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第0部「RINNE -友だち削除-」&第0.5部「RINNE 2 "TENSEI" -いじめロールプレイ-」
第7話 出席番号女子9番・服部絵美 ①
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「うそだろ」
「うわあああああああ」
「助けてくれ、ここから出してくれ!」
そう叫びながらドアに駆け寄るクラスメイトたちの悲鳴の中、ぼくは既視感にとらわれていた。
チェーンソーによって左右に真っ二つに切り裂かれた大和省吾の死体。
チェーンソーによってのものであったのかどうかはわからないが、大和省吾が真っ二つに切り裂かれた死体をぼくはどこかで見たことがあるような気がしたのだ。また例の夢だろうか。
ごとん、という大きな物音が、騒いでいたクラスメイトたちを黙らせた。
先生がチェーンソーを床に無造作に放り投げたのだ。
「これでやっと信じてもらえましたか」
と、先生は言った。
「一回目の指令はパスでした。大和省吾くんを殺したのはいじめの首謀者でも、内藤美嘉さんでもありません。あなたたちです!」
先生は、NHKのお笑い芸人のネタ番組の司会者の最後の決め台詞を口にした。人をひとり殺しておいて、それもあんな無残な殺し方をして、どうしてこの人はこんなつまらない冗談が言えるのだろう。
「でも彼はどうやら、いじめの首謀者ではなかったみたいなんで、ゲームは続行でーす」
大和が自分から名乗り出たときから、それはわかっていた。けれど、ぼくたちはそれでも絶望した。
「それでは二回目の指令を待ちましょう。指令があるまでは皆さんはどう過ごしても構いません。この教室から出ることはできませんが」
クラス中が大和の無残な死に恐怖し絶望し、沈黙が続く中、死体に駆け寄る女子がふたりいた。
加藤麻衣と脇田百合子だった。
「先生、彼を弔ってあげても?」
加藤麻衣がそう言うと、
「かまいませんよ」
先生はもう大和には興味がない、そんな風にそう言った。
「脇田さん、教室の電気を消して」
加藤に言われ、脇田は教室の明かりを消す。窓まで白く塗りつぶされた教室は明かりが消えると真っ暗になった。時間は午後六時過ぎだったから、十一月半ばの外ももう真っ暗だったろう。
加藤は首にさげていたペンダントを外すと脇田に渡した。
脇田がペンダントのスイッチを押すと、それはぼうと光を放ち、真っ暗な教室中が星々が輝く満天の夜空になった。
東急ハンズなんかに売っている家庭用のプラネタリウムだった。ペンダントの形にまで小型化が進んでいるとは思わなかった。
加藤は大和の死体のそばで、逆十字を切り、その逆十字の片方だけにβに似た羽根を描いた。
両手の指を交差して握り、何か呪文のようなものを唱え始めた。
「ずさわ がしへ へじたそ すらぶ まやほ ちさひめ つずぺ きぬじ ぶひぼぱ ぽぴく ほずら わえらご べがじ すきみ ちとゆべ たざ ゆじい りかち ざげにに ぴぎせ やせぶ むべはそ ぼかざ がぱら すわぐほ うざご わかむ ええらゆ こごろ よばち りぼ ゆうて いみや おうきむ こうほ りいゆ うじとり やまあ きらぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺ」
それにどんな意味があるかわからない。日本語かどうかもわからない言葉だった。
「お前なんで平気なんだよ」
誰かが言った。
加藤が答える。
「知ってるでしょ。うちの親、新興宗教の教祖だから。うちではよく荒行で人が死ぬの。わたしは巫女だから、死んだ人の魂を毎日こうして弔ってるの。だから平気」
「カルト教団の間違いだろ」
「そうね世間ではそう言われているわね」
加藤は揶揄されたのに気にする様子はなく、脇田がプラネタリウムを消すとペンダントを受け取り首に下げた。脇田が電気をつけに行く。
先生が腕時計を見た。
「さて、そろそろ二度目の指令が届く時間ですね」
