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第27話 異世界からの転移者たち
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リバーステラ。
西暦2038年1月7日午前7時20分。
日本に、異世界から数万人の転移者が訪れた。
転移者たちは皆、かつての魔法大国エウロペの民たちであり、その代表は女王ステラ・コスモス・ダハーカと、その王配レンジ・フガク・ダハーカである。
レンジは、タカミやミカナ、ナユタの家や、ピノアが世話になっていたという自分の実家が、六大都市のひとつN市に隣接する八十三市(やとみし)にあったため、ピノアやイルルには転移先として市内にある海南こどもの国という大きな公園を指定していた。
「おっきなローラー滑り台とか、ゴーカートとかあるとこだよね? 使われなくなった消防車もあるよね。
真依やミカナといっしょにナユタとそこでよく遊んだし、ついこないだナユタとそこで青姦したばっかりだから大丈夫!」
最後の情報はいらなかったが、ピノアは自信たっぷり送りだしてくれた。
青姦って何? とステラはやっぱり聞いてきた。教えると赤面していた。
だが、そこはレンジが指定した場所ではなかった。
空気がとても澄んだ森林だった。
「ここは……こどものときに父さんと母さんに連れてきてもらったことがある……」
レンジはその光景を見たことがあった。昔ここに来たことがあった。
「不思議……エーテルではないけれど、エーテルによく似た何かの存在を感じるわ……」
そこは、伊勢神宮とおかげ横丁の間にある森林だった。
まだパワースポットという言葉がなかった時代から、学生時代の父と母はこの場所が好きで、年に数回訪れていたという。
ふたりは毎回ではないものの何度かすれ違ううちに顔見知りになり、やがて挨拶や会話をするようになり、連絡先を交換して交際に発展したと聞いていた。
この森林の先には、テラではジパングの初代女王や二代目の女王と同一の存在とされているアマテラスという神を祀る神社がある。
レンジたちが17年前に破壊した匣のうちのひとつが奉納されていた場所でもあった。最もここには以前からレプリカが奉納されていただけなのだろう。
この場所が大好きだった父は、リバーステラからテラへの最初の転移者であり、息子であるレンジは一万人目の転移者だった。
邪馬台国があった場所とされる有力な説はふたつあり、九州説と近畿説だ。
ここは三重県にあたるが、三重県は中部地方にも近畿地方にも属している。
まさか、邪馬台国があったのはこの場所だということだろうか?
仮にここに邪馬台国があったのだとしたら、その滅亡後に女王や民の血を引く者たちが集落をつくり、やがて村となったのが、隣県の三重寄りに位置する旧・海女郡返璧隣村だというのもうなづける。
徒歩では何日かかるかわからないが、距離としてはおそらく120キロほどだった。決して歩けない距離ではない。
邪馬台国の場所はともかく、ピノアが指定した場所ではなくこの場所に転移してしまったことや、匣、アマテラス、父、ステラが感じているエーテルではないがエーテルによく似た存在、そして自分、あまりにも、出来すぎなほど揃いすぎていた。
「伊勢神宮の伊勢は、異世界の異世だったということか……」
レンジは、ピノアから手渡されたスマホで、父に電話をかけることにした。
17年前に異世界へと転移したレンジの携帯は既に解約されており、ピノアが父や妹、タカミやミカナ、ショウゴの携帯電話の番号が登録されているから、と自分がつい昨日までこの世界で使っていたものを渡してくれていた。
「ピノアか? 今どこだ? ナユタもいっしょか?」
ワンコールもしないうちに電話に出てくれた父の第一声は、ピノアのことを自分や妹のように、本当の娘のように思って、大切にしていたのがわかるものだった。
「父さん、ぼくだよ。レンジだよ」
「レンジ……? どうした? 一体何があったんだ?」
「ピノアとナユタくんは、テラにいる。あっちの世界のマヨリがふたりを呼んだんだ。
話すと長くなるから、事情はあとでゆっくり話したいんだけど、ふたりのそばには、イルルとサタナハマアカがいるから大丈夫だよ」
父は、そうか、とだけ言った。
「ぼくとステラとそれからサクラは、今伊勢神宮にいるんだ。迎えに来てほしいんだけど……」
「お前もやっぱり伊勢神宮に帰還してきたのか……」
父も、帰還の際は、レンジたちが指定した八十三市内ではなく、この場所だったということだろう。おそらくは、共に帰還したショウゴもまた。
「わかった、すぐ車を出す」
父はそう言ってくれたが、
「実はさ、エウロペに住む人たち全員と、こちらの世界に転移しなきゃいけなかったんだよね。
三万人くらい乗れる車、ある?」
父は、あるか、と言った。呆れたように。でも、とてもうれしそうに。
タカミくんやミカナちゃんやショウゴくんと相談してまた連絡する、と言って父は電話を切った。
「少し時間はかかりそうだけど、父さんやタカミさんたちがなんとかしてくれるみたいだ」
レンジはステラにそう言ったが、
