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対決、そしてこれからもずっと

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「美桜、遅くなってごめん。もう大丈夫だ」

その声を聞き、安堵から涙が出そうになった。
テツは私の前に出て斉藤さんから庇うように自分の背中で隠す。
私を守ってくれるテツの背中にしがみつくと、ワイシャツが汗で濡れていた。
その汗と肩が上下に動いているのを見て、テツが私を探してくれていたんだということが分かり、本当に涙が零れ落ちた。

「なんだ、お前は!」

「俺?美桜の婚約者だ」

テツは息を整えながら口を開く。

「婚約者だと?嘘をつくな。それにみおってどういうことだ。彼女はナツキさんだろ」

斉藤さんは訳が分からないとばかりに大声を出す。

「確かに美桜は夏木で間違っていない。改めて紹介するよ。俺の婚約者の夏木美桜。あと、なんでお前ごときに俺が嘘をつかないといけないんだよ。逆にお前は美桜のなに?というか、美桜の名前すら知らないのか」

テツは鼻で笑う。
この状態で喧嘩を売っているようにしか見えなくてハラハラする。
気がつくと涙が止まっていて、濡れた頬をぬぐいながら二人のやり取りを黙って見つめていた。

「うるさい!ナツキさんはナツキさんだ。彼女は僕の恋人になる人だ」

「えっ?」

開き直った斉藤さんの口から飛び出した言葉に唖然とした。
この人は何を言っているんだろう。

「は?お前は何を言ってんだよ。俺が言ったことが聞こえなかったのか?」

「お前こそいい加減なことを言うな。ナツキさんは僕のことが好きなんだ」

ちょっと待って。
私が斉藤さんを好き?
そんなことを斉藤さんに言った記憶は一切ない。

「お前、妄想も大概にしろよ」

「妄想なんかじゃない!いつもナツキさんは笑顔で僕に仕事頑張ってと励ましてくれた。それは僕のことを好きな証拠だ」

「なんだそりゃ。そんなの誰にでも言うだろ」

テツは呆れたように呟く。

「そんなことはない。僕にだけだ。そうだよね、ナツキさん」

私に視線を向けてくる。
この人は本当に何を言ってるんだろう。
理解に苦しむ。
身に覚えはないけど、私の言動が斉藤さんを勘違いさせてしまっていたということなのか。
どうしたらいいのか分からなくなっている私にテツは冷静に言った。

「美桜、ハッキリと言ってやれ。じゃないとこいつの為にもならないし、ずっと勘違いしたままで、この先も付きまとわれるぞ」

それだけは嫌だ。
私はテツの腕を握ると、大丈夫だというようにその手をポンポンと撫でてくれ、気持ちを落ち着けようと深呼吸した。

「斉藤さん、申し訳ないけどあなたに特別な感情はありません。誤解させるような態度を取った覚えはないけど、そんな風に思われたのなら謝罪します。すみませんでした」

誠心誠意謝罪し、頭を下げた。

「なんだよ、それ……。僕は別に謝ってほしい訳じゃない。ただ、君と付き合いたかったんだ」

斉藤さんは力なく呟く。
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