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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第71話 プロローグⅠ
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古代ギリシアの哲学者プラトンは、その著書の中で、アトランティスという広大な島とそこに繁栄したとされる帝国について記述している。
ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸を隔てるジブラルタル海峡のすぐ外側、大西洋に巨大なアトランティス島があったとされ、彼の時代から9000年前に海中に没したという。
プラトンは、ソクラテスの弟子であり、アリストテレスの師に当たる。紀元前427年に産まれ、紀元前347年に他界している。
つまり、アトランティスは一万年程前に栄えた帝国ということになる。
アトランティス島は資源の宝庫であったという。
そこにあった帝国は、民は豊かな暮らしをし、そして強い軍事力を有し、大西洋を中心に地中海西部を含んだ広大な領土を支配していた。
王家はポセイドンの末裔であったという。
ポセイドンとは、ギリシア神話の海と地震を司る神である。
だが、人間と混じるにつれ堕落し、物質主義に走って領土の拡大を目指し、帝国は荒廃した。
アテナイ(ギリシャの首都アテネの古名)は、近隣諸国と連合し侵略者であるアトランティス帝国と戦い、辛くも勝利した。
その直後アトランティス島は海中に沈み、滅亡したとされている。
これは神々の罰であるとされている。
アトランティスの物語の語り手として登場するのは、プラトンの母方の曽祖父だったとされるクリティアスである。
プラトンは祖父からこの話を聞き、クリティアスの祖父は、賢人で政治家のソロンから、ソロンはエジプトに旅した際に女神ネイトに仕える神官から伝えられたという。
「つまり、エジプト神話の戦いの女神であるネイトが、自らに仕える神官に伝えたアトランティスの話を、古代ギリシアの賢人ソロンに話し、ソロンはプラトンの五代前の先祖にあたる人物にその話をした、というわけです」
真実の歴史の探求者、戯使遣い・棗弘幸は、傍らにいるローブをまとった髪の長い男にそう告げた。
「そういうのを君の国の言葉では、何と言ったかな。確か、又聞きだったかな」
ローブの男は苦笑した。
そこは、八十三市(やとみし)にある、棗家の大きく古い邸宅の地下、四面の壁に大きな本棚があり、膨大な書籍が並ぶ一室であった。
棗の家は、一体いつからそこに存在しているのか年代の測定が不可能なほど古く、市の文化遺産に指定されているほどだった。
20世紀半ばに起きた伊勢湾台風は、死者・行方不明者の数は5,000人を超え、明治以降の日本における台風の災害史上最悪の惨事であり、特に現在N市港区・飛鳥村・八十三市にあたる市町村に甚大の被害を与えた。
だが、それほどの大災害でも棗の家は一切損壊することがなかったという。
「そうですね。又聞きというよりは、もはや伝言ゲームに近いかもしれません。
アトランティスの伝説は、プラトン以前に遡ることはできず、彼は強大な国々の傲慢さを揶揄した寓話として言及しただけとも言われています」
ローブの男は、目の前にある本を手に取ると、
「だが、この本は興味深いタイトルだね。
イグネイシャス・ロヨーラ・ドネリー著、『アトランティス ―大洪水前の世界』。
つまり、アトランティスは、父が起こした大洪水の前に存在した、という可能性があるわけだね」
その本は、1882年にアメリカの政治家であったドネリーが発表し、「謎の大陸伝説」として一大ブームを起こしたものだった。
ドネリーの著作と同時期に、オカルティストたちも関心を持つようになり、アトランティスを始めとする失われた大陸をめぐる疑似歴史に、様々な想像や夢物語を付け加えていった。
「当時のオカルティストたちは、アカシックレコードを霊視することで、アトランティスの詳しい歴史を解明したと主張しています。ですが、彼らが解明した歴史は明らかにされていません。
おそらくはフリーメーソンあたりが保存しているのでしょう」
「父が起こした大洪水だけでなく、アカシックレコードまで関わってくるとは、君が歴史に魅了される気持ちがよくわかるよ。
だけど、君も知っての通り、世界の理を変える力がなければアカシックレコードにはアクセスできない」
