリアンも、今は何も出来ないかもしれない。けど、1年後にはいろんな事が出来るようになってるよ。僕も協力するから、頑張ろう」
「ポール……。そこは嘘でもそんな事ないって言うところでしょう?」
リリアンの目に涙が浮かんでいる。そんな姿も愛おしい。
「リリアンには噓を吐きたくないんだ」
「ポールの正直なところ、好きよ」
「僕は嘘吐きだよ」
「わたくしに嘘を吐いた事はないでしょう?」
「……それは」
確かに、リリアンには噓を吐いた事はない。言わずに誤魔化したりした事は何度もあるけど……嘘だけは言えなかった。
リリアンは、目を細めてにっこり笑った。
「良いわ、半年待ってなさい。お姉様がうちに来れば、もっと色々教えて貰える。半年後、成長したわたくしを見てなさいよ! 絶対に、ポールをギャフンと言わせてあげるわ!」
涙が引っ込んだリリアンが胸を張る。ああ、やっぱりリリアンは前向きで、とても可愛い。リリアンと話していると、胸が暖かくなる。
「じゃあ、僕もリリアンに負けないように頑張るよ」
「ポールが頑張ったら、わたくしが追いつけないじゃないの!」
そう言って騒ぐリリアンが可愛くて仕方ない。僕は欲張りで、狡い。2人の気持ちは分かってるのにどうしたら良いのか、全く分からない。
29
お気に入りに追加
6,536
あなたにおすすめの小説
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。