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式の三ヶ月前、ランドール伯爵家に不幸があった。
デイジーは、通夜でレイモンドに会ったが、彼は酷く思い詰めた様子で──彼女は、声をかけることが出来なかった。
それから、一ヶ月。
ランドール家に不幸があったので婚約期間は伸びるかと思われたが、通常通り来月、式をあげることになった。
若くしてランドールの名を継いだレイモンドを支援するため、デイジーの父、ディズリー伯爵が早く縁戚関係になった方がいいと考えためだ。
レイモンドはそれまで以上に忙しくなり──そして、ぱたりと彼は夜会にも出席することはなくなった。
さすがに王族主催の夜会や、出なければ角が出るものは参加するが、それ以外はめっきりだ。
デイジーには、一通のメッセージカードが届いた。
『父のことで迷惑をかけてすまない。しばらく、きみに会えない』
たった、二言のメッセージカード。
ランドール伯爵が亡くなってから、レイモンドはピリピリとしているようにデイジーには感じた。
それはレイモンドの弟のルイスも同様のようで、父の葬式後、彼は全くレイモンドと会っていないという。
ルイスはランドールの家を既に出ており、騎士職に就いている。
今は、騎士寮で寝泊まりをしているはずだ。
デイジーは、もどかしかった。
レイモンドが大変な状況であるというのに、自分は何も出来ない。
何か出来るかと考えたが、レイモンドが何に悩んでいるかすら、彼女には分からないのだ。
下手に干渉するのは、迷惑だろう。
(今までのツケが回ってきたんだわ……)
今まで、彼との曖昧な距離に甘んじていたから。
レイモンドと、ちゃんと向き合わなかったから。
だから、今になってデイジーは、どうすればいいか分からなくなっている。
(淑女教育なんかより……)
紳士に好まれる振る舞いや、スタイルを身につけるよりも、彼女にはしなければならないことがあったはずだ。
デイジーは、多くの紳士好かれたいわけではなく──たったひとり。
レイモンドに可愛いと、そう思って欲しいだけだったのに。
ピリピリとしているレイモンドは、ランドールの名を継いでから本当に忙しそうで、邸への帰宅も遅い時間らしい。
らしい、というのは彼女の母からの情報だった。
デイジーはもう、この一ヶ月。
彼とまともに会っていなかった。
式の三日前になって──彼女は急に思い立った。
それまでウジウジと永遠に悩んでいたのだが、ここまできたらもう引き返せない。
(式を──婚約をとりやめるなら、もう、今しかない)
式が始まってしまえば。
結婚してしまえば、離縁は難しくなる。
デイジーは、考えたのだ。
本当に、自分はレイモンドを幸せにできるのだろうか、と。
彼女は、レイモンドが大切だ。
彼を愛している。
だからこそ、彼には幸せになって欲しいと……この一ヶ月、考えた末に出した答えだった。
(レイモンドと、話し合おう)
(本当に、本当に、私はあなたのことが好きなの)
大好きなの。
あなたと出会ってから、毎日がきらきらとして見えたの。
私、生まれてきてよかったって……あなたと婚約が決まった日は、天にも登るような気持ちだった。
でも──もし、レイモンドの気持ちを……彼の心を無視して、それを犠牲にした上での私の幸せなら。
デイジーは、それを手放す覚悟を決めなければならない。
決断が、遅すぎたほどだ。
だけど、今だからこそ、彼女は心を決めた。
刺々しい雰囲気を纏う彼に寄り添うこともできない。
デイジーだって、前伯爵にはお世話になったというのに一緒にその死を悼むことすらできなかったのだ。
何のための、婚約者だと言うのだろう。
そして──運命の日が訪れた。
デイジーは、通夜でレイモンドに会ったが、彼は酷く思い詰めた様子で──彼女は、声をかけることが出来なかった。
それから、一ヶ月。
ランドール家に不幸があったので婚約期間は伸びるかと思われたが、通常通り来月、式をあげることになった。
若くしてランドールの名を継いだレイモンドを支援するため、デイジーの父、ディズリー伯爵が早く縁戚関係になった方がいいと考えためだ。
レイモンドはそれまで以上に忙しくなり──そして、ぱたりと彼は夜会にも出席することはなくなった。
さすがに王族主催の夜会や、出なければ角が出るものは参加するが、それ以外はめっきりだ。
デイジーには、一通のメッセージカードが届いた。
『父のことで迷惑をかけてすまない。しばらく、きみに会えない』
たった、二言のメッセージカード。
ランドール伯爵が亡くなってから、レイモンドはピリピリとしているようにデイジーには感じた。
それはレイモンドの弟のルイスも同様のようで、父の葬式後、彼は全くレイモンドと会っていないという。
ルイスはランドールの家を既に出ており、騎士職に就いている。
今は、騎士寮で寝泊まりをしているはずだ。
デイジーは、もどかしかった。
レイモンドが大変な状況であるというのに、自分は何も出来ない。
何か出来るかと考えたが、レイモンドが何に悩んでいるかすら、彼女には分からないのだ。
下手に干渉するのは、迷惑だろう。
(今までのツケが回ってきたんだわ……)
今まで、彼との曖昧な距離に甘んじていたから。
レイモンドと、ちゃんと向き合わなかったから。
だから、今になってデイジーは、どうすればいいか分からなくなっている。
(淑女教育なんかより……)
紳士に好まれる振る舞いや、スタイルを身につけるよりも、彼女にはしなければならないことがあったはずだ。
デイジーは、多くの紳士好かれたいわけではなく──たったひとり。
レイモンドに可愛いと、そう思って欲しいだけだったのに。
ピリピリとしているレイモンドは、ランドールの名を継いでから本当に忙しそうで、邸への帰宅も遅い時間らしい。
らしい、というのは彼女の母からの情報だった。
デイジーはもう、この一ヶ月。
彼とまともに会っていなかった。
式の三日前になって──彼女は急に思い立った。
それまでウジウジと永遠に悩んでいたのだが、ここまできたらもう引き返せない。
(式を──婚約をとりやめるなら、もう、今しかない)
式が始まってしまえば。
結婚してしまえば、離縁は難しくなる。
デイジーは、考えたのだ。
本当に、自分はレイモンドを幸せにできるのだろうか、と。
彼女は、レイモンドが大切だ。
彼を愛している。
だからこそ、彼には幸せになって欲しいと……この一ヶ月、考えた末に出した答えだった。
(レイモンドと、話し合おう)
(本当に、本当に、私はあなたのことが好きなの)
大好きなの。
あなたと出会ってから、毎日がきらきらとして見えたの。
私、生まれてきてよかったって……あなたと婚約が決まった日は、天にも登るような気持ちだった。
でも──もし、レイモンドの気持ちを……彼の心を無視して、それを犠牲にした上での私の幸せなら。
デイジーは、それを手放す覚悟を決めなければならない。
決断が、遅すぎたほどだ。
だけど、今だからこそ、彼女は心を決めた。
刺々しい雰囲気を纏う彼に寄り添うこともできない。
デイジーだって、前伯爵にはお世話になったというのに一緒にその死を悼むことすらできなかったのだ。
何のための、婚約者だと言うのだろう。
そして──運命の日が訪れた。
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