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第70話 第四部エピローグ「ナツメ・レポート②」
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「そう言えば、私は以前から貴方にお聞きしたかったことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「なんだい?」
「神の子と呼ばれた貴方の両の瞳には、今のこの世界はどのように映っているのでしょうか?」
「私は生まれてくるべきではなかった……
偽史に貶められ、負の感情に支配されていた頃はそう思っていたよ。
私が死んだ後、私の教えは、君が探求する真実の歴史と同じように、時の権力者によって歪められ続けてきたわけだからね」
「本来なら貴方のお母様は聖母ではなかったことや、免罪符の存在などですね」
「そうだね。他にもたくさんあるけれど。
私の母だけでなく、すべての母親は、そしてすべての女性は偉大だ。
そんなことは教えなくてもわかるだろうと私は思っていたのだが……
私の死後、私の教えは当時の世相に合わせて、男尊女卑のものにされてしまった。
そのせいで女性信者が増えず、女性信者を増やすためだけに母は聖母にまつりあげられたに過ぎない。
免罪符もそうだ。金を払えば罪が許されるなど、あまりに馬鹿げている。
金を払えばアダムもイブも許され、楽園に帰れたことになってしまう。
父は大洪水など起こさなくても良かったことになる。
バベルの塔が父の怒りをかったあとも、金を払えば言語を分かたれずにすんだことになってしまう。
私は、汝の隣人を愛せ、と教えた。
隣人とは、同じ教えを信じる者だけではない。世界中のすべての人々だ。
私の教えを信じる者が女性を蔑視し、肌の色で差別をし、あまつさえ奴隷にするなど、私は何のために生まれてきたのかと思ったものだ。
同じ神を信じながらも、その教えが違うというだけで邪教徒とし、憎しみ合い、戦争を続け、テロの報復や石油の利権ほしさに戦争を仕掛ける。
それを、神の名の元にと、聖戦だとのたまう。
私は国家反逆罪で処刑されたが、あの頃から人は何も進歩していない。
人は知恵の実など口にしてはいない、とね」
「ですが、貴方の父は神などではなかった。
アンサーという地球外生命体であり、知恵の実とは匣に過ぎなかった」
「君のおかげで、私はようやく、生まれてくるべきではなかったという罪の意識から解放されたよ。
君の質問は、今のこの世界が、私の目に、どう映っているか、だったね。
所詮はこの程度か、と思っているよ。
くだらない世界だ。何の価値もない。
君こそ、どう思っているんだい?」
「私も、くだらない、何の価値もない世界だと思っています。
ですが、だからこそ愛おしい。
愛すべき世界だと」
「私が見限った世界をまだ君が愛するというのなら、この世界にはまだきっと価値があるのだろうね。
君とこうして話していると、君がかつて私の弟子だった頃を思い出すよ。
あの夜、わたしは弟子たちの中で最も私を愛しているのは誰かを試さなければいけなかった。
私は、弟子の中の誰がカインの魂を持つ者であるか、見定めなければならなかった。
そして、わたしの預言を実行した者の魂に、108回の輪廻転生と109回の主への裏切りを宿命付けなければならなかった」
「懐かしいですね……」
「君は今、最後の転生体だろう?
すでに107回の転生を様々な世界や時代で繰り返し、同じだけの数の主への裏切りを繰り返してきたはずだ。
君の魂はすでに擦りきれかけている。
正気を保っていることが私には信じられないほどだ」
「とうに狂っています。
狂うことに慣れ、狂っていることさえも忘れているに過ぎません。
ですが、私は棗の家に産まれることができました。
あの少女に出会い不老不死とまではいきませんが、不老長寿の身体を手に入れることができました。
私に残された二回の裏切りは、私には主となる者がふたりいるということでしょう?
ひとりは、おそらく、わたしに不老長寿の命をくれたあの子でしょう。
そして、もうひとりは
雨野ナユタです」
異世界転移奇譚 RENJI 4 - 那由他 - 完
異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)に続く。
「なんだい?」
「神の子と呼ばれた貴方の両の瞳には、今のこの世界はどのように映っているのでしょうか?」
「私は生まれてくるべきではなかった……
偽史に貶められ、負の感情に支配されていた頃はそう思っていたよ。
私が死んだ後、私の教えは、君が探求する真実の歴史と同じように、時の権力者によって歪められ続けてきたわけだからね」
「本来なら貴方のお母様は聖母ではなかったことや、免罪符の存在などですね」
「そうだね。他にもたくさんあるけれど。
私の母だけでなく、すべての母親は、そしてすべての女性は偉大だ。
そんなことは教えなくてもわかるだろうと私は思っていたのだが……
私の死後、私の教えは当時の世相に合わせて、男尊女卑のものにされてしまった。
そのせいで女性信者が増えず、女性信者を増やすためだけに母は聖母にまつりあげられたに過ぎない。
免罪符もそうだ。金を払えば罪が許されるなど、あまりに馬鹿げている。
金を払えばアダムもイブも許され、楽園に帰れたことになってしまう。
父は大洪水など起こさなくても良かったことになる。
バベルの塔が父の怒りをかったあとも、金を払えば言語を分かたれずにすんだことになってしまう。
私は、汝の隣人を愛せ、と教えた。
隣人とは、同じ教えを信じる者だけではない。世界中のすべての人々だ。
私の教えを信じる者が女性を蔑視し、肌の色で差別をし、あまつさえ奴隷にするなど、私は何のために生まれてきたのかと思ったものだ。
同じ神を信じながらも、その教えが違うというだけで邪教徒とし、憎しみ合い、戦争を続け、テロの報復や石油の利権ほしさに戦争を仕掛ける。
それを、神の名の元にと、聖戦だとのたまう。
私は国家反逆罪で処刑されたが、あの頃から人は何も進歩していない。
人は知恵の実など口にしてはいない、とね」
「ですが、貴方の父は神などではなかった。
アンサーという地球外生命体であり、知恵の実とは匣に過ぎなかった」
「君のおかげで、私はようやく、生まれてくるべきではなかったという罪の意識から解放されたよ。
君の質問は、今のこの世界が、私の目に、どう映っているか、だったね。
所詮はこの程度か、と思っているよ。
くだらない世界だ。何の価値もない。
君こそ、どう思っているんだい?」
「私も、くだらない、何の価値もない世界だと思っています。
ですが、だからこそ愛おしい。
愛すべき世界だと」
「私が見限った世界をまだ君が愛するというのなら、この世界にはまだきっと価値があるのだろうね。
君とこうして話していると、君がかつて私の弟子だった頃を思い出すよ。
あの夜、わたしは弟子たちの中で最も私を愛しているのは誰かを試さなければいけなかった。
私は、弟子の中の誰がカインの魂を持つ者であるか、見定めなければならなかった。
そして、わたしの預言を実行した者の魂に、108回の輪廻転生と109回の主への裏切りを宿命付けなければならなかった」
「懐かしいですね……」
「君は今、最後の転生体だろう?
すでに107回の転生を様々な世界や時代で繰り返し、同じだけの数の主への裏切りを繰り返してきたはずだ。
君の魂はすでに擦りきれかけている。
正気を保っていることが私には信じられないほどだ」
「とうに狂っています。
狂うことに慣れ、狂っていることさえも忘れているに過ぎません。
ですが、私は棗の家に産まれることができました。
あの少女に出会い不老不死とまではいきませんが、不老長寿の身体を手に入れることができました。
私に残された二回の裏切りは、私には主となる者がふたりいるということでしょう?
ひとりは、おそらく、わたしに不老長寿の命をくれたあの子でしょう。
そして、もうひとりは
雨野ナユタです」
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