上 下
18 / 71

第18話 話を広めた

しおりを挟む
「実は、母上に会う前に取り巻きの連中と合流して、ドッキリのことでアスーナと婚約破棄したこととソルティアと婚約したことを話したんですよ。もちろん、アスーナがあのハラドと婚約したこともね」

「はあぁっ!? なんでそんな真似を!?」

「何って、部下たちとの情報共有は当然でしょう? それから懇意にしている貴族の方々にも話しました」

「な、なんですって!?」


取り巻きだけなら、後で口裏を合わせればいいが侯爵家と縁のある貴族にまで話したとなれば話は違う。だが、カリブラは更に取り返しがつかない発言も口にした。


「あとついでに、第一王子のエーム・タースグバ殿下にもあったので話を聞いてもらいました」

「お、王太子殿下にも!?」


第一王子のエーム・タースグバは王太子だ。カリブラとて上級貴族の嫡男であるがゆえに話をする機会はあった。ただ、王太子の方はカリブラと関わりたがらないのだが、カリブラはそんなこともお構いなしと言うか分かっていなかったので、一方的に自身にあったことを話したのだ。

カリブラ自身に不利益な話になるとも知らずに。


「勿論、全く同じ話をしました。どうです? 殿下にも周知となれば僕とソルティアの婚約は盤石です。母上が何を言おうがもう遅いと思いませんか?」

「~~~~っ!?」


何故か自慢気に笑うカリブラの姿に対して、マキナは無言で頭を抱えた。もう実の息子にかける言葉が見つからないのもあるが、取り巻きから王子に至る多くの人々にカリブラの非常識さが広まってしまったことに頭を痛めたのだ。おそらく侯爵家は笑いものになるだろう。マキナには嫌でも侯爵家のみっともない未来が見えてしまった。


(こ、ここまで馬鹿というか後先考えないと言うか……もう、何を言えばいいの?)


そんなカリブラとマキナを眺めながらもソルティアは自分のことだけを考えていた。


(……嫌なおばさんね。この可愛い私がカリブラ様と婚約してあげるというのに。お姉様と比べるなんて……)


二人の会話から自分とカリブラの婚約が白紙になることは無さそうだと察して安心していた。ただ、義母となるだろうマキナが自分を嫌っていることだけは不安材料だ。だが、それがもとで婚約破棄になったときの手段もすでに考えていた。


(いざとなればお姉様の婚約者のハラド様を誘惑すればいい。お姉様を婚約者にしたがる人だから楽勝だわ)


自分の美貌ならどんな男でも引っ掛けられる。秘密裏で男遊びをしていたソルティアにはそんな自信もあったのだ。しかし、それは比較的格下の男たちだけを相手にしていただけの話だったのだが、ソルティアは自分の美貌ならハラドも籠絡できると信じて疑っていなかった。


(公爵ほどならば最低でも愛人にしてくれるだけでも楽できそうだしね)


ソルティアは分かっていなかった。美貌以上に性格の悪さが目立っていたことにも。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず
恋愛
 ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。  わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?  当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。  でも。  今は、捨てられてよかったと思っています。  だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。 流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。 異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。 夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。 そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。 自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。 [もう、彼に私は必要ないんだ]と 数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。 貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。

酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 ――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。  子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。  ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。  それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。

(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる

青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。 ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。 Hotランキング21位(10/28 60,362pt  12:18時点)

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。

りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。 伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。 それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。 でも知りませんよ。 私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

処理中です...