〈完結〉デイジー・ディズリーは信じてる。

ごろごろみかん。

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ある夜会で、デイジーは友人に挨拶をするためにレイモンドの傍を離れた。
それは僅かな間だったが、彼女が戻った時、レイモンドの隣には見知らぬ女性がいた。

デイジーに気が付くと、レイモンドがふわりと笑う。彼女を、安心させるように。

友人だ、とレイモンドは女性を紹介した。
だけどただの友人でないことは──彼女にもわかった。
きっと、過去の恋人だ。

直感的にそう思ったデイジーは、彼女を睨みつけた。
あまりに短絡的すぎる行動だったが、さすがに数個、あるいは十個ほど年上の女性は、デイジーなど相手にしなかった。
ふふ、と彼女は微笑み、デイジーの嫉妬等あっさり流す。

若いのね、とそう言って。

彼女は悔しくて堪らなかった。
あと数年すれば、デイジーは社交界一の美女になるはずだ。
今はまだ、幼さが抜けきらず、美少女……という枠組みにいるが。

悔しいことに、レイモンドと並んで立つ彼女は──年齢の釣り合いが取れているからか。色っぽい美貌を兼ね揃えているからか。

(とても……お似合いだった)

デイジーはそれから、ますます淑女教育に熱を入れるようになった。
それどころか、異性から魅力的だと思われる女性像を参考にして、あちこちに足を運んだ。

オペラ、画廊、詩集会、夜会、演奏会……
友人に頼み込んで、いかがわしいと言われる仮面舞踏会にすら参加するようになった。

明らかに、彼女は迷走していた。
それでも、レイモンドは何も言わない。

デイジーには、レイモンドに愛されている自信がなかった。

なにせ、この婚約はデイジーが強く望んで結ばれたもの。
十八を迎えた今だからわかる。
レイモンドはきっと、もっと火遊び・・・を楽しみたかったのだろう。
それなのに、七個も下の少女のワガママに付き合わされて、付き合いを考え直さなければならなくなった。
好かれているはずがない。

デイジーは悲しくて、悲しくて──どうすれば、レイモンドに愛されるかがわからなくて。

十八を迎えたデイジー・ディズリーは、理想の令嬢、と言われるほどになった。
何より、やはり際立つのは彼女の美貌。
そして、目線ひとつ、仕草ひとつ、彼女の動きは洗練されており、他者を惹き付ける。

美しい笑みを浮かべて話す彼女は、社交界の人々を魅了にしたし、虜にした。

だけど、レイモンドだけは、デイジーへの態度を変えなかった。

「ねえ、レイモンド。今日の夜会なのだけど」

ある日、デイジーは偶然を装って城まで行き、レイモンドに接触した。

レイモンドの仕事は、第二王子の補佐。
第二王子グラパーとは、幼い頃からの友人らしく、レイモンドは彼に忠誠を誓っている。

タタタ、と可愛らしい足音と仕草を意識して、デイジーは彼に近寄った。

デイジーは、彼が好きだ。
デイジーは、レイモンドを愛している。

一目見ただけで、一瞬、その姿を視界に捉えることが出来ただけで──彼女は、とても嬉しくなる。心が、舞い上がってしまうのだ。

(大好き。今日も、好きよ)

でもきっと、それはデイジーだけ。
この婚約は、いつまでたっても、いつまでも。
デイジーの片思いなのだ。


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