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その後
ポールとリリアン
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「ポール! ソフィア! 無事で良かった!!!」
リリアンが僕とソフィアに抱きついてきた。リリアンの目は真っ赤で、前に会った時よりも華奢になっていた。きっと、心配であまりご飯が食べられなかったのだろう。
「ごめんね。心配かけて」
「心配なんかしてないわっ! でも、無事で良かった!」
「素直じゃないわねぇ」
「……うるさいわよ」
「あらぁ、下品な言葉遣いねぇ」
「失礼しました。ポール、ソフィア、おかえりなさいませ」
淑女の礼をするリリアンはとても美しい。堂々とした立ち振る舞いがイアン様にそっくりだ。そう言うと、リリアンはとても嬉しそうに笑った。その笑顔が可愛くて、思わず見惚れてしまうんだ。
「それじゃ、わたくしは帰るわ。また後でね、リリアン」
そう言って、ソフィアは帰って行った。リリアンは、じっと僕の顔を見ている。
「心配かけてごめんね。もう、大丈夫だから」
「……ソフィアが一緒なんだから、大丈夫だって分かってたわ」
寂しそうに微笑むリリアンの笑顔に、胸が締め付けられる。
「わたくしは、何も出来ないもの。ソフィアみたいに仕事は出来ないし、お姉様みたいに自分で考えて動く事も出来ない。ただ、オロオロして騒いでいただけよ」
そう言って、そっぽを向いたリリアン。僕もリリアンと同じ気持ちになった事がある。姉さんは凄くて、いつも僕を守ってくれた。だけど……そのせいで両親の攻撃は全て姉さんに向けられた。僕は何も出来なかった。姉さんの指示通り、両親やドロシーに好かれるように振る舞った。最初は苦しかったけど、次第に慣れた。今では、噓を吐くのは得意だ。
こんな時、どうでも良い相手ならそんな事ないと適当に慰めれば良い。だけど、リリアンには嘘を吐きたくない。
「僕もそうだったよ。姉さんが頑張ってるのに、僕は何も出来なかった。姉さんが殴られてても、助ける事が出来なかった。けど、今は違う。姉さんのドレスを用意出来るし、姉さんを狙う貴族を潰す事だって出来る。リリアンも、今は何も出来ないかもしれない。けど、1年後にはいろんな事が出来るようになってるよ。僕も協力するから、頑張ろう」
「ポール……。そこは嘘でもそんな事ないって言うところでしょう?」
リリアンの目に涙が浮かんでいる。そんな姿も愛おしい。
「リリアンには噓を吐きたくないんだ」
「ポールの正直なところ、好きよ」
「僕は嘘吐きだよ」
「わたくしに嘘を吐いた事はないでしょう?」
「……それは」
確かに、リリアンには噓を吐いた事はない。言わずに誤魔化したりした事は何度もあるけど……嘘だけは言えなかった。
リリアンは、目を細めてにっこり笑った。
「良いわ、半年待ってなさい。お姉様がうちに来れば、もっと色々教えて貰える。半年後、成長したわたくしを見てなさいよ! 絶対に、ポールをギャフンと言わせてあげるわ!」
涙が引っ込んだリリアンが胸を張る。ああ、やっぱりリリアンは前向きで、とても可愛い。リリアンと話していると、胸が暖かくなる。
「じゃあ、僕もリリアンに負けないように頑張るよ」
「ポールが頑張ったら、わたくしが追いつけないじゃないの!」
そう言って騒ぐリリアンが可愛くて仕方ない。僕は欲張りで、狡い。2人の気持ちは分かってるのにどうしたら良いのか、全く分からない。
リリアンが僕とソフィアに抱きついてきた。リリアンの目は真っ赤で、前に会った時よりも華奢になっていた。きっと、心配であまりご飯が食べられなかったのだろう。
「ごめんね。心配かけて」
「心配なんかしてないわっ! でも、無事で良かった!」
「素直じゃないわねぇ」
「……うるさいわよ」
「あらぁ、下品な言葉遣いねぇ」
「失礼しました。ポール、ソフィア、おかえりなさいませ」
淑女の礼をするリリアンはとても美しい。堂々とした立ち振る舞いがイアン様にそっくりだ。そう言うと、リリアンはとても嬉しそうに笑った。その笑顔が可愛くて、思わず見惚れてしまうんだ。
「それじゃ、わたくしは帰るわ。また後でね、リリアン」
そう言って、ソフィアは帰って行った。リリアンは、じっと僕の顔を見ている。
「心配かけてごめんね。もう、大丈夫だから」
「……ソフィアが一緒なんだから、大丈夫だって分かってたわ」
寂しそうに微笑むリリアンの笑顔に、胸が締め付けられる。
「わたくしは、何も出来ないもの。ソフィアみたいに仕事は出来ないし、お姉様みたいに自分で考えて動く事も出来ない。ただ、オロオロして騒いでいただけよ」
そう言って、そっぽを向いたリリアン。僕もリリアンと同じ気持ちになった事がある。姉さんは凄くて、いつも僕を守ってくれた。だけど……そのせいで両親の攻撃は全て姉さんに向けられた。僕は何も出来なかった。姉さんの指示通り、両親やドロシーに好かれるように振る舞った。最初は苦しかったけど、次第に慣れた。今では、噓を吐くのは得意だ。
こんな時、どうでも良い相手ならそんな事ないと適当に慰めれば良い。だけど、リリアンには嘘を吐きたくない。
「僕もそうだったよ。姉さんが頑張ってるのに、僕は何も出来なかった。姉さんが殴られてても、助ける事が出来なかった。けど、今は違う。姉さんのドレスを用意出来るし、姉さんを狙う貴族を潰す事だって出来る。リリアンも、今は何も出来ないかもしれない。けど、1年後にはいろんな事が出来るようになってるよ。僕も協力するから、頑張ろう」
「ポール……。そこは嘘でもそんな事ないって言うところでしょう?」
リリアンの目に涙が浮かんでいる。そんな姿も愛おしい。
「リリアンには噓を吐きたくないんだ」
「ポールの正直なところ、好きよ」
「僕は嘘吐きだよ」
「わたくしに嘘を吐いた事はないでしょう?」
「……それは」
確かに、リリアンには噓を吐いた事はない。言わずに誤魔化したりした事は何度もあるけど……嘘だけは言えなかった。
リリアンは、目を細めてにっこり笑った。
「良いわ、半年待ってなさい。お姉様がうちに来れば、もっと色々教えて貰える。半年後、成長したわたくしを見てなさいよ! 絶対に、ポールをギャフンと言わせてあげるわ!」
涙が引っ込んだリリアンが胸を張る。ああ、やっぱりリリアンは前向きで、とても可愛い。リリアンと話していると、胸が暖かくなる。
「じゃあ、僕もリリアンに負けないように頑張るよ」
「ポールが頑張ったら、わたくしが追いつけないじゃないの!」
そう言って騒ぐリリアンが可愛くて仕方ない。僕は欲張りで、狡い。2人の気持ちは分かってるのにどうしたら良いのか、全く分からない。
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