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109話 妊娠報告
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「まぁまぁまぁまぁ、ルエルちゃん、メト君、おめでとうー」
後日、悪阻が落ち着いた頃、私とメトは、妊娠の報告をしに、フィーリン邸に足を運んだ。
酷い人は、出産まで悪阻が続く人もいるみたいだけど、私は比較的、すぐに落ち着いた。今は普通に食事も取れるし、元気いっぱい。
「ありがとうございます、フィーリン様」
「まぁまぁまぁまぁ、メト君もついに父親になるのねー感慨深いわー」
血の繋がった本当の姉のように、子供が出来たことを喜ぶフィーリン様。
「出産祝いはどうしようかしらーお洋服?ベビーベッド?ぬいぐるみ?歯固め?子供用のタンス?あ、可愛い帽子とかも素敵ねー」
……お願いですので、それら全てを贈るのだけは止めて下さいね。お気持ちだけで十分です。
「落ち着けーーーそれよりも、義姉さんに一つ確認して欲しいことがある」
「まぁまぁ。何かしらー?」
こんなにおっとりしているフィーリン様ですが、実はルーフェス公爵家専用の情報屋。
「マルクス夫人ーーエレノアの男関係を徹底的に探って欲しい」
私は、妊娠が出来る体だった。
それなのに、カインとの間に、子供が出来なかった。タイミングや相性、ストレスも関係すると言うけどーーーもしかしたら他にも、決定的に、何か違う原因があるかもしれない。
「了解しましたーエレノア様が産んだ子供が、カイン様との子供じゃなかったらーカイン様に問題があるかもしれませんものねー」
ーーーそう、あれだけ散々、私を子供の出来ないハズレ嫁扱いしておいて、本当の原因が、カインにあったらーーーそれこそ、滑稽よね。
周りの意見に流されて、自分が子供が出来ない体だと思い込んでいた自分自身も、嫌になるけど。
「エレノア様ってばーカイン様の元に帰った後も、度々出掛けてはー男の所に行ってるみたいよー。あの調子だと、昔っから男関係は派手だったんじゃないかしらー」
実家に帰る。は、男と遊ぶための言い訳。
実際は、お父様の怒りを買ったエレノアは実家に帰れず、自分がいない間も家に入れるな!と、お父様は強くお母様に言い聞かせたらしい。
「ふふ。でもこれで、あの人達がルエルちゃんをハズレ嫁なんて、完全に言えなくなったわねー」
子供が出来ない私を見下し続けていた皆様。例えこのまま子供が出来なくても、貴女達に負けているとは思っていなかったけどーーー唯一、私に勝ち誇っていた部分も無くなるのですから、残念ですね。
「念の為、ルエルが妊娠した事は関係者以外公表していない。分かっていると思うけど、この件は時期が来るまでは他言無用だ」
「了承致しました」
丁寧に頭を下げるフィーリン様。
普段、そんな感じはしないけど、フィーリン様もメトにお仕えしている立場ですものね。
「ルエルちゃん、マルクス伯爵家とクリプト伯爵家、双方に招待状を送ったのでしょう?」
「はい」
悪阻も落ち着いたし、そろそろ、先延ばしにしてしまった、エレノアへの制裁を開始しないとね。
カインと離婚さえしなければ、上手く逃げられると思っているみたいですけど、残念。私は簡単に逃がしてあげるほど、優しく無いんですよ。徹底的に追い詰めて、ちゃんと地獄に落としてあげないとね。
「もし、私達の推測通り、エレノアの子供がカインの子供では無かったら、それはそれは、素敵な復讐が出来るんですけどね」
全員まとめて、地獄に叩き落とせる。
「ルエルちゃんが気持ち良く出産を迎えられるように、私も精一杯、頑張るわー」
「よろしくお願いします、フィーリン様ーーあ、と……その……お、お義姉様……」
緊張気味に、フィーリン様を義姉と呼ぶ。
今までは、契約結婚で、どこか後ろめたい気持ちがあって、義姉と呼べなかったけどーーーメトと本当の夫婦になった今は、義姉と呼べる気がした。
私には、(あんな)妹はいたけど、義姉はいなかったから、正真正銘、初めて口にする言葉。
結婚して1年以上経った今更、口にするので、フィーリン様の反応も怖くて、何だかドギマギしてしまう。
「……ふふ。やっと、そう呼んでくれたのねー」
フィーリン様はとても嬉しそうに微笑んでくれて、私まで、とても嬉しくなった。
「可愛い義妹が出来て、何より嬉しいわー。これからも、仲良くしてねー」
「…はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
姉妹で仲良く出来るなんて、私には夢のように、嬉しかった。
「……あと、これも伝えておくがーーールーフェス公爵の爵位はーーールエルとも相談の上、このまま、シャインに譲ろうと考えている」
そもそも、メトが自分の子供を望まなかったのは、シャインに爵位を譲るに当たって、跡継ぎ問題が勃発しないためだった。私は、自分の子供に爵位を無理に継いで欲しいとは思わないし、シャインが爵位を継ぐことに反対する気は無い。
だからこのまま、当初の予定通りに、ルーフェス公爵の座は、シャインに譲る。それに、賛同したーーーのだけれどーーー
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