再び三十台の携帯電話が一斉にオルゴールの音色を奏でた。クラッシックだったが、今度は亡き王女のためのパヴァーヌではなかった。ニュルンベルクのマイスタージンガーだ。
「さあ、皆さん、携帯電話でいじめの首謀者からの指令メールを確認してください」
先生がそう言って、ぼくたちは再び一斉に携帯電話の画面を確認した。
そこにはこう書かれてあった。
──内藤美嘉に変なあだ名をつけろ。
「あらら、先ほどと同じですねぇ。いじめの首謀者の方はどうしても内藤美嘉さんにあだ名をつけたいようです。どうしますか? みなさん。また出来ないですか? 今度は誰が犠牲になりますか?」
先生は楽しそうにそう言ったが、ぼくにはどうも腑に落ちない点があった。指令の内容ではない。その送信者、いじめの首謀者のことだ。
先生がそろそろ時間だと告げる前から、ぼくはクラス全員に目を配っていたけれど誰も携帯電話には触れていなかった。着信時間指定のメールだろうか? だとしたら指令はあらかじめ設定されている? いや、じゃあなぜ二度目の指令が最初と同じなのだろう。時間指定のものだとしても最初の指令をぼくたちがパスした後に送信されたとしか考えられない。
そもそも本当にこのクラスにいじめの首謀者はいるのだろうか? いじめられる者・内藤美嘉はいじめロールプレイのアプリのガチャで当たりを引いてしまった途端に声を上げた。だから彼女がいじめられる者だとすぐにわかった。けれど、いじめの首謀者はこのクラスの他の誰にも自分がいじめの首謀者であると悟られるわけにはいかない。だから、声を上げることはなかった。声を上げるわけにはいかなかったというべきかもしれない。
このゲームについても、いじめの首謀者にしても、ぼくにはまだわからないことだらけだった。
「ブス」
「ビッチ」
誰かが言った。ついにこのくだらないゲームに乗っかってしまう者が現れてしまった。無理もない。目の前で人が殺されたのだ。それも担任の教師によって。ゲームに乗れば、少なくとも一時間に一度人が死ぬことはない。六時間に一度人が死ぬのには変わりはないけれど。
「いいですね、そうじゃなきゃおもしろくありません」
参加者のいないゲームはつまらないですからね、先生は言った。
「うわあああああああ」
「助けてくれ、ここから出してくれ!」
そう叫びながらドアに駆け寄るクラスメイトたちの悲鳴の中、ぼくは既視感にとらわれていた。
チェーンソーによって左右に真っ二つに切り裂かれた大和省吾の死体。
チェーンソーによってのものであったのかどうかはわからないが、大和省吾が真っ二つに切り裂かれた死体をぼくはどこかで見たことがあるような気がしたのだ。また例の夢だろうか。
ごとん、という大きな物音が、騒いでいたクラスメイトたちを黙らせた。
先生がチェーンソーを床に無造作に放り投げたのだ。
「これでやっと信じてもらえましたか」
と、先生は言った。
「一回目の指令はパスでした。大和省吾くんを殺したのはいじめの首謀者でも、内藤美嘉さんでもありません。あなたたちです!」
先生は、NHKのお笑い芸人のネタ番組の司会者の最後の決め台詞を口にした。人をひとり殺しておいて、それもあんな無残な殺し方をして、どうしてこの人はこんなつまらない冗談が言えるのだろう。
「でも彼はどうやら、いじめの首謀者ではなかったみたいなんで、ゲームは続行でーす」
大和が自分から名乗り出たときから、それはわかっていた。けれど、ぼくたちはそれでも絶望した。
「それでは二回目の指令を待ちましょう。指令があるまでは皆さんはどう過ごしても構いません。この教室から出ることはできませんが」
クラス中が大和の無残な死に恐怖し絶望し、沈黙が続く中、死体に駆け寄る女子がふたりいた。
加藤麻衣と脇田百合子だった。
「先生、彼を弔ってあげても?」
加藤麻衣がそう言うと、
「かまいませんよ」
先生はもう大和には興味がない、そんな風にそう言った。
「脇田さん、教室の電気を消して」
加藤に言われ、脇田は教室の明かりを消す。窓まで白く塗りつぶされた教室は明かりが消えると真っ暗になった。時間は午後六時過ぎだったから、十一月半ばの外ももう真っ暗だったろう。
加藤は首にさげていたペンダントを外すと脇田に渡した。
脇田がペンダントのスイッチを押すと、それはぼうと光を放ち、真っ暗な教室中が星々が輝く満天の夜空になった。
東急ハンズなんかに売っている家庭用のプラネタリウムだった。ペンダントの形にまで小型化が進んでいるとは思わなかった。
加藤は大和の死体のそばで、逆十字を切り、その逆十字の片方だけにβに似た羽根を描いた。
両手の指を交差して握り、何か呪文のようなものを唱え始めた。
「ずさわ がしへ へじたそ すらぶ まやほ ちさひめ つずぺ きぬじ ぶひぼぱ ぽぴく ほずら わえらご べがじ すきみ ちとゆべ たざ ゆじい りかち ざげにに ぴぎせ やせぶ むべはそ ぼかざ がぱら すわぐほ うざご わかむ ええらゆ こごろ よばち りぼ ゆうて いみや おうきむ こうほ りいゆ うじとり やまあ きらぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺ」
それにどんな意味があるかわからない。日本語かどうかもわからない言葉だった。
「お前なんで平気なんだよ」
誰かが言った。
加藤が答える。
「知ってるでしょ。うちの親、新興宗教の教祖だから。うちではよく荒行で人が死ぬの。わたしは巫女だから、死んだ人の魂を毎日こうして弔ってるの。だから平気」
「カルト教団の間違いだろ」
「そうね世間ではそう言われているわね」
加藤は揶揄されたのに気にする様子はなく、脇田がプラネタリウムを消すとペンダントを受け取り首に下げた。脇田が電気をつけに行く。
先生が腕時計を見た。
「さて、そろそろ二度目の指令が届く時間ですね」
再び三十台の携帯電話が一斉にオルゴールの音色を奏でた。クラッシックだったが、今度は亡き王女のためのパヴァーヌではなかった。ニュルンベルクのマイスタージンガーだ。
「さあ、皆さん、携帯電話でいじめの首謀者からの指令メールを確認してください」
先生がそう言って、ぼくたちは再び一斉に携帯電話の画面を確認した。
そこにはこう書かれてあった。
──内藤美嘉に変なあだ名をつけろ。
「あらら、先ほどと同じですねぇ。いじめの首謀者の方はどうしても内藤美嘉さんにあだ名をつけたいようです。どうしますか? みなさん。また出来ないですか? 今度は誰が犠牲になりますか?」
先生は楽しそうにそう言ったが、ぼくにはどうも腑に落ちない点があった。指令の内容ではない。その送信者、いじめの首謀者のことだ。
先生がそろそろ時間だと告げる前から、ぼくはクラス全員に目を配っていたけれど誰も携帯電話には触れていなかった。着信時間指定のメールだろうか? だとしたら指令はあらかじめ設定されている? いや、じゃあなぜ二度目の指令が最初と同じなのだろう。時間指定のものだとしても最初の指令をぼくたちがパスした後に送信されたとしか考えられない。
そもそも本当にこのクラスにいじめの首謀者はいるのだろうか? いじめられる者・内藤美嘉はいじめロールプレイのアプリのガチャで当たりを引いてしまった途端に声を上げた。だから彼女がいじめられる者だとすぐにわかった。けれど、いじめの首謀者はこのクラスの他の誰にも自分がいじめの首謀者であると悟られるわけにはいかない。だから、声を上げることはなかった。声を上げるわけにはいかなかったというべきかもしれない。
このゲームについても、いじめの首謀者にしても、ぼくにはまだわからないことだらけだった。
「ブス」
「ビッチ」
誰かが言った。ついにこのくだらないゲームに乗っかってしまう者が現れてしまった。無理もない。目の前で人が殺されたのだ。それも担任の教師によって。ゲームに乗れば、少なくとも一時間に一度人が死ぬことはない。六時間に一度人が死ぬのには変わりはないけれど。
「いいですね、そうじゃなきゃおもしろくありません」
参加者のいないゲームはつまらないですからね、先生は言った。
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