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第0部「RINNE -友だち削除-」&第0.5部「RINNE 2 "TENSEI" -いじめロールプレイ-」
第8話 出席番号女子9番・服部絵美 ②
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「わたし、前にこいつからおかしな話聞いたことある」
服部絵美が言った。美術部に所属する、いつもはぶりっ子キャラを通していて、男ウケはいいけれど、女子からは嫌われている女の子だった。その台詞はもう普段のぶりっ子キャラのものではなかった。もう演じる余裕もなくなってしまったのかもしれない。
「あんた確か、小学生のときに塾の先生にセクハラ受けてたんだって?」
服部は席を立つと、内藤に近づきながら言った。
「みんながいる前で、先生に下着の中にまで手をいれられてたって言ってたよね。それがいやでいやで、でも両親には相談できなくて、学校の先生に相談したら、そいつ新任だったから手に負えなかったみたいで、家で解決してって言われたって。友達に相談したら、友達も知ってたけど助けてくれなかったって」
知らなかった。内藤にはそんな過去があったのか。山汐凛のいじめが売春の強要にまで発展した背景には内藤のそういう過去のトラウマが関係しているのかもしれない。
「あんた男ができるたびに、必ずその話して、同情買おうとするよね」
けれど、服部はそう言った。
「よくいるんだよね、聞いてもいないのに経験人数自慢したり、レイプされたとか言って、自分は普通じゃない、だから大事にしてって顔してる女」
前に祐葵といっしょにぼくの家で見たアダルトビデオでもそういう女の子がいたのをぼくは思い出す。そのビデオはその女の子のデビュー作で、インタビューとエロシーンが交互になっていて、祐葵はインタビューなんか早送りしようと言ったけれど、ぼくはその女の子がどうしてAVなんかに出ることになったのか興味があって、祐葵を説得してインタビューのシーンもちゃんと見た。その女の子は「お兄ちゃんにレイプされた」と言っていた。
「そういう女はね、よく話を聞いてるとところどころ話が矛盾してるの。あんた確か経験人数十人だって言ってたよね? 十人斬りだって自慢してたよね? 今じゃ小学生だってセックスするから十六歳で十人っていうのは別に不思議じゃない数字かもしれない。異常だけどね。でも、あんたがセクハラを受けてたのが本当なら、それはきっとかなりのトラウマになってると思うの。男の人に触られるのもこわいくらいの。そんなあんたがどうして十人もの男とセックスできたわけ?」
内藤のその過去は嘘かもしれない、服部はそう言っているのだ。内藤は反論しなかった。顔を見ると冷や汗をかいていた。
それに追い打ちをかけるように、
「そういえばわたし、美嘉はその塾の先生にはじめてイカされたんだって聞いたよ」
そう言ったのは八木琴弓だった。八木は内藤のグループのひとりだった。
「琴弓、私を裏切るつもり?」
内藤が言った。ドスを聞かせた声だった。けれど、今やもうふたりの関係は逆転してしまっているのだ。
「裏切るもなにも、わたしは最初からあんたの手下になった覚えはないんだけど」
内藤は女子の中心的グループのリーダーだったけれど、今はただのいじめられる者だ。八木には彼女に従う理由なんてもうないのだ。
「なにそれ、じゃあこいつ、その塾の先生のセクハラを楽しんでたってこと?」
藤木双葉が言った。彼女も内藤のグループの女の子だった。
「双葉」
内藤はまたもドスを聞かせたけれど、
「慣れ慣れしく呼び捨てすんじゃねーよ、ブース」
藤木はそう言い、内藤はもう自分の権威がとっくに転落していることに気づいたようだった。
「でもさー」
続いたのは内藤のグループの最後のひとり、佳苗貴子だった。
「美嘉って処女だよね。経験人数自慢してるわりに、セックスの話いつも嘘っぽいし」
その言葉にクラスのほとんどの連中がどっと笑った。
