88 / 157
陽のあたる場所
4
しおりを挟むのぼせそうなほど顔が熱い。何だかまずいことになりそうだから、話を無理やり変えた。
視線を戻すと先輩はあからさまに頬を染めて照れていた。ムカつくけど可愛い。
「ホテルにいた、あの性欲爆発してるサラリーマン? それとも……」
「誰でもいいだろ。お前は俺のことより自分のことを考えろ。……それに」
先輩はなにか言いかけて、また口を閉ざす。そして苛々した顔で俺の腹をどついてきた。けっこう痛かった。
「お前がそんな弱音吐いてウジウジしてると気持ち悪いっていうか、ムカつくんだよ! いつもみたいに堂々と、クソ生意気にかまえてろ。……分かったらさっさと柊の家に行くぞ」
力強い視線を受け、目を離せなかった。
良くも悪くも、こんなにも真正面から見てくれた人は初めてかもしれない。
「……っ」
先輩の有無を言わさぬ態度に、その場は従うしかなかった。
くそ、先輩のくせに……。
痛む前頭部をおさえながら、結局柊先輩の家に行くことになった。
彼の家は学校の最寄り駅から六つ目、住宅街の中にある、まだ新しそうな一軒家だった。
「幼なじみってことは、一架先輩もこの近くなの?」
「まぁな。じゃ、呼んでみるか」
一架先輩は躊躇いなくインターホンを押した。怖々待っていると、少し掠れた声が返ってきた。開けるからちょっと待ってて、という、柊先輩の声。
一架先輩がそれに返事したけど、声が聞こええなくなるとまた猛烈に不安になる。
「う、やっぱり俺帰ろうかな」
「お前な……冗談も休み休み言えよ」
「だって……」
どんな顔して柊先輩に会えばいいのか、未だに分からない。
不安と恐怖で胃痛がする。確かに、俺はいつからこんな弱くなったんだか。……思い出せない。
以前なら誰に嫌われたって構わないと思っていた。だから痛くも痒くもなかったのに。
後ろへ一歩下がって、足元のコンクリートに視線を落とす。
「柚。お前、柊のこと好きだろ」
「はっ!?」
一架先輩の質問に、今日一番の大声を出してしまった。
だって、突然過ぎだ。話がぶっ飛んでる。
「は、は。そんなわけ……よりによって、す、好きとか。俺はただ、当たり障りない関係でいたいだけで」
「柊に嫌われたくないんだろ。それってつまり、あいつのことが好きだからだろ」
先輩の視線が突き刺さる。
何だこれ。心を掻き乱される。
その眼から、言葉から逃げる気はなかったけど、とにかく反論しなきゃと思って口を開いた。
「別に柊先輩のことは好きじゃない!!」
そう叫んだと同時に開くドア。
二人一斉に振り返ると、そこには目を丸くした柊先輩が立っていた。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる