最弱ギルドの挑戦状~元最強の冒険者、落ちこぼれ支部を立て直す~

拙糸

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第三章 冒険者ギルドの宿命 編

21 禍根②

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「酒場で俺がノブルム帝とどんな会話をしたかは、覚えているだろう?」
「ええ、勿論……。」

三人とも、何とも言い難い表情をする。……うん、しょうがない。
だって、皇帝の目の前で国家批判するなんて、自殺行為以外の何ものでもないもの。

「俺はあの時、何故ノブルム帝があの酒場に来たのか、ずっと考えていたんだ。」
「……確かに、いくら皇帝が一般人と見間違えられるくらいの姿勢になって市井に紛れていたとしても、フーガさんと同じ酒場に入って偶然会うなんて、まさかと思いますよね。」

空っぽになったカップを片づけながら、スバルがそう言う。その言葉に、フラットが反応する。

「偶然にしては、できすぎている……ですか。もしかして、支部長のことを追っかけていたんですかね。」
「ああ、俺も最初は疑ったさ。だが、よく考えてみれば、いくら早々に冒険者を取り込もうとしていたとしても、当時の俺を、つけ狙う理由がないからな。」

ガシャーン。カップのダイナミックアタック音がした。スバルもミヨもフラットも、俺の方を呆気に取られた顔をして見ていた。

「ど、どうしたお前ら。」
「……支部長って、ガウル帝国の関係者じゃないんですか…?」
「ミヨ、俺はいつそんなことを言った?」
「前に仰っていたじゃないですか! コンキス副支部長と同級生で、共に帝国騎士学校を卒業したって……。」

スバルがミヨをそうフォローする。…ああ、確かにそう言ったっけな。
………だがな。

「誰が、を卒業したと言った?」
「じ、じゃあ支部長って………もしかして……!?」

フラットが、驚きに満ちた表情で言う。ありえないと思いつつも、どこか確信した心持ちで。
俺は一呼吸置き、三人に真実を告げる。

「俺はな、ツィレンバルの出なんだよ。」
「「「え…………ええええええええええええええええ!!!!????」」」

驚嘆の叫びは、屋根を突き抜けていった。

「おい……そんなに驚くか?」
「だ、誰だって驚きますよっ!! ガウル帝国とベッタベタの支部長が、まさか対立しているツィレンバル帝国の人だなんて、誰が思います!?」
「べ、ベッタベタって……。」

スバルが興奮気味に言う。
たしかに、そう思われても仕方がない節はいくつかある。例えば……

俺がガウル帝国に本部を置く、冒険者ギルドの幹部であること。
同じく、ガウル帝国に本部を置く、アテレーゼ商会の本部長が仲間だったこと。
ガウル帝国のノブルム帝に、資金面で支援を受けたこと。
冒険者時代、ウィル大陸の北部、つまりガウル帝国側中心に活動していたこと。

いくつかどころではない。挙げるとキリがない。

「でも、それならば何故ノブルム帝は、わざわざ対立している国出身の冒険者を支援したのでしょうか。危ない賭けだと、分かっているのに。」

ミヨが疑問をふと口にする。

「わざわざ危ない橋を渡ることになる…か。だがな、それこそがノブルム帝の真の狙いだったんだ。」
「真の……狙い?」

スバルは、生唾をゴクリと飲み込む。

「お前たちは、俺たち冒険者ギルド職員を含めた、全国冒険者協会に関わる人たちが守らなければならない義務を覚えているか?」
「えっと確か………。」

フラットが、普段勉強に使っている教本を出す。『冒険者規則』。これは、冒険者が守らなければならない義務や、活動時におけるルールが示されている。

「第五条義務
上記のほかにも、様々な義務が冒険者には課せられる。
・各活動する国の法律を必ず遵守する。
・冒険者としての依頼を、1年に一回は必ず受諾する必要がある。
・依頼を受諾したら、必ず最後までやり遂げる。
(失敗した場合は、違約金が課せられる)
・身分を偽らない。
・犯罪行為を行わない。
…ですよね?」
「そうだな。だが、それらの中には含まれていないな……。俺が言いたいことが何だか、分かるか?」
「……?」

フラットは冒険者だった頃、アスタル王国でしか活動していなかった。だから、知らないのも無理はない。各国で活動する上で、何よりもまず冒険者が絶対に守らなければならない、ある義務を。

「『全国冒険者協会に関わる全ての人々は、例え関係する各国の王族であったとしても、各国の内政・外交・戦争等に関わる行為を禁止する。』」
「内政不干渉の義務、ですね。」
「ああ、そうだ。『ただし、各国からの特命依頼は除く』、を入れると百点満点だな。」

ミヨとスバルが、得意げにする。
そう、内政不干渉の義務。これこそが、ノブルム帝の用意した、危ない橋を安全に渡るための、命綱だ。
ちなみに、この義務を守ることを怠ると、冒険者証が永久に剥奪され、職員は懲戒免職となる。

「これの効力によって、ノブルム帝は、交渉相手である俺が裏切って、ツィレンバル帝国に与することを出来なくさせた。これなら、俺たちと安全に交渉できるだろう?」
「成程……でも、そこまでしてまで、冒険者を支援するなんて、ノブルム帝は熱意がありますね…。」

へえ…と、スバルが感心する。だが、お生憎様、この内政不干渉の義務を作ったのは別の人間だ。

「いや……実は、この義務を制定したのは、ノブルム帝じゃない。…………俺なんだ。」
「し、支部長がですか?」
「ああ。ヤツ…ノブルム帝に、しつこくせがまれてな……。」

再び、酒場での出会いを回想する。…頭を抱えながら。
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