ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子

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108話 マルクス伯爵家皆様へ

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 *****


 マルクス伯爵邸(ボロ屋)ーーー。


「……おかしい……何で、ルエルから何の返信も来ないんだろう」

 毎日のように、カインはルエルに、愛を綴った手紙を送り続けた。
 遠回りをしてしまったけど、僕はやっと、本当の愛に気付く事が出来た。僕は、あんな我儘なエレノアなんかじゃなくて、ルエルが好きなんだ。

 マルクス伯爵家の財力が低下し、昔のように、使用人が一人も雇えなくなって、家事も全て、自分達でしなくてはいけなくなった。
 当然、家事をするのは、嫁であるエレノアの役目なのに、エレノアはそれを拒否した。

『何で私がそんな事しなきゃならないの?私に家事を強要するなら、子供を連れて出て行くわ!言っておくけど、私はいつでも、子供を連れて出て行ってもいいんだからね?』

 マルクス伯爵家の大切な跡継ぎである子供を盗られるのは、母様も父様も望んで無い。だから、エレノアの我儘に逆らえない。こんなにエレノアが我儘な子だったなんてーーーまんまと騙されたよ。
 それに、期待していたクリプト伯爵からの援助も一切無い。
 エレノアに比べてルエルは、文句一つ言わず仕事して、家事もして、婚家である僕達に尽くしていた。あれで子供が出来ていたら、僕のお嫁さんとして完璧だったのにーーー。

 今更、過ぎたことを言っても仕方無い。
 子供は、エレノアとの間に出来た。だから、エレノアとの子供を、僕とルエルで育てれば、何の問題も無いんだ。

 僕が、ルエルを選ぶと言ったら、ルエルはきっと、すぐにでも僕の元に戻ってくるーーハズなんだ。なのに、ルエルからは一向に返事が来ない。

「まさか……ルーフェス様が、ルエルが読む前に捨てているのか?」

 有り得る!きっと、ルエルを僕に盗られるのが怖くなって、手紙をルエルに渡さないようにしてるんだ!ルーフェス様は、なんて卑怯な奴なんだ!

「カイン様ぁー」
「!」

 呼ばれて振り向くと、そこには、一人、上質な服を着たエレノアの姿があった。

「エレノア……どうしたんだい?その服?」

 僕達が持っていた上質な衣類は、全て、魔物襲撃のさいに、瓦礫に埋もれ、ボロボロになった。お金が無くて、最低限の物を揃えることしか出来ない。

「お母様に持って来て頂いたの。私、肌が弱いから、上質な物じゃないと合わないんです」
「ーーそっか、そうだよね。エレノアには、煌びやかな服が良く似合うよ」
「ありがとうございますカイン様♡」
「それで?何か用?」
「ああ。私、今日は実家に泊まりに行くので、留守にしますね。って伝えたくて♡私達の子供の世話、よろしくお願いしまーす」
「……ああ、分かった。行ってらっしゃい、楽しんできてね」
「はーい」

 出掛けるエレノアの後ろ姿を、笑顔で見送る。

 子供の世話なんて、普段から一切しないのに、よく言うよ。
 エレノアは戻って来てからも、度々、実家に戻る。
 そうやって実家に戻るなら、こっちに戻ってこずに、子供を置いて、離婚してくれれば良かったのにーーー何故か、エレノアは戻ってきた。

 僕は何も悪くないのに、僕は本当に可哀想だ。
 僕はエレノアに口説かれて関係を持っただけ、僕から声を掛けたワケじゃないし、僕は悪くない。そもそも、ルエルがちゃんと子供を産んでくれていたら、こんな事にはならなかったんだ。僕は悪くない。
 それなのに、皆が、僕を責めるーー僕のそばから離れていく。

「……やっぱり、僕にはルエルが必要なんだ」

 ルエルが僕のそばからいなくなってから、全てがおかしくなった。だから、早くルエルに戻って来て貰わないとーーーもしかしたら、父様と母様は、マルクス伯爵家がこんなことになった原因として、ルエルを責めるかもしれないけど、僕は優しいから、ルエルを責めないよ。

 今はルーフェス様に妨害されて、手紙が届いていないんだろうけど、僕の気持ちがちゃんと伝われば、ルエルは泣いて喜んで、僕の元に戻ってくるに違いない。
 ルエルが戻ってきたら、ルーフェス様に今までルエルを貸してあげた御礼として、エレノアを追い出してもらおう。
 ルーフェス公爵家の力を使えば、子供の親権をエレノアから奪うことなんて容易いはずだ。
 それで、全てが元通りになる。

「ルーフェス様みたいに冷たい人と結婚していても、ルエルが幸せなはずが無い。ルエルの幸せは、ここにーーー僕と一緒にいることなんだからね」

 今は領土も取り上げられたし、家もボロボロだし、使用人も一人もいないし、事業も失敗して仕事も無いし、お金も無い。まるで、貧乏だった昔のマルクス伯爵家に戻ったみたいだ。
 でも、ルエルは昔のーーーそんな僕でも、好きになってくれたんだ。今も昔も、ルエルは僕が好きなんだ。

 さて、どうやってルエルに、僕の気持ちを伝えようかな?

「カイン!カイン!!」

 声の通りの良い薄くてボロい壁の向こうから、父様と母様が僕を呼ぶ声が聞こえた。

「何?父様、母様」
「ルーフェス公爵家から招待状だ……!」

 父様の顔色は真っ青だったけど、僕は反対に、笑顔を浮かべた。
 ルーフェス公爵家は、滅多なことでは、パーティもお茶会も開かない。そのルーフェス公爵家から、招待状が届いたんだ!
 きっと、ルエルだ!ルエルが、僕との再婚のために、場を設けてくれたんだ!

 もしかしたら、その場で、今までの僕の汚名を晴らして、ルーフェス様に離婚を叩き付ける気なのかも知れない!
 僕にルエルを奪われて、取り乱し悲しむルーフェス様の顔が見られるなんて、楽しみだな。

 僕はルーフェス公爵家で開かれる催しを、ワクワクした気持ちで待った。

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