「サクラがいないの……どこにもいない……」
ステラは震えながらそう言い、レンジもまた愕然とした。
西暦2038年1月7日午前7時20分。
日本に、異世界から数万人の転移者が訪れた。
転移者たちは皆、かつての魔法大国エウロペの民たちであり、その代表は女王ステラ・コスモス・ダハーカと、その王配レンジ・フガク・ダハーカである。
レンジは、タカミやミカナ、ナユタの家や、ピノアが世話になっていたという自分の実家が、六大都市のひとつN市に隣接する八十三市(やとみし)にあったため、ピノアやイルルには転移先として市内にある海南こどもの国という大きな公園を指定していた。
「おっきなローラー滑り台とか、ゴーカートとかあるとこだよね? 使われなくなった消防車もあるよね。
真依やミカナといっしょにナユタとそこでよく遊んだし、ついこないだナユタとそこで青姦したばっかりだから大丈夫!」
最後の情報はいらなかったが、ピノアは自信たっぷり送りだしてくれた。
青姦って何? とステラはやっぱり聞いてきた。教えると赤面していた。
だが、そこはレンジが指定した場所ではなかった。
空気がとても澄んだ森林だった。
「ここは……こどものときに父さんと母さんに連れてきてもらったことがある……」
レンジはその光景を見たことがあった。昔ここに来たことがあった。
「不思議……エーテルではないけれど、エーテルによく似た何かの存在を感じるわ……」
そこは、伊勢神宮とおかげ横丁の間にある森林だった。
まだパワースポットという言葉がなかった時代から、学生時代の父と母はこの場所が好きで、年に数回訪れていたという。
ふたりは毎回ではないものの何度かすれ違ううちに顔見知りになり、やがて挨拶や会話をするようになり、連絡先を交換して交際に発展したと聞いていた。
この森林の先には、テラではジパングの初代女王や二代目の女王と同一の存在とされているアマテラスという神を祀る神社がある。
レンジたちが17年前に破壊した匣のうちのひとつが奉納されていた場所でもあった。最もここには以前からレプリカが奉納されていただけなのだろう。
この場所が大好きだった父は、リバーステラからテラへの最初の転移者であり、息子であるレンジは一万人目の転移者だった。
邪馬台国があった場所とされる有力な説はふたつあり、九州説と近畿説だ。
ここは三重県にあたるが、三重県は中部地方にも近畿地方にも属している。
まさか、邪馬台国があったのはこの場所だということだろうか?
仮にここに邪馬台国があったのだとしたら、その滅亡後に女王や民の血を引く者たちが集落をつくり、やがて村となったのが、隣県の三重寄りに位置する旧・海女郡返璧隣村だというのもうなづける。
徒歩では何日かかるかわからないが、距離としてはおそらく120キロほどだった。決して歩けない距離ではない。
邪馬台国の場所はともかく、ピノアが指定した場所ではなくこの場所に転移してしまったことや、匣、アマテラス、父、ステラが感じているエーテルではないがエーテルによく似た存在、そして自分、あまりにも、出来すぎなほど揃いすぎていた。
「伊勢神宮の伊勢は、異世界の異世だったということか……」
レンジは、ピノアから手渡されたスマホで、父に電話をかけることにした。
17年前に異世界へと転移したレンジの携帯は既に解約されており、ピノアが父や妹、タカミやミカナ、ショウゴの携帯電話の番号が登録されているから、と自分がつい昨日までこの世界で使っていたものを渡してくれていた。
「ピノアか? 今どこだ? ナユタもいっしょか?」
ワンコールもしないうちに電話に出てくれた父の第一声は、ピノアのことを自分や妹のように、本当の娘のように思って、大切にしていたのがわかるものだった。
「父さん、ぼくだよ。レンジだよ」
「レンジ……? どうした? 一体何があったんだ?」
「ピノアとナユタくんは、テラにいる。あっちの世界のマヨリがふたりを呼んだんだ。
話すと長くなるから、事情はあとでゆっくり話したいんだけど、ふたりのそばには、イルルとサタナハマアカがいるから大丈夫だよ」
父は、そうか、とだけ言った。
「ぼくとステラとそれからサクラは、今伊勢神宮にいるんだ。迎えに来てほしいんだけど……」
「お前もやっぱり伊勢神宮に帰還してきたのか……」
父も、帰還の際は、レンジたちが指定した八十三市内ではなく、この場所だったということだろう。おそらくは、共に帰還したショウゴもまた。
「わかった、すぐ車を出す」
父はそう言ってくれたが、
「実はさ、エウロペに住む人たち全員と、こちらの世界に転移しなきゃいけなかったんだよね。
三万人くらい乗れる車、ある?」
父は、あるか、と言った。呆れたように。でも、とてもうれしそうに。
タカミくんやミカナちゃんやショウゴくんと相談してまた連絡する、と言って父は電話を切った。
「少し時間はかかりそうだけど、父さんやタカミさんたちがなんとかしてくれるみたいだ」
レンジはステラにそう言ったが、
「サクラがいないの……どこにもいない……」
ステラは震えながらそう言い、レンジもまた愕然とした。
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