「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

文字の大きさ
106 / 271

第106話 13人目の救厄の聖者 ④

しおりを挟む
「ミカナってさー、こっち来たとき、わたしと同い年だったよね?」

「んー、確かそう。16? か、17だったと思う」

「あれから10年? 11年? 経ってるじゃん?
 わたしもミカナもアラサーじゃん?
 でも、ミカナもメイも、タカミも全然更けてないよね?」

「あー、わたし、19歳から年を取らない設定だから。
 あと、どけだけ食べても太らない設定」

「は? なにそれ?」

「本気で言ったわけじゃかったんだけど、おにーちゃんに冗談で言ってみたら、なんだっけ? おにーちゃんのクラッキングなんとかってやつ。
 あれで年をとったり太ったりしないようにしてくれた。メイもおにーちゃんもそうだよ」

「えー、まじか……
 タカミっちに頼んだら、わたしも年を取らないだけじゃなくて、若返らせてくれたりとかするかなー?」

「リサだけじゃ無理じゃないかなー。
 でも、マヨリからふたり一緒にって頼んでもらったらいけるんじゃない?」

「タカミっち、マヨリのこと好きっぽいもんね」

「そうだねー、リバーステラに残してきた彼女が、顔も名前もおんなじだからねー」


 相変わらず馬鹿なこと言ってるなと、タカミやミカナと共に11年前にこの世界を訪れた、彼女の親友である山汐メイ(やましお めい)は思った。

 本来の陰陽師である比良坂コヨミ(ひらさか こよみ)もまた、全裸だと余計馬鹿っぽさが引き立つな、と思った。

 ふたりとも、同じ女性であるがゆえ、まぁ毎日おしゃれや化粧するのはしんどいよね、とプライベートの彼女たちをすぐに受け入れられた。
 実際にはふたりとも今まさに公務中であるのだが。

 ふたりが化粧をしてないなら自分たちもしなくていいよね、おしゃれも適当でいいよね、となった。

 しかし、リサの防人である連璧マサト(れんぺき まさと)は男性であったため、ふたりがダメになり始めた頃は非常に戸惑わされた。

 ジパング中の民が、男女問わず憧れる三人の女性のうちのふたりが、ノーメイクなだけではなく、キャミソールとパンツ一枚で女王執務室をうろつきはじめたからだ。

 だが、ふたりが全裸になりはじめて3日も経つ頃には、もはやふたりの全裸を直視しても何も感じないようになっていた。

 もはやそれは、非日常ではなく、ありきたりで何のありがたみもない、日常の風景だった。

 それどころか最近のマサトは、蓮(はす)の葉を常に持ち歩いており、どのタイミングでふたりの股間に葉っぱを置こうかと、タイミングを見計らっているくらいだった。


 彼らがいる女王執務室に「ゆらぎ」が出現した。

 この国でそれを作ることができるのはひとりだけだった。


「リサ様、ミカナさん、タカミさんが来られますよ」

 マサトの言葉に、ふたりは「はーい」と返事だけをし、服を着ることもなければ、姿勢を正すことも、指一本動かすこともなかった。

 ゆらぎから現れた雨野タカミは、そんなふたりを見て、ため息をつくと、

「エウロペの飛空艇がこちらに向かって来てる。
 救厄の聖者たちだ」

 と、マサトとコヨミに、そしてリサとミカナに言った。

 いよいよか、とふたりは思った。

「返璧の塔のバリアはすでに解除しているようですね。こちらの塔もすぐにバリアを解除します」

「念のためアメノトリフネにいつでも変形できるようにしておきますか?」 

 ふたりは、指示を受ける前にすぐに動いた。

 ふたりにとって、タカミは別に上司というわけではなかった。
 陰陽師の肩書きを与えられてはいるが、彼はあくまで女王たちが異世界から招いた客人に過ぎない。
 タカミは指示を出せる立場ではなかったし、ふたりがその指示に従わなければならない立場でもなかった。

 だが、彼はこの国やこの世界のことを誰よりも理解しており、常にジパングの民にとって正しい選択と判断をしてくれる。
 もはやジパングになくてはならない存在であった。

 だが、ふたりにはわかってしまった。
 彼はもうすぐ、ミカナやメイと共にリバーステラに帰ってしまうのだ。

「ふたりとも、ありがとう。
 ぼくが言うのもおかしな話だけど、ジパングのこと、マヨリちゃんとリサちゃんのこと、ジパングに住む、すべて人や動物たちのこと、よろしくね」

 やはり、そうだ。
 救厄の聖者たちがジパングに向かってきているということは、太陽の巫女であるふたりの女王や、すべての陰陽師や防人たちとは、桁違いの力を持つ彼こそが、聖書にある大厄災を防ぐ者のひとりだということなのだ。


「メイはぼくについてきて。
 ミカナはどうする? こっちでリサちゃんとそうやってだらだらくらす?」

「んー? どういう意味ー?」

 ミカナは眠いのか、タカミに適当な返事をした。

「ミカナ、ぼくは今、大切なことを聞いてるんだ。
 ふたつの世界を救って、三人で元の世界に帰るか、それとも何もせずにふたつの世界を滅びるのを見てるか。
 13人目の救厄の聖者である、雨野ミカナに聞いてるんだ」


 そこにいる誰もが、その言葉に耳を疑った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...