政略結婚の指南書

編端みどり

文字の大きさ
25 / 35

25.策を巡らす辺境伯夫人

しおりを挟む
「ロバート様はお見合いを何度も断られているんですって。でも、真面目で誠実なお方らしいわ。キャダール王国の貴族女性は贅沢よ。わたくしなら、ロバート様に誠心誠意尽くすのに。でも、だからこそ付け入る隙があるわよね。今度ね、お父様に頼んでロバート様と会う機会を作って頂くの。うちは薔薇を輸出していてね。最近取引が増えたから会えるんじゃないかって」

その薔薇はわたくしの為にロバート様が集めて下さったものよ! フローレンス様の婚活に利用するためではないわっ!!!

落ち着いて、怒ってはダメ。わたくしの正体がバレたらリリアン様やレイモンド公爵にご迷惑がかかる。

ああでも! これだけは言わないとっ!

「残念ですが、ロバート様はご結婚なさったそうですわよ」

「そうなの?! 聞いてないわ!」

「ガルシア殿下から伺いましたので、間違いありませんわ。とても奥様を大事にしておられて、他の人が入り込む隙間はないそうですよ」

「第二夫人でも良いから嫁ぎたいのに……!」

「ロバート様は正妻一筋だそうですわ」

だから諦めて! 諦めてよっ!

「正妻を大事にしてるなんてやっぱり他国の男性が良いわ。なんとかならないかしら。ガルシア殿下もマチルダ王女をとても大事にしておられるし」

探ろうとする目にゾクリとする。フローレンス様は知ってるんだ。ガルシア殿下と、マチルダ王女が婚約していることを。

「そうなんですか? なにぶん寝たきりだったもので世情に疎くて……」

イラっとしたけど、悟られるわけにいかない。
ロバート様から頂いたブレスレットに触れると不思議と落ち着いた。そうだ! これは利用できるかもしれない。

「なら今の話は忘れて下さいな。わたくしも確証はないの。なんだか夜会で親しそうにしている気がしたものだから。いつも王女様は他国に嫁いでしまわれるし。もしそうなら羨ましいなと思ってしまったのよ。はぁー……わたくしはやっぱり徳がないのかしら」

「徳、ですか」

「そうよ。あの子達も、あんな男に引っかかっちゃって徳がないんだわ」

徳、徳、徳って……。
イライラしてきたわ。
落ち着いて、国が違えば考えも変わる。

彼女の積み上げた人生を、否定なんてできない。でも、理解する気はないわ。目的を見失ってはダメ。

「フローレンス様は徳がおありになりますわ。わたくし実は……キャダール王国に嫁ぐかもしれませんの。ロバート様ではありませんわ。まだお名前はお伝えできないのですけど、わたくしは身体が弱いので遠くに行くのは駄目だと父が反対していて……」

「その話、詳しく聞かせて頂けませんか?」

「喜んで。父と話をして、使いを送りますわ」

聖帝国は国境の警備が厳しい。入国した時のようにこっそり森を移動して味方を連れて帰るつもりだったけど、堂々と国を出られるならその方が良い。

公爵令嬢の見合いなら、外交として王や王妃が付き添っても不自然ではない。味方が誰かまだ分からない。でも、なんとなく予想はできている。あの方を密かに連れ出すのは難しい。それなら、領地にご招待する理由を作れば良い。

急いで王太子殿下にフローレンス様と合いそうな方を探して頂きましょう。フローレンス様はロバート様じゃなくても構わない。誠実で妻一筋な貴族は我が国にたくさんいる。

でもわたくしは、ロバート様じゃなきゃ駄目なの。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

自信家CEOは花嫁を略奪する

朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」 そのはずだったのに、 そう言ったはずなのに―― 私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。 それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ? だったら、なぜ? お願いだからもうかまわないで―― 松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。 だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。 璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。 そしてその期間が来てしまった。 半年後、親が決めた相手と結婚する。 退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――

どうぞお好きになさってください

はなまる
恋愛
 ミュリアンナ・ベネットは20歳。母は隣国のフューデン辺境伯の娘でミュリアンナは私生児。母は再婚してシガレス国のベネット辺境伯に嫁いだ。  兄がふたりいてとてもかわいがってくれた。そのベネット辺境伯の窮地を救うための婚約、結婚だった。相手はアッシュ・レーヴェン。女遊びの激しい男だった。レーヴェン公爵は結婚相手のいない息子の相手にミュリアンナを選んだのだ。  結婚生活は2年目で最悪。でも、白い結婚の約束は取り付けたし、まだ令息なので大した仕事もない。1年目は社交もしたが2年目からは年の半分はベネット辺境伯領に帰っていた。  だが王女リベラが国に帰って来て夫アッシュの状況は変わって行くことに。  そんな時ミュリアンナはルカが好きだと再認識するが過去に取り返しのつかない失態をしている事を思い出して。  なのにやたらに兄の友人であるルカ・マクファーレン公爵令息が自分に構って来て。  どうして?  個人の勝手な創作の世界です。誤字脱字あると思います、お見苦しい点もありますがどうぞご理解お願いします。必ず最終話まで書きますので最期までよろしくお願いします。

政略結婚だけど溺愛されてます

紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。 結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。 ソフィアは彼を愛しているのに…。 夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。 だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?! 不器用夫婦のすれ違いストーリーです。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

あなたのためなら

天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。 その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。 アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。 しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。 理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。 全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

処理中です...