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母娘丼W029 元カノ撃退作戦

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№29 元カノ撃退作戦

 翌日、エリカに連絡を取って、週末の土曜に、エリカをドライアド・ジャパンに呼び出した。

 社の応接室を借り、エリカと面談した。
「一応、本社のラーク専務からの内々の使いと言うことにしておいた。」
「この前来たとき、私もそう言ったのよね。でも門前払いだったわ。」ああ、俺たちの平日休みの日な。
「そりゃそうだろ。大体、うちの社にしてみれば、得体の知れないエリカの言い分なんか聞くことはできないさ。」
「得体が知れないって何よ。ラークからの紹介状だってちゃんと見せたわ。署名だってあったのよ。」
「ラークとやらの署名なんざ、うちの社で知ってる奴はいないよ。そもそもラークはうちとは絡んでないからな。」
「ラークが社長になったら痛い目見るわよ。覚えてらっしゃい。」

「おいおい冗談はよしてくれ。うちの方が本社よりずっと収益を上げてんだぜ。もっともそれはうちの二枚看板のエースおふたりのお陰だけどな。」
「そうなの?」
「神スペックのおふたりでさ、木工デザイナーと木工彫刻家なんだよ。社内ではシェリフとマエストロって呼ばれて社員全員から尊敬を集めてるけどな。シェリフの繊細なデザインをマエストロが精巧に仕上げたら、超ヒット商品間違いなしでさ、支社長ですら一目も二目も置いてるぜ。ってか、ほとんど頭が上がってねぇけどな。」

「ふうん。で、本題に入りましょ。ジェニファーさんとニコルさんに繋いでくれる気になったのかしら。」
「ああ。俺は乗り気じゃないが、おふたりが俺の元カノなら会ってみたいと言うんだ。」
「なにそれ、さり気なく売り込んでる気?ジョージが本社に来る気はないって言ったこと、もうラークに伝えてるからね。いまさら遅いわよ。」ふふんとマウントを取ってくるエリカ。この辺り、全然変わらんな。笑
「別にいいって言ったろ。俺は日本を離れる気はないからな。」
「負け惜しみ言っちゃって。ラークに取り入っとけばよかったのよ。せいぜい後悔しなさいな。」

「何を言ってんだか。小者のラークに何ができるって言うんだい。」
「ほんとよね。専務だって親の七光りじゃない。」
 その場に現れたジェニーさんとニコルさんに、息を飲んで絶句するエリカ。もはやエリカはおふたりに見惚れていると言ってもいいだろう。
「この娘がジョージくんの元カノ?なんか普通ね。ちょっと期待外れだわ。」
「そうだねぇ。ジョージくんの元カノって言うから、もっといい女かと思ってたよ。」
「え?あの…、すみません。」ソファーから立ち上がって深々と頭を下げるエリカ。普段なら絶対に言い返すエリカが、あっさり降参した。

 エリカはそこそこ美人でスタイルもいい方だ。当然モテる。普段から自分の容姿を最大の武器にして来たエリカにとって、ジェニーさんとニコルさんの、圧倒的な美貌と、ボリュームがあって形のいい巨乳と、引き締まったスタイルと、長い美脚と、さらに全身から出るお色気=極上のフェロモンと、すべてが敵わないと思い知っての全面降伏だ。意外と潔いのな。

「まあエリカだってそこそこは美人の方ですよ。ただおふたりが超美人過ぎですって。俺がエリカと付き合ったのはおふたりに出会う前じゃないですか。おふたりに出会った後にエリカと知り合ってたら、エリカとは付き合ってないですね。」
「ちょっと、ジョージ。調子に乗んないでよね。」おっと、ジェニーさんとニコルさんには尻尾を巻いたが、俺にはマウント取り続ける気かよ。

 そんなエリカをスルーして、
「もちろん付き合うのは容姿だけじゃなくて内面も重要ですからね。だからこそ、俺はおふたりに惚れてるんです。」
「おや、嬉しいねぇ。」
「私も嬉しいわ。」
 赤くなってはにかむおふたり。これは打合せ通りの芝居なのだが、余りのおふたりのかわいさに、悶絶&キュン死にしそう。

