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第19話 伯爵家の家族
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カリブラが実の母親と合流して会話する少し前に、アスーナは自分の家族と合流していた。そして、カリブラと婚約破棄してハラドと新たな婚約をしたことを話していた。
「――な、なんと……カリブラ殿がそのような酷い真似を……それで婚約破棄に至ったと……」
「そして、ソルティアはそんな男と婚約……数時間で状況が動きすぎだろ……」
「執事の私としては、アスーナお嬢様がハラド様と婚約なさることに驚かされました。まさか、公爵家のお方に見初められるとは……」
アスーナの説明を聞いているのは三人の男たち。赤みのある黒髪に青い瞳の壮年の男がアスーナの父ノゲムス・ブラアラン伯爵だ。アスーナの話を聞いて衝撃のあまり皺が増えたように見える。
「ち、父親としては、ドッキリなんぞを仕掛けるような男に娘をやらなくて済んでよかったと思う……いや、ソルティアが婚約してしまったから、そんな男に娘を……すまん、考えがまとまらん……」
「無理もないですよ父上。私も同じ気持ちです。ただ、今言えることがあるとすればアスーナにハラド殿との婚約おめでとうではないでしょうか?」
「ふふふ、義兄様。それではそれで話が早すぎましてよ」
灰色の髪と瞳の二十代前半の男はブラアラン伯爵家の嫡男でありアスーナの義兄リボール・ブラアラン伯爵令息だ。元は従兄弟だったが、長男がいないということでブラアラン伯爵家の養子に迎えられ嫡男となったのだ。
「アスーナお嬢様の言うとおりです。旦那様もリボール様もグラファイト公爵家とよく話し合うべきかと存じます」
「そうですね、チャーリーの言うとおりですわ」
チャーリーと呼ばれる水色の髪と黒い瞳の初老の男はブラアラン伯爵家の執事。伯爵家の執事の中でもかなり信頼されている男だ。長い間、伯爵家を見守ってきた実力だけに驚いていると口にしつつもノゲムスとリボールよりも落ち着いていた。
「う、うむ、そうだな。まずは、ここにおられるハラド殿と詳しい話をしなければ……」
「俺のことならアスーナ嬢が説明してくれたとおりですよ伯爵。彼女は俺が話すべきことまで話してくれたので」
「あら、それはごめんなさい」
ハラドはノゲムスに笑顔で会話に臨む。ハラドなりに伯爵に気を許してほしいという打算もあるため、意図的にもアスーナといちゃつく様子も見せる。ただ、それだけでは伯爵の気は緩まなかった。
「しかし、急な話ではありませんか? このパーティーが貴殿の婚約者を決めるためだったとは言え展開が早すぎる気がするのですが?」
「確かに普通ではありえませんね。ですが、俺もいい歳で公爵家の男であるから有能な女性を娶りたい。ただ、男としては好意を持てる女性と婚約したい。だからこそ、アスーナ嬢が一番望ましいのです。彼女がフリーになったと聞いて直ぐに行動に移すしかないと思いました」
ノゲムスは疑問にもハラドは素直に応えた。それもハラドの打算だが、本心からアスーナの父には正直に話したいと思ったのだ。
「――な、なんと……カリブラ殿がそのような酷い真似を……それで婚約破棄に至ったと……」
「そして、ソルティアはそんな男と婚約……数時間で状況が動きすぎだろ……」
「執事の私としては、アスーナお嬢様がハラド様と婚約なさることに驚かされました。まさか、公爵家のお方に見初められるとは……」
アスーナの説明を聞いているのは三人の男たち。赤みのある黒髪に青い瞳の壮年の男がアスーナの父ノゲムス・ブラアラン伯爵だ。アスーナの話を聞いて衝撃のあまり皺が増えたように見える。
「ち、父親としては、ドッキリなんぞを仕掛けるような男に娘をやらなくて済んでよかったと思う……いや、ソルティアが婚約してしまったから、そんな男に娘を……すまん、考えがまとまらん……」
「無理もないですよ父上。私も同じ気持ちです。ただ、今言えることがあるとすればアスーナにハラド殿との婚約おめでとうではないでしょうか?」
「ふふふ、義兄様。それではそれで話が早すぎましてよ」
灰色の髪と瞳の二十代前半の男はブラアラン伯爵家の嫡男でありアスーナの義兄リボール・ブラアラン伯爵令息だ。元は従兄弟だったが、長男がいないということでブラアラン伯爵家の養子に迎えられ嫡男となったのだ。
「アスーナお嬢様の言うとおりです。旦那様もリボール様もグラファイト公爵家とよく話し合うべきかと存じます」
「そうですね、チャーリーの言うとおりですわ」
チャーリーと呼ばれる水色の髪と黒い瞳の初老の男はブラアラン伯爵家の執事。伯爵家の執事の中でもかなり信頼されている男だ。長い間、伯爵家を見守ってきた実力だけに驚いていると口にしつつもノゲムスとリボールよりも落ち着いていた。
「う、うむ、そうだな。まずは、ここにおられるハラド殿と詳しい話をしなければ……」
「俺のことならアスーナ嬢が説明してくれたとおりですよ伯爵。彼女は俺が話すべきことまで話してくれたので」
「あら、それはごめんなさい」
ハラドはノゲムスに笑顔で会話に臨む。ハラドなりに伯爵に気を許してほしいという打算もあるため、意図的にもアスーナといちゃつく様子も見せる。ただ、それだけでは伯爵の気は緩まなかった。
「しかし、急な話ではありませんか? このパーティーが貴殿の婚約者を決めるためだったとは言え展開が早すぎる気がするのですが?」
「確かに普通ではありえませんね。ですが、俺もいい歳で公爵家の男であるから有能な女性を娶りたい。ただ、男としては好意を持てる女性と婚約したい。だからこそ、アスーナ嬢が一番望ましいのです。彼女がフリーになったと聞いて直ぐに行動に移すしかないと思いました」
ノゲムスは疑問にもハラドは素直に応えた。それもハラドの打算だが、本心からアスーナの父には正直に話したいと思ったのだ。
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