影の多重奏:神藤葉羽と消えた記憶の螺旋

葉羽

文字の大きさ
3 / 26
2章

囁きと幻影

しおりを挟む
「…!」

葉羽は、驚きと恐怖で体が硬直した。ゆっくりと振り返ると、そこには、同級生の水無瀬翠が立っていた。彼女は、少しいたずらっぽい笑みを浮かべている。

「…驚かせちゃってごめんね。葉羽くん、こんなところで何してるの?」

翠の声は、いつも通りの明るいトーンだった。しかし、葉羽は、彼女の目に、何か不自然なものを感じた。まるで、仮面を被っているかのような、冷たい光が宿っている。

「…いや、ちょっと調べ物をしていたんだ。翠は?」

葉羽は、平静を装いながら答えた。

「…私も、ちょっとね。そういえば、葉羽くん、最近学校で奇妙な噂が流れてるって知ってる?」

翠は、意味深な笑みを浮かべながら言った。

「…ああ、幽霊の噂のことか?」

「…そう。あれ、ただの噂じゃないみたいよ。私も、この前、不思議な体験をしたの」

翠は、身を乗り出して、葉羽に囁くように言った。

「…どんな体験だ?」

葉羽は、翠の言葉に、強い興味を覚えた。

「…実はね、昨日、夜遅くに学校に残ってたんだけど…」

翠は、恐怖に怯えるような表情で語り始めた。

「…急に、耳元で誰かが囁く声が聞こえたの。『もうすぐだよ…』って。最初は、気のせいだと思ったんだけど…何度も聞こえるから、怖くなって逃げ出したの」

葉羽は、翠の話を聞きながら、彩由美の言葉を思い出していた。彼女もまた、誰かに囁かれる声を聞いたと言っていた。もしかしたら、二人の体験は繋がっているのかもしれない。

「…翠、他に何か気づいたことはないか?例えば、奇妙な物音とか、誰かを見たとか…」

「…うーん、特に何も…」

翠は、少し考えてから言った。

「…あ、でも、一つだけ。図書室で黒い箱を見たの。小さくて、黒くて…なんだか、不気味な雰囲気だったわ」

黒い箱。またしても、その言葉が出てきた。葉羽は、確信した。あの黒い箱は、間違いなく事件と関係している。

その時、葉羽は、再びかすかな物音に気づいた。今度は、図書室の入り口の方から聞こえてくる。葉羽は、翠と共に、音のする方へと向かった。

図書室の入り口には、誰もいなかった。しかし、床には、小さな黒い羽根が落ちていた。まるで、鴉の羽根のように、黒く、光沢のある羽根だった。

葉羽は、その羽根を拾い上げ、じっと見つめた。一体、これは何を意味しているのだろうか?

その時、葉羽の背後で、再び翠の声が聞こえた。

「…葉羽くん、見て…」

葉羽が振り返ると、翠は、恐怖に歪んだ表情で、図書室の奥を指差していた。そこには、黒い影のようなものが、ゆらゆらと揺らめいていた。まるで、人間の姿をした影が、闇の中に溶け込もうとしているかのように。

「…なんだ、あれは…?」

葉羽は、思わず息を呑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

1分で読める怖い話短編集

しょくぱん
ホラー
一分で読める怖い話を定期的に投稿しています。 感想などをいただけると嬉しいです。 応援よろしくお願いします。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2

kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。 荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。 一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。

処理中です...