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いち
しおりを挟む「デイジー、一緒に死のうか」
そう言われた時──デイジーは、自身の誤りを知った。
(私……本当は)
本当は、愛されていた。
私のことなど愛していないと思った、この、冷たく見える婚約者に──。
☆
デイジー・ディズリーは、初めての恋に浮かれる貴族の令嬢だ。
彼女の初恋の相手は、ランドール伯爵家の嫡男、レイモンド・ランドール。
レイモンドは、デイジーの七個上だった。
一目惚れをしたのは、デイジーの方。
彼女は、母に連れられて行ったティーパーティーで、一目彼を見て──心を奪われた。
(きらきら……お日様、みたい)
豊かな黄金の髪に、穏やかな微笑みを浮かべる彼は、デイジーがもう少し大人であれば『遊び人』と認識するであろう、軟派な男性だった。
彼の隣には、いつも女性がいる。
その時も、レイモンドの隣には美しく着飾った貴婦人がいたが……デイジーの眼中には入らなかった。
彼女はただただ、衝撃的な一目惚れに心を奪われ──初恋をしたのだ。
あれから、八年。
十歳の時にレイモンドに出会ったデイジーは、今年で十八歳になった。
あと半年すれば、レイモンドと結婚する日だ。
デイジーは、母親にレイモンドとの婚約を強請った。
幸運なことに、デイジーの母、ディズリー伯爵夫人とランドール伯爵夫人は昔から付き合いがあり、その縁でトントン拍子に婚約は決まった。
その時の、デイジーの気持ちと言ったら。
彼女は、飛び上がらんばかりに驚いた。
なにせ、初恋だ。
少し年上の、大人びた彼が、デイジーの夫になる──。
それはあまりにも素晴らしくて、デイジーはそれから毎日ソワソワして日々を過ごした。
今まで見の入らなかった淑女教育だって、真剣に取り組むようになったし、侍女からレイモンドの好みを聞いては、理想の女性に近づくよう努力してきた。
レイモンドは、恋多き男だった。
デイジーの前ではさすがに隠すが、いつもほかの女性といるらしい。
彼女と婚約してからは、表立って女性を同伴させるような真似はなくなったが、それでも噂は絶えなかった。
最初はただ、レイモンドとの婚約が嬉しかったデイジーだが──やがて、強く打ちのめされることになる。
十五歳を迎え、デイジーは社交界デビューをした。
蝶よ花よ、と大事に大事に育てられたデイジーは、伯爵家の箱入り娘だ。
美しいエメラルド色の髪に、薄青の瞳。
その瞳は、まるで夜明けを知らせる群青色によく似ていて、彼女の美貌は社交界で有名だった。
しかし、まだデイジーは幼い。
十五歳といえば、女性の仲間入りをしたばかりで……とても、匂い立つような色香を持つ女性に、デイジーは太刀打ちできなかった。
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