「えぇ、それにあの場所は霊視するものではありません。
検索し、閲覧するものです。
ですから、そのオカルティストたちは大方ドラッグでシャブ山シャブ子になっていたってところでしょうね」
棗は笑ってそう言った。
ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸を隔てるジブラルタル海峡のすぐ外側、大西洋に巨大なアトランティス島があったとされ、彼の時代から9000年前に海中に没したという。
プラトンは、ソクラテスの弟子であり、アリストテレスの師に当たる。紀元前427年に産まれ、紀元前347年に他界している。
つまり、アトランティスは一万年程前に栄えた帝国ということになる。
アトランティス島は資源の宝庫であったという。
そこにあった帝国は、民は豊かな暮らしをし、そして強い軍事力を有し、大西洋を中心に地中海西部を含んだ広大な領土を支配していた。
王家はポセイドンの末裔であったという。
ポセイドンとは、ギリシア神話の海と地震を司る神である。
だが、人間と混じるにつれ堕落し、物質主義に走って領土の拡大を目指し、帝国は荒廃した。
アテナイ(ギリシャの首都アテネの古名)は、近隣諸国と連合し侵略者であるアトランティス帝国と戦い、辛くも勝利した。
その直後アトランティス島は海中に沈み、滅亡したとされている。
これは神々の罰であるとされている。
アトランティスの物語の語り手として登場するのは、プラトンの母方の曽祖父だったとされるクリティアスである。
プラトンは祖父からこの話を聞き、クリティアスの祖父は、賢人で政治家のソロンから、ソロンはエジプトに旅した際に女神ネイトに仕える神官から伝えられたという。
「つまり、エジプト神話の戦いの女神であるネイトが、自らに仕える神官に伝えたアトランティスの話を、古代ギリシアの賢人ソロンに話し、ソロンはプラトンの五代前の先祖にあたる人物にその話をした、というわけです」
真実の歴史の探求者、戯使遣い・棗弘幸は、傍らにいるローブをまとった髪の長い男にそう告げた。
「そういうのを君の国の言葉では、何と言ったかな。確か、又聞きだったかな」
ローブの男は苦笑した。
そこは、八十三市(やとみし)にある、棗家の大きく古い邸宅の地下、四面の壁に大きな本棚があり、膨大な書籍が並ぶ一室であった。
棗の家は、一体いつからそこに存在しているのか年代の測定が不可能なほど古く、市の文化遺産に指定されているほどだった。
20世紀半ばに起きた伊勢湾台風は、死者・行方不明者の数は5,000人を超え、明治以降の日本における台風の災害史上最悪の惨事であり、特に現在N市港区・飛鳥村・八十三市にあたる市町村に甚大の被害を与えた。
だが、それほどの大災害でも棗の家は一切損壊することがなかったという。
「そうですね。又聞きというよりは、もはや伝言ゲームに近いかもしれません。
アトランティスの伝説は、プラトン以前に遡ることはできず、彼は強大な国々の傲慢さを揶揄した寓話として言及しただけとも言われています」
ローブの男は、目の前にある本を手に取ると、
「だが、この本は興味深いタイトルだね。
イグネイシャス・ロヨーラ・ドネリー著、『アトランティス ―大洪水前の世界』。
つまり、アトランティスは、父が起こした大洪水の前に存在した、という可能性があるわけだね」
その本は、1882年にアメリカの政治家であったドネリーが発表し、「謎の大陸伝説」として一大ブームを起こしたものだった。
ドネリーの著作と同時期に、オカルティストたちも関心を持つようになり、アトランティスを始めとする失われた大陸をめぐる疑似歴史に、様々な想像や夢物語を付け加えていった。
「当時のオカルティストたちは、アカシックレコードを霊視することで、アトランティスの詳しい歴史を解明したと主張しています。ですが、彼らが解明した歴史は明らかにされていません。
おそらくはフリーメーソンあたりが保存しているのでしょう」
「父が起こした大洪水だけでなく、アカシックレコードまで関わってくるとは、君が歴史に魅了される気持ちがよくわかるよ。
だけど、君も知っての通り、世界の理を変える力がなければアカシックレコードにはアクセスできない」
「えぇ、それにあの場所は霊視するものではありません。
検索し、閲覧するものです。
ですから、そのオカルティストたちは大方ドラッグでシャブ山シャブ子になっていたってところでしょうね」
棗は笑ってそう言った。
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