92 / 105
92.紫々井明の覚悟
しおりを挟む
楓さんが魔素起因性のインフルエンザで倒れたと聞いて、直ぐに飛行機のチケットを取った。
施設に着いて病室に駆け込むと、酸素チューブを着け、弱々しい息をする楓さんと目が合った。
聞いていたよりも状態は悪く、今から治療をしても。
「あきら・・・さん・・・」
「こんなに・・・遅なってごめん・・・」
「治療、法・・・探して・・・」
治癒魔法を掛けても症状が和らいだ様子は無かった。
「俺が遠出なんてしたからっ・・・」
「しかた・・・ない・・・です・・・」
楓さんは何でも仕方ないから言うて諦める。
こっちの世界に来た事も、この施設から出られへんことも。
俺に力が足りひんから出られへんのに。
そのせいでこの状態じゃ、いくら俺でももう。
それを分かっていながら処置をした。楓さんに悟られないように感情を押し殺して。
安心しきった顔で、楓さんが目を閉じた。途端に心電計が危険を知らせた。
「楓さん・・・」
医者としての経験と勘が無駄だと言うてでも、尽くせる限りの手を尽くした。
心臓が止まって素早く馬乗りになり、胸骨を圧迫した。
「もう無駄だ。」
背後から声がして、我に返った時には、俺は泣いていて、手元には涙の跡がいくつも付いていた。
俺の醜い泣き顔が、後ろから首に宛てがわれた刃に映る。
「楓様のご慈悲に感謝しろ。」
覚悟して目を閉じた。
「先生!大丈夫ですか!?」
揺すり起こされて俺は最悪の悪夢から目が覚めた。
スマホで弟の定期連絡を確認して、体の力が抜けた。
楓さんはまだ危ない状況やない。
この状況なら十分間に合う。
異常な量の汗と滲んだ涙をタオルで拭いた。
「先生、水をお持ちします。」
「ああ・・・頼む。」
もし状況が変わったら、悪夢は現実になるかもしれへん。
俺が決断できずに他の方法を探し回ってたからや。
「覚悟を・・・決めるしかないな・・・」
施設に着いて病室に駆け込むと、酸素チューブを着け、弱々しい息をする楓さんと目が合った。
聞いていたよりも状態は悪く、今から治療をしても。
「あきら・・・さん・・・」
「こんなに・・・遅なってごめん・・・」
「治療、法・・・探して・・・」
治癒魔法を掛けても症状が和らいだ様子は無かった。
「俺が遠出なんてしたからっ・・・」
「しかた・・・ない・・・です・・・」
楓さんは何でも仕方ないから言うて諦める。
こっちの世界に来た事も、この施設から出られへんことも。
俺に力が足りひんから出られへんのに。
そのせいでこの状態じゃ、いくら俺でももう。
それを分かっていながら処置をした。楓さんに悟られないように感情を押し殺して。
安心しきった顔で、楓さんが目を閉じた。途端に心電計が危険を知らせた。
「楓さん・・・」
医者としての経験と勘が無駄だと言うてでも、尽くせる限りの手を尽くした。
心臓が止まって素早く馬乗りになり、胸骨を圧迫した。
「もう無駄だ。」
背後から声がして、我に返った時には、俺は泣いていて、手元には涙の跡がいくつも付いていた。
俺の醜い泣き顔が、後ろから首に宛てがわれた刃に映る。
「楓様のご慈悲に感謝しろ。」
覚悟して目を閉じた。
「先生!大丈夫ですか!?」
揺すり起こされて俺は最悪の悪夢から目が覚めた。
スマホで弟の定期連絡を確認して、体の力が抜けた。
楓さんはまだ危ない状況やない。
この状況なら十分間に合う。
異常な量の汗と滲んだ涙をタオルで拭いた。
「先生、水をお持ちします。」
「ああ・・・頼む。」
もし状況が変わったら、悪夢は現実になるかもしれへん。
俺が決断できずに他の方法を探し回ってたからや。
「覚悟を・・・決めるしかないな・・・」
13
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜
朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。
(この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??)
これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。
所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。
暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。
※休載中
(4月5日前後から投稿再開予定です)

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
囚われの姫〜異世界でヴァンパイアたちに溺愛されて〜
月嶋ゆのん
恋愛
志木 茉莉愛(しき まりあ)は図書館で司書として働いている二十七歳。
ある日の帰り道、見慣れない建物を見かけた茉莉愛は導かれるように店内へ。
そこは雑貨屋のようで、様々な雑貨が所狭しと並んでいる中、見つけた小さいオルゴールが気になり、音色を聞こうとゼンマイを回し音を鳴らすと、突然強い揺れが起き、驚いた茉莉愛は手にしていたオルゴールを落としてしまう。
すると、辺り一面白い光に包まれ、眩しさで目を瞑った茉莉愛はそのまま意識を失った。
茉莉愛が目覚めると森の中で、酷く困惑する。
そこへ現れたのは三人の青年だった。
行くあてのない茉莉愛は彼らに促されるまま森を抜け彼らの住む屋敷へやって来て詳しい話を聞くと、ここは自分が住んでいた世界とは別世界だという事を知る事になる。
そして、暫く屋敷で世話になる事になった茉莉愛だが、そこでさらなる事実を知る事になる。
――助けてくれた青年たちは皆、人間ではなくヴァンパイアだったのだ。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる