おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

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57.水無瀬恭介の遺言

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「水無瀬さん!!!」

私は倒れた水無瀬さんに駆け寄った。

広がる血の海に倒れる水無瀬さんは、満足げな表情だった。

「今治療を・・・!!」

水無瀬さんは首を小さく横に振った。

「私なら、私なら・・・!!」

私は殻を破れていない。治癒の術を知ってたとしてもこの怪我は治せない。

涙なんか流しても何にもならないのに、涙はとめどなく込み上げた。

神様を呪いながら、私は水無瀬さんの頬に触れた。

水無瀬さんを絶対に助ける。

私は魔力を最大限出して水無瀬さんに送った。

胸に激痛が走っても、私はやめなかった。

「無駄、です・・・」

水無瀬さんはまた吐血した。もう顔が青白くなって来ている。

「今が殻を破るべき時なの!!!」

気絶しそうな痛みの直後、自分の中で何かがひび割れて、砕けた。

痛みが消えて開放感の中、唐突に脳内に言葉が浮かんだ。

何かに導かれた様に私は水無瀬さんの手を握って、浮かんだ言葉を口にした。

「私は望む。善き心持ちし者の病治らんことを。私は望む。悪しき心持ちし者が痛みを知ることを。えにし持ちし神々よ、望みに応えその力貸したまえ。」

体から魔力が抜けて、水無瀬さんの傷はすっと消えた。

「良かっ・・・水無瀬さん・・・?」

水無瀬さんの容態は戻らなかった。

「どうして!?」

「少し楽に・・・なりました・・・」

楽になっただけ。治癒は確かに成功しているのに。

「どうして・・・やだ・・・」

「頼みがあります・・・」

「諦めないでください!!!」

「法案の・・・成立を・・・」

「法案・・・?」

「巻き込んで、すみません・・・」

「私のことはいいんです!!」

「俺のために泣いて・・・」

私の涙が頬に落ちると、水無瀬さんは目を細めて微かに口角を上げた。

「水無瀬さん・・・生きてください・・・」

「かなら、ず、奴の、罪を・・・」

「私でできるなら何でもします!!絶対叶えます!!だから、だから・・・!!!」

「顔を、近付け・・・」

屈んで顔を近付けると、水無瀬さんは穏やかな表情で、私の頬に触れた。

「ああ・・・目が・・・絢子、に、似て・・・」

私は水無瀬さんの血塗れの手を掴んで押さえ、もっと顔を近付けた。

「水無瀬さんっ・・・」

どうしてそんな顔をするの。命が消えそうだというのに。

「まだ願いは叶ってません。未練があるでしょう・・・?生きてください・・・!」

水無瀬さんは僅かに笑った。

「ありがとう・・・」

涙がいくつも水無瀬さんに落ちた。

「おんなのこ、が、いたら・・・きっと・・・」

水無瀬さんの手はその直後、床に落ちた。

「やだ・・・水無瀬さん・・・起きて・・・」

瞳は色を失い、体を何度揺すっても水無瀬さんは反応しなかった。

「水無瀬さん・・・起きて・・・起きてよ・・・!!!」

水無瀬さんを抱き起こして頬に触れた。

体は暖かいのにどれだけ声を掛けても、揺すっても水無瀬さんは動かなくて、私は現実を認めるしかなかった。

「水無瀬さん・・・」

水無瀬さんを抱き締めた私の慟哭どうこくが虚しく響き渡った。
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