「貴子……」
内藤の声はもう弱々しかった。
「言っておくけど、わたしもあんたの手下じゃないから。あんたが金持ってて、ファミレス代とか全部出してくれるからいっしょにいてあげただけ。馬鹿だよねー。利用されてただけなのに、自分がグループの中心みたいな顔して威張っててさ、いつも琴弓と双葉と三人であんたのこと馬鹿にしてたんだよ」
「嘘でしょ?」
内藤は泣いていた。彼女にはもうクラスの中心的グループのリーダーという威厳も権威もなかった。
「どうやら手下の三人に裏切られちゃったみたいだね、あんた。しょうがないよね、あんたの言ってることは全部嘘だったんだもん。嘘で自分を塗り固めて、あんたみたいな奴のことなんて言うか知ってる?」
服部絵美が言った。
「メンヘラ女っていうんだよ」
服部は内藤の椅子を思い切り蹴飛ばした。椅子が傾き、内藤は床に倒れる。服部は彼女に顔を踏みつけた。
「あんたの時代はもう終わりだよ。メンヘラ女」
その言葉に突き動かされるように、
「メンヘラ」
「メンヘラ!」
「メーンヘラ!!」
「メーンヘラ!!!」
クラス中の生徒たちが内藤につけられたあだ名を連呼した。
「殺してやる……」
顔を踏みつけられていた内藤が服部の足を払い、言った。
「絶対に殺してやる! あんたを一番最初に殺してやる!!」
服部は内藤の顔を思い切り蹴飛ばした。
「やれるもんならやってみろよメンヘラ。言っておくけど、わたしはいじめの首謀者じゃないから。ただおもしろそうだからこのゲームに乗っかってみただけ。わたしを殺してもあんたは助からない」
先生が拍手をする。
「素晴らしい! 実に素晴らしいですよ、服部さん! やっとこのゲームもいじめロールプレイらしくなってきましたね。二度目の指令はこれでクリアです」
「楽しんでもらえてうれしいです、先生」
先生の言葉に服部はそう答えて笑い、席に戻った。
顔を蹴られた内藤は鼻血と鼻水を流しながら泣きじゃくっていた。
ぼくはただその光景を見ていることしかできなかった。
内藤美嘉はこれまで自分がしてきたことのツケを払うことになっただけなのかもしれない。
けれど、これは間違っている。
ぼくはそう思った。
服部絵美が言った。美術部に所属する、いつもはぶりっ子キャラを通していて、男ウケはいいけれど、女子からは嫌われている女の子だった。その台詞はもう普段のぶりっ子キャラのものではなかった。もう演じる余裕もなくなってしまったのかもしれない。
「あんた確か、小学生のときに塾の先生にセクハラ受けてたんだって?」
服部は席を立つと、内藤に近づきながら言った。
「みんながいる前で、先生に下着の中にまで手をいれられてたって言ってたよね。それがいやでいやで、でも両親には相談できなくて、学校の先生に相談したら、そいつ新任だったから手に負えなかったみたいで、家で解決してって言われたって。友達に相談したら、友達も知ってたけど助けてくれなかったって」
知らなかった。内藤にはそんな過去があったのか。山汐凛のいじめが売春の強要にまで発展した背景には内藤のそういう過去のトラウマが関係しているのかもしれない。
「あんた男ができるたびに、必ずその話して、同情買おうとするよね」
けれど、服部はそう言った。
「よくいるんだよね、聞いてもいないのに経験人数自慢したり、レイプされたとか言って、自分は普通じゃない、だから大事にしてって顔してる女」
前に祐葵といっしょにぼくの家で見たアダルトビデオでもそういう女の子がいたのをぼくは思い出す。そのビデオはその女の子のデビュー作で、インタビューとエロシーンが交互になっていて、祐葵はインタビューなんか早送りしようと言ったけれど、ぼくはその女の子がどうしてAVなんかに出ることになったのか興味があって、祐葵を説得してインタビューのシーンもちゃんと見た。その女の子は「お兄ちゃんにレイプされた」と言っていた。
「そういう女はね、よく話を聞いてるとところどころ話が矛盾してるの。あんた確か経験人数十人だって言ってたよね? 十人斬りだって自慢してたよね? 今じゃ小学生だってセックスするから十六歳で十人っていうのは別に不思議じゃない数字かもしれない。異常だけどね。でも、あんたがセクハラを受けてたのが本当なら、それはきっとかなりのトラウマになってると思うの。男の人に触られるのもこわいくらいの。そんなあんたがどうして十人もの男とセックスできたわけ?」
内藤のその過去は嘘かもしれない、服部はそう言っているのだ。内藤は反論しなかった。顔を見ると冷や汗をかいていた。
それに追い打ちをかけるように、
「そういえばわたし、美嘉はその塾の先生にはじめてイカされたんだって聞いたよ」
そう言ったのは八木琴弓だった。八木は内藤のグループのひとりだった。
「琴弓、私を裏切るつもり?」
内藤が言った。ドスを聞かせた声だった。けれど、今やもうふたりの関係は逆転してしまっているのだ。
「裏切るもなにも、わたしは最初からあんたの手下になった覚えはないんだけど」
内藤は女子の中心的グループのリーダーだったけれど、今はただのいじめられる者だ。八木には彼女に従う理由なんてもうないのだ。
「なにそれ、じゃあこいつ、その塾の先生のセクハラを楽しんでたってこと?」
藤木双葉が言った。彼女も内藤のグループの女の子だった。
「双葉」
内藤はまたもドスを聞かせたけれど、
「慣れ慣れしく呼び捨てすんじゃねーよ、ブース」
藤木はそう言い、内藤はもう自分の権威がとっくに転落していることに気づいたようだった。
「でもさー」
続いたのは内藤のグループの最後のひとり、佳苗貴子だった。
「美嘉って処女だよね。経験人数自慢してるわりに、セックスの話いつも嘘っぽいし」
その言葉にクラスのほとんどの連中がどっと笑った。
「貴子……」
内藤の声はもう弱々しかった。
「言っておくけど、わたしもあんたの手下じゃないから。あんたが金持ってて、ファミレス代とか全部出してくれるからいっしょにいてあげただけ。馬鹿だよねー。利用されてただけなのに、自分がグループの中心みたいな顔して威張っててさ、いつも琴弓と双葉と三人であんたのこと馬鹿にしてたんだよ」
「嘘でしょ?」
内藤は泣いていた。彼女にはもうクラスの中心的グループのリーダーという威厳も権威もなかった。
「どうやら手下の三人に裏切られちゃったみたいだね、あんた。しょうがないよね、あんたの言ってることは全部嘘だったんだもん。嘘で自分を塗り固めて、あんたみたいな奴のことなんて言うか知ってる?」
服部絵美が言った。
「メンヘラ女っていうんだよ」
服部は内藤の椅子を思い切り蹴飛ばした。椅子が傾き、内藤は床に倒れる。服部は彼女に顔を踏みつけた。
「あんたの時代はもう終わりだよ。メンヘラ女」
その言葉に突き動かされるように、
「メンヘラ」
「メンヘラ!」
「メーンヘラ!!」
「メーンヘラ!!!」
クラス中の生徒たちが内藤につけられたあだ名を連呼した。
「殺してやる……」
顔を踏みつけられていた内藤が服部の足を払い、言った。
「絶対に殺してやる! あんたを一番最初に殺してやる!!」
服部は内藤の顔を思い切り蹴飛ばした。
「やれるもんならやってみろよメンヘラ。言っておくけど、わたしはいじめの首謀者じゃないから。ただおもしろそうだからこのゲームに乗っかってみただけ。わたしを殺してもあんたは助からない」
先生が拍手をする。
「素晴らしい! 実に素晴らしいですよ、服部さん! やっとこのゲームもいじめロールプレイらしくなってきましたね。二度目の指令はこれでクリアです」
「楽しんでもらえてうれしいです、先生」
先生の言葉に服部はそう答えて笑い、席に戻った。
顔を蹴られた内藤は鼻血と鼻水を流しながら泣きじゃくっていた。
ぼくはただその光景を見ていることしかできなかった。
内藤美嘉はこれまで自分がしてきたことのツケを払うことになっただけなのかもしれない。
けれど、これは間違っている。
ぼくはそう思った。
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