「ちょっとジョージ、いい加減におふたりを紹介してよね。」
「ああそうか。ジェニーさん、ニコルさん、こちらはエリカ。フィンランドの本社から来たそうです。
 エリカ、こちらがジェニファーさん。木工デザイン部門の責任者で、うちが誇るエースの木工デザイナー、シェリフと呼ばれてる。それからこちらがニコルさん。木工彫刻部門の責任者で、うちが誇るエースの木工彫刻家、マエストロと呼ばれてる。」
「エリカです。ドライアド本社のラーク専務の使いで来ました。これが紹介状です。」
 エリカが紹介状を見せた。ラークの署名入りだそうだが、俺には分らん。大体、文面も英語じゃないからさっぱり読めない。きっとフィンランド語なんだろうな。

「エリカさんだったか。あんた、ラークから私たちへの正式な使者ってことかい?」
「そうです。」
「で、ラークは何て言ってるの?」
「おふたりのお怒りが収まっていらして、おふたりさえよろしければ、おふたりと、お子様たちをフィンランドに呼び戻して、ご一緒にお暮しになりたいそうです。」
「間違いない?」
「間違いありません。」

「分かったわ。
 ニコル、これって接近禁止違反よね。」
「そうだね。罰金1万ユーロと、訴訟を起こす権利の復活だろうね。早速、本社の顧問弁護士に連絡しないとな。」
「え?」
「こう言う使者はさ、私的な使者のあんたじゃなくて、本社の顧問弁護士を通して行うべきなんだ。」
「あなたはラークの私的な使者。つまりラークの私的な代理人よね。ラークが直接コンタクトを取って来たようなものよ。」
 顔面蒼白のエリカ。

「ジェニー、接近禁止違反の証拠は、この紹介状と、この会談の音声データと映像データで十分だろ。」
「あの…、録画されてるんですか?」
「そうだよ。商談は言った言わないにならないように、録画を撮るのが常識だからね。まさかあんた、そんなことも知らないのかい?」
「えっとー。」録画するのは、別に常識でも何でもないが、世間知らずのエリカは、こう言っとけば信じるだろう。

「それとね、あなた、ラークの出した条件を全部言ってないわよね?」
「え?」眼が泳ぐエリカ。こいつ、商談とか無理だわ。すぐに顔に出るから腹の探り合いなんてできないだろ。
「私たちをフィンランドに連れ戻したらさ、あなたはどんなご褒美を、ラークから取り付けてるんだい?」
「…。」だんまりのエリカ。

「言いたくないなら無理には聞かないけれど、後から何か条件が明るみに出たら、そのせいで訴訟に発展するかもしれないわよ。その覚悟はしといてね。」
「私たちはね、ラークにふた股されてラークと別れたんだ。もしあんたが、これを手柄に第3夫人になるとか、そう言う条件があるなら、あんたも含めて三股だからねぇ。私たちは黙ってないよ。」
「あの、私もご家族の末席に加えて頂けることになってます。」エリカったら、あっさりゲロっちまったよ。笑
「家族の末席ってどう言うことかしら?はっきり言ってくれないと分からないわ。」
「…第3夫人です。」
「要するに三股ってことよね?そんな条件なんて飲めないわよ。ラークったら、私たちをバカにしてるのかしら?まあ、あなたは正直に白状したから許して上げるけど。」
「…。」何も言えないエリカ。ちょっとざまあな気がする。笑

「それとね、ラークにはっきり伝えておくれな。私たちにはもういい人がいるんだよ。」
「え?」
「何を驚いてるの?私たちにいい人がいたらおかしいかしら?」
「いえ、そんなことはないです。ってか当然ですよね。これだけ美人ですし。」ハハハ。と、取り繕った笑顔を見せるエリカ。
「美人?その彼はね、私たちの容姿だけじゃなくて、内面を見てくれるのさ。それに娘たちも本当にかわいがってくれてるんだ。」
「そうよね、私たちの関係ってさ、最初は娘たちの食生活を見かねた彼がね、娘たちにご飯を食べさせてくれるところから始まったのよね。」
 なんか照れるな。
「それって…。」エリカは思い当たったらしい。社宅に凸して来たとき、俺は子供たちが腹を空かせて待ってると言ったもんな。

「あんたには感謝してるんだよ。本来だったらジョージくんのフィアンセとしてお隣さんになるはずだったんだろうけど、自分からいなくなってくれてさ。」
「お陰で私たちは、フリーなジョージくんに出会えたものね。」
「ジョージ、どう言うこと?」
「ん?もう過去のことだけどな。俺、エリカと一緒に住むつもりで今の社宅に申し込んでたんだよ。」
「聞いてないわよ。そんなの…。」
「いやいや、言う前にお前、浮気して俺を捨てて行ったじゃん。」

「そうそう、あなた、ジョージくんからラークに乗り換えた理由が、ラークの方がハイスペックだからって言ったそうね。ジョージくん、うちの2年目だけど、営業ではトップ3に入ってるわよ。同年代では断トツのエースね。」
「2年目で年収は1000万超えだよ。」ハッタリにしても随分吹っ掛けるな。と思う。
「え?嘘。」エリカも驚くよな。俺も一昨日の作戦会議でこの数字を聞いたときは、呆れたもんな。苦笑
「会社からの収入の他にさ、私たちが専属契約をしてるんだ。300万ずつで。いわゆるマネージャー契約ってやつだね。」してないけどね。取るつもりもないし。

「まずは、毎日私たちと子供たちの食事を作ってくれてるわ。あなたも知ってると思うけど、ジョージくんの料理スキルはプロ顔負けよ。それから子供たちの家庭教師。そして私たちの体調管理。ジョージくんの施術で癒されてるわ。」
「あんたも元カノだったんだから、リフレクソロジーやら、全身コース上級編のボディケアは体験してるだろ?施術士としてもピカイチだよ、ジョージくんは。」
「ええ?上級編まで?私でもやってもらったことないのに…。」
 そりゃそうだ。上級編に行く前の中級編でいつもエリカは勝手に昂ぶって、えっちを要求して来てたからな。まあなんだ。俺もやぶさかではなかったし。
「え?あなた元カノなのに、上級編をやってもらったことないの?」
「そう言えばジョージくん、上級編はやったことないって言ってたな。」
「と言うことは、おふたりはジョージと…。でもそれってふた股なんじゃ…。」

「違うよ。ジョージくんがふた股なんじゃなくて、私たちがジョージくんをシェアしてるんだ。それにジョージくんは私たちに施術するだけだから、私たちとはプラトニックさ。そう言うところをきっちり我慢できる男なんだよ。ジョージくんは。見境のない、ふた股三股野郎のラークとは大違いだね。」
「そうそう、ラークだけどね、今回の接近禁止違反で次期社長の芽はなくなると思うわよ。それから、一昨日、あなたは娘たちとも接触したみたいだけど、一昨日のは、私たちの娘たちと知らなくて接触したようだから許して上げるわ。でも今後、娘たちに接触したら、接近禁止命令違反でラークを告発するわよ。」
 上手い。きっちりアリちゃんとプリちゃんへの、エリカからの接触に釘を刺した。流石ジェニーさん。

「それじゃあ一昨日の女の子たちは、おふたりの娘さんでしたか。でもジョージのフィアンセって…。」
「男を見る眼があるだろう?早々にジョージくんに眼を付けてね。ふたりしてフィアンセに収まっちまった。最初のカレがジョージくんだなんて幸せだよねぇ。お陰で私たちは、ジョージくんとは男女の仲になれないんだけどね。娘たちのフィアンセだからねぇ。」
「そうよねぇ。ジョージくんみたいな本物の男から磨きを掛けられて、少しずつ開花させられて、女にされて行くんだから、娘たちは幸せよねぇ。」

「それってふた股なんじゃ…。」
「シェアだよ。娘たちはさ、もともと仲がいいんだ。そのせいでジョージくんをシェアする気になったのさ。」
「それにしても、あなたも男を見る眼がないわよね。ラークは今回の件で間違いなく失脚よ。」
「またあんた基準のハイスペック男を探して乗り換えればいいじゃないか。一応言っとくけど、ジョージくんはダメだよ。」
「今更、来られても相手にしませんよ。今日だっておふたりが会うって言わなければ会ってませんし。」
「…。」黙り込むエリカ。ひょっとして、これって、ざまあ、なのかな?

「そろそろ時間ですかね。」
「そうね。」「そうだね。」そう言ってシェリフとマエストロは席を立った。
「エリカ、これでほんとにさよならな。まあ、今カレとよろしくやってくれ。じゃあ元気でな。」

 応接室に取り残されたエリカは、呆然としていたのだった。

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 毎日22時に投稿します。

 以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/541586735
「精霊の加護」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